密室内で繰り広げられる、独占インタビューという名の言葉責め。
生来、ドM体質の南部彩は人生最大のピンチを迎えていた。
「は、はい…。あの…ですから…友子さんは、和夫さんにじゅ、じゅ、純潔を捧げられませんでしたが…二人の深い愛は…。」
「なるほど、確かにね。
じゃあ、友子が半ば自暴自棄に、和夫以外の男、哲也にヴァージンを捧げた時はどう思ったかな?
是非とも応えてほしいな。
志磨子の先生の読者も、サッカー選手としての南部さんのファンも一番期待してるよ!
志磨子先生の作品のヒットは、南部さんの『友情』次第なんだからね。
先生の可能性の芽を摘み取るのは本意ではないだろう?」
「は、はい…。ですが、さっきからそんな質問ばかり…。じ、自分はもう…。」
「もう?何かな?」
「い、いえ…。」
(はぁ、はぁ、わ、私はどうなってしまったのでしょうか?
大島さんの一語一句に身体が熱い…。
ただでさえ、小説の中の和夫さんは魅力的な男性なのに、無理矢理、官能的なシーンばかり口にさせられると下半身が洪水状態に…。
島さんは魅惑的な人物を創り過ぎです!彼は架空の人物ですので、この場合は蒼磨様への背徳ではなく…。)
(いける!あと一押し強引に迫ればやれる!
貞淑な黄金ルーキーの枕記事は売れるぜ!
しかも俺自身の実体験だしな!
さぁ、とどめだ。)
「少し落ち着こうか。
冷蔵庫にワインがあるんだ…。」
「い、いけません!次の試合が近いのでアルコールは…。」
「いいじゃないか、ほんの一口くらい。
形だけでもお二人の友情に乾杯させてくれないか?」
「は、はい…では少しだけ…。」
「美しき二人の友情に乾杯。」
「み、未来に…乾杯!」
予め部屋の冷蔵庫に冷やされていた赤ワインを口に含み、飲んだフリをする大島編集。
しかし、フリをするのは南部も同じだった。
「…人生は皮肉なものですね。
このまま自分に普通のワインを飲ませていれば、貴方は私を篭絡出来たかもしれない。
しかし、私がワインに含まれた睡眠薬の味と匂いに反応するのは誤算だったようですね。
甲賀中忍・南部彩。自分の鼻はどんな毒物もかぎ分け、舌はどんな毒にも見過ごすことはない!
友情を盾に不埒な行為を求める女の敵!
消えろ!
キイェーイ!!」
右手でワイングラスを置き、左手で胸元への掌打一撃!
大島編集が壁まで吹っ飛ぶ!
「馬鹿な今時忍者なんて…どんなネタだよ、痛てぇ…」