志磨子の華麗なる親切心27 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

志磨子はまだベランダに佇んでいた。
そして夜景を見ながら呟いた。

「そう…。本当に辛い時、苦しい時は『助けて』をちゃんと言わないとね…。『ありがとう』『ごめんなさい』位に大切な言葉なんだから。
カールクリラノースくんと三好先生が教えてくれたこと…。」

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今まさに行為に及ぼうとした瞬間、大島編集はホテルのボーイと、テレビの音声に邪魔された。

「対象者保護プログラムA実行中。対象者保護プログラムA実行中。」

リモコンでスイッチを切っても、繰り返しテレビはONになった。

そしてドア越しにボーイはしつこくノックし続けた。

「大島様~!居るんでしょ~!?
ワインのおかわり、ホテル側のサービスですよ~。
早く開けてくださいよ~。」

とてもホテルマンの口調とは思えないしゃべり方と大声に、大島編集だけでなく、拘束された南部彩も違和感を憶えたが…。

(対象者保護?とは自分のこと?まさか…自分が叫んだ瞬間にテレビのスイッチが入り、ドアがノックされ…。そして、この甘く中性的な優しい声のボーイさん。何処かで聞いた様な…。
いや、それより脱出だ。こんな玩具の手錠など…。)

せっかくのチャンスを邪魔された大島は苛立ちを憶えた。
適当にあしらって追い返すことも考えたが、中に入られ南部彩に助けを求められると厄介だ。と、やり過ごすことにした。

「全く、天下の一橋ホテルが聞いて呆れる。
何て教育してんだ。
事が済んだらクレームを入れてこのボーイをクビにしてやるぞ!」

矢のようなノックと叫び声が止み、ようやく帰ったかと思ったら…。

「本人は解錠を拒否。プランBに変更~!」

と、ドア越しにボーイが叫ぶと、非常ベルが大きく鳴り、天井のスプリンクラーが作動した!

「うわぁ、冷たい!何だこれ!?」

スプリンクラーの水は一切、南部彩にかからず、激しい水流は大島編集のみを狙い撃ちにしていた。

「ホテルが自分を守って…?それに気付きませんでしたが、ここは一橋ホテルとは…まさか…?」

スプリンクラーは大島が何処に居ても水流を浴びせ続けた。

「早く開けてくださいよ~。氷が溶けるじゃないですか~。」

「くっ、ボーイにこの水の止め方を聞き出すしかないか…?」

と、仕方なくドアを開けた瞬間…。

「お待たせ致しました~!」

「ガハッ!」

ワインを載せたワゴンと壁に勢い良く挟まれた!

ボーイの正体は島の彼氏、真壁一樹だった