セキララ 序章Ⅱ | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「近藤くん!ねぇ、近藤くん!この書類…。あれ!?」

警視庁の四谷署の建物に一際透き通った声が響き渡る。
一時はプロの歌手を目指してただけあって、宇都宮真樹刑事の声と容姿は飛び抜けていた。
本来ならむさ苦しい職場に華が咲くべき彼女の存在なのだが、同じ所轄でも閑散とした部屋に彼女の美しさを讃える者は居なかった。
何故ならば彼女は刑事でも「ユーレイ課」所属なのだから。
ユーレイ課とは「有力証拠ゼロ課」の略で、迷宮入りしたり、オカルト紛いの眉唾事件を担当するのが彼女の仕事だ。
元々は警視庁直属の組織だったが、彼女の自由奔放に手を焼いた本庁が四谷署に押し付けた形だ。
勿論、それは宇都宮が四谷署出身の近藤優刑事を助手に指名した経緯もあるのだが…。

「マキ、ユウは少年課の応援に行きマシタ。何だか大きなヤマを前に人手不足だそうデス。」

長身で赤毛を三つ編みにした拙い日本語で宇都宮に応答する。
やれやれと言った感じで宇都宮は…。

「史香、知ってたなら止めてよ!
こっちだって人手不足なのに~。
しかもよりによって、少年課なんて大丈夫かなあ~?」

「大丈夫でよヨ。ユウは穏やかな雰囲気とは違って、柔剣道の腕前は警視庁屈指じゃありまセンカ?暴走族や不良少年なんか目じゃないデース!」

史香と呼ばれる女刑事は、宇都宮が「上司」に懇願した「同郷」の部下である。ロス市警からの出向でフルネームは「史香・フランチェスカ・ディナターレ」日系アメリカ人の母とイタリア人の父との間に生まれた「設定」だそうだ。

(全く、あのお方はどんだけご自分の影響力を気にするのか…。こんな極東じゃ、貴方のこと知らないのが普通よ!
『同族』だから安心も出来るけど、逆に私の事を逐一報告してるんだろうな~。
まぁ史香個人に恨みはないけどさ。)

「違うのよ史香。近藤くんの逞しさはわかってるつもりだけど…ほら、少年課って不良少女や家出少女を担当するから…。近藤くんって優しいからさ…。」

「Oh~、私はマキの方が心配デース。だからユウを応援に行かせました。」

「やっぱりわざとじゃない!どんな事件よ?」

「詳しくはわかりませんが、あるマンションで少女の売春が組織ぐるみで行われてるそうで…。」

「組織ぐるみの風営法なら生活安全課じゃい!どんだけ近藤くんを酷使させんのよ!」

「一番警官らしくないってことがセレクトの理由デース!やんわりと聞き込みに行きました。」
続く