「無駄な抵抗はやめることだ…。
下手に動けば、君にカエルをけしかけるからな…。」
(くっ…。なんという屈辱。
プラスチック製の玩具の手錠に、荷造り用のビニール紐で自分を拘束するなどと…。
しかもこの緊縛方法はなんだ?
まるで銀行強盗か誘拐犯の様な粗雑でイタズラに痛みを与える縛り方をよくも私に…。
成人雑誌の編集者ならば、麻縄の結び目が持たらす至高の摩擦を…。
イヤイヤ、問題はそこでは無い!
しっかりしろ、南部彩。今は蒼磨様以外の男に辱しめを受けようとしている危機…。
甲賀の女は生き恥を晒すより、自害を選ぶのが一族の掟!
蒼磨様、やはり御庭番の自分とは結ばれぬ運命だったのですね…。
それでも貴方と過ごした日々は幸せでした…。
これからは星となり、蒼磨様の幸せを見守り続けます。)
奥歯を噛み締め、キッと相手の大島編集を睨み付ける南部の瞳からは涙が溢れていた。
「フフフ、強気な女が堕ちる瞬間が一番興奮するなぁ…。
さぁ、楽しませて貰うぜ…。」
ベッドの上に手足を拘束され、身動き出来ない南部の下着に手を掛けようとする大島編集。
南部も覚悟を決め…。
(あぁ、人生の最後には走馬灯の様に…とは本当なのですね…。しかし、辛い忍術修行でも、蒼磨様と過ごした甘い同棲生活でも無く、島さんとの会話を思い出すとは…。)
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島「イヤ、男女が同棲してて手を出さないってないわ!
その男、何考えてんの?
南部さんも毎日がチャンスじゃない!」
島「きっとライバルのお嬢様とやらに気後れしてんのよ!」
島「やることやっちゃえば、坊っちゃんだろうがお嬢様だろうが…。」
南部「…君の様に割り切れたらどんなに楽か…。」
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あれは、高二の冬、同じ部員同士でも、初めて島さん達が自分の事を話題にし、それをきっかけに自分は皆と打ち解け…。(テッペキ!かるてっと 9参照)
そうだ!ここで私が死ねば奥村佳代に再び蒼磨様を奪われる!まさに犬死に…!
私は生きなければ!あらゆる手段と力を使ってでも…!
「た、助けてください~!!」
「ハハハ、怖いか?だが無駄だ!」
とその時、大島編集よそに、部屋のテレビのスイッチが勝手に入る。
「対象者より、音声による救難信号感知。保護プログラムAを発動します!」
砂嵐のテレビ画像から女性の声だけが聞こえる。
ほどなくドアをボーイがノックする。
「大島様、ワインのおかわりをお持ちしました!」