アジアン雑貨ティンブー。
都内の片隅にある閑散とした店。
学生が肉まんや唐揚げを買うのが売り上げの殆どだが、稀に格式高いアンティークを購入するお客様も訪れ…。
「…佐田くんは…若いのにこんな古めかしいモノに興味あるの?」
「え、ええ。ここでバイトするまでは東洋史には暗かったのですが、店長や副店長の北御門さんから日々勉強させて貰ってます。」
「ふぅ~ん、じゃああたしみたいな中古品にも興味あるんだ~?」
レジに立つ佐田のに対し、ブラウスのボタンを外した既婚女性がカウンター越しに前のめりになる。
「日暮さま、貴女が当店の優良顧客という事は存じてますが、あまり昼間からその様なご冗談は…。」
「じゃあ、夜ならいいの?
バイト上がりに迎えに来ようか?」
「申し訳ございません…私は…。」
困惑する佐田を見兼ねたアラサー女性が、バタン!と事務室の扉を勢いよく開けて出てきた。
「全く!佐田くん何やってんのよ!
こういう時は直ぐに私を呼びなさいって言ってるでしょう!」
北御門瞳と呼ばれるこの店の副店長が、色ボケした有閑マダムを追い払う。
現実世界でも似た話はあるのかもしれないが、北御門の手には日本刀が携えられていた。
「おみねちゃん、いくわよ!」
「ハイハ~イ♪
現代社会は徳が欠如してるのね。
私の出番が多いわけだ♪」
「北御門さん、大丈夫です!
ここは自分で…。」
「いいのよ、魔力解放や召喚術もバカにならないんでしょう?
私もいい練習になるから!」
躊躇なく抜刀し、刃を常連客の日暮という女性に向ける北御門。
「な、何?貴女、日本刀なんて持ち出して…ひ、人殺し!」
「はいはい、淫魔風情が人間様の口調を真似しないの。
地獄に帰れー!」
「キャー!!」
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「あ、あのう私は…?」
「良かった。日暮さま、突然貧血を起こされたみたいでしたので安心致しました。
救急車の手配は宜しいですか?」
「し、失礼します!もうすぐ主人が帰ってきますから…。」
事務室で寝ていた所を飛び起き、顔を真っ赤にして立ち去る日暮に対し、北御門はすれ違い様に呟く。
「…次やったら、『容れ物ごと』切るからね…!」
「ありがとうございます…。」
「いいのよ、でも、今月に入って『天使』の嫌がらせが顕著ね。低級な淫魔を使役して、佐田くんを堕とそうだなんて。ルシファーさんと奈々子ちゃんを天界から帰さない寸法ね。」続