その日の夜。
るんの自室
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何が「金の卵を生ませる研究」よ!
どんだけ頭がいいか知らないけど、いっつも私をバカにするんだから!
「金の卵」って、「将来有望な」って意味くらい知ってるわよ!
つまりそれって嵐自身が亡くなったご両親にとって「一番の最高傑作だ!」っていう綺麗な落とし方でしょ?
農学部だか獣医学部だか知らないけど、ご両親が残したニワトリの鶏子ちゃんを研究して、受験に役立たせるってことね。
はいはい、わかりました。
あんたも結局、相野家の支援を受けて成功したいだけじゃない!
雪之介も月之介も嫌いじゃないけど、霧雨家が自分の息子達を使ってウチに取り入ろうとする態度は嫌いだわ!
あ~あ、嵐はそういう男達とは違うと思ってたのにな~。
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和歌山であいつの生家に泊まろうが、自分の家の自分の部屋でくつろいでいようが、考えるのは嵐の事ばかり…。
私、どうしちゃったのかなぁ。
ふと、部屋の窓から外を見たら、離れの二階左端の部屋に灯りが。
嵐の「研究室」だわ。
あいつ荷物がまとまってないのに何してんのよ!
別に気になってなんかないし、変な期待なんかしてないんだからね!
夜中に男の子の部屋を訪ねるのとは違うわよ!
あれは嵐の「研究室」ですから!
私はコーヒーとお菓子を差し入れして、
「お疲れさま、無理しないでね」
って言うだけなんだからね!
それと…今日のことを
「ありがとう」
って言うのと、それとそれと舞の事をどう思ってるか聞けたらいいな…なんて期待してないんだからね!
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部屋着にダウンジャケットを羽織、台所から手頃な物を物色し、いざ離れへ!って思ったら、私の前に…。
「誰!?」
「キャ~!るん!?どうしたのよ、こんな夜中に?」
「お母さんこそ!
どうしたのコート羽織って!」
「……。」
「……。」
「ねぇ、るん。私の勘違いだと嬉しいんだけど、もしかして離れの灯りを見た?」
「え?何で私にそれを聞くの?」
「質問に質問で答えないで!
貴女『も』ホットコーヒー持ってるし!」
「お、お母さん大丈夫よ、嵐には私が声かけとくから。
私もお母さんと同じ考えだったみたい…。」
「同じ考え!?
るん、それは駄目よ!」
「何の想像してんのよ!そこは一緒にしないで!
しかも何で自分は良くて私は駄目なのよ!」
「ほら、勉強疲れを私が癒して…。」
「お母さんは部屋に戻って!何か危ない」