あの子と遊んじゃいけません 12 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
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2vs7。
普通に考えたら絶望的状況だろうか?
赤組の18騎あった馬も拓哉と林くんの2騎を残すのみ。
白組は3組の「空手女子」茂松さんの活躍でまだ後ろに6騎残していた。

だが拓哉は相手の残騎を確認しなかった。
まずは無事に一騎討ちの舞台に入場することにした。

「(小声で)いいぞ、みんな歩調を合わせろ。ここで俺が落馬しても、笑い者になるだけで負けじゃない。
…ゆっくり入場しよう…。」

永田、児山、岸元の仕事はこれで終わりだ。
あとは馬上の拓哉が相手の帽子を取れるかだ。

相も変わらず保護者と下級生は勝手な美談を想像していた。

空手女子の茂松さんと林くんの対決だ。
活発な女子が最強小学生に何処まで健闘するかを楽しみにしているのだった。
…つまり…大衆は拓哉はただの前座としてしか見てなかった。
拓哉が林くんの171センチに敵わないものの、1組で一番高い162センチなこと、また拓哉が身長に比して極端にリーチの長い生徒であること、拓哉が左利きだったことなど、学校中の誰もが知ろうともしなかった。

「ピッ!」

と笛が鳴ると同時に茂松さんは俺の帽子を目掛けて右手を伸ばす。
彼女の闘志剥き出しの気の強さと、空手女子仕込みの手数の早さが彼女のストロングポイントなんだろうが…。

拓哉は茂松さんの右手を自分の右手で斜めに交差させる様に払うと、左手を大振りに彼女の後頭部側から帽子をもぎ取った!

「ピーッ!」

拓哉の勝利を告げる笛が鳴り、教師の河嶋が赤の旗を上げたと同時に学校中がどよめく!
誰も背が高いだけの文学少年が空手少女に勝つとは思ってなかったのだ。

「間合いを制する」「左を制する」

この後に続くのは「世界を制する」ですね。
勿論、拓哉にそんな作戦はなく、利き手を伸ばしただけです。しかし、拓哉の左手は相手の死角から不規則に伸び、拓哉の右手は相手の右手を完璧に塞ぎ、相手の左手は全く役に立たなかった。

「ピーッ!」

またも赤の旗が上がる。
取ったと思ったのに帽子を取られている。
拓哉が相手の右手のタイミングに合わせて左手を伸ばし、リーチの差で勝利する「クロスカウンター作戦」は大成功で二人抜きをした!
もうこれだけで大人しい拓哉のイメージは払拭しただろうが…。

「ピーッ!」

「ピーッ!」

「ピッー!」

白組は拓哉の左手に為す術もなく、破竹の五人抜きを許してしまった!

遂に白組とタイに持ち込み2vs2だ。続