セキララ 3 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

元探偵の中野からの報告書を、沈黙を守りながら読み続けた真利子だが、添付された写真を見た瞬間に涙腺は崩壊した。

「何で…?私…三年も騙されてたんですね…。梨衣子(りいこ)さん…。良家のお嬢様でボランティアや教育問題に熱心で…。こんな可愛くて素敵な奥さんが居るなんて…。
私、この奥さんに取り返しのつかない酷いことを…ごめんなさい、ごめんなさい…。」

「真利ちゃん、君は知らなかったんだ。
騙されてたのは奥さんと同じだよ。
責められるべきは能代さんだよ。
真利ちゃんに彼を引き合わせたのは俺の責任だ…。
すまない…。」

「いいえ、私がいけなかったんです。
王明さんとは探偵と警察として仕事だけをしてれば良かったのに…。」

「過ぎたことさ…。月並みな慰めを言うつもりはないが、まだ完全に他所様の家庭を壊したわけじゃないし、互いに赤ん坊が居なかっただけでもな…。
奥さんからの電話と俺の調査だけで手打ちするなら安いモンと思わなきゃ…。」

「そう…ですよね…。
王明さんにも奥さんにも何も言わずに別れるのが賢明ですよね?」

勿論、真利子はその決断がすぐに出来ていたわけではない。
しかし、突き付けられた現実を必死に受け入れようとしていた。

「それがいいよ真利ちゃん。
暫く休むなり、仕事から離れた方がいい。
俺も久しぶりに現場に戻ってわかったが…因果な商売だな…。身も痩せる調査だったさ。
パンドラ、玉手箱、鶴の恩返し『知る』って衝撃はいつも悲しい真実を告げるねぇ。」

「い、いいえ!中野さんにはホントにお世話に…。
これ依頼料です。ウチの相場での料金ですが…。」

真利子は封筒に入ったお金を渡そうとしたが…。

「そいつは受け取れねぇよ。
久しぶりの現場はダイエットにもなったから、こっちがお金を払いたいくらいさ。
娘にメタボ、メタボと言われるのは堪らんからね。」

「中野さん…。」

「真利ちゃん。これは探偵じゃなく、君を知る人間としての俺の勘だが、能代くんが既婚者だとバレなかったのは、彼の狡猾さとか君の能天気さとか、そんなのを超えた『異質な何か』を感じるんだ。
そう、初めて店長が君をこの事務所に連れて来た時のようにな…。」

「まさか…?王明さんまで『そっち側』なんて…。じゃあ、奥さんにバレずに最後まで隠すなんて容易いじゃないですか?」

「真利ちゃん、その封筒のお金は、君の元バイト先の店長の方が役立ててくれるかもな?」続