志磨子の小説内小説「包囲・磁石」5 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

情緒不安定な私を見兼ねて、南部ちゃんは私のアパートにお泊まりしてくれた。

プロサッカー選手なんて事を気にせずに私に接してくれることに涙が出そうだ。
お互いに複雑な環境で育ち、お互いに年上彼氏に一途な私達は似ていた。


「南部ちゃんは凄いな。プロサッカーと恋愛両立してて。
一年間の遠距離恋愛を難なく乗り越えての首都圏暮らしでしょ?
いいなぁ…。ねぇ、順調?」

「ええ、蒼磨様も一橋家次期当主の名に恥じぬよう、勉学に勤しんでいます。
直接お手伝いは出来ませんが、自分は試合で活躍する姿を見せるだけです!」

「いいなぁ、深い所で繋がってて。
私は就活で彼と会えないと堪えれないよ…。」

彼女の彼氏は一途だが、私の彼氏はホントに浮気モノだ。

「その為に今夜は私が泊まろうと決めたのですよ。
さぁ、先にお風呂に入ってください。」

「う、うん。」

南部ちゃんとの枕を突き合わせての夜のお喋りが楽しみだった。

浴室で高校時代を思い出して居ると、つい長湯になりかけ…。

「ガチャ!」

小さなタオルで前を隠した彼女が入ってきた!

更衣室で何度も過去に見た彼女の肌だが、相変わらず美しく、女の私でもドキッとする。

「私としたことが、これを渡し忘れていました。浴槽にどうぞ…。」

「入浴剤?お手製?」

「ええ、甲賀秘伝の香薬を調合しています。
落ち着きますよ。」

「やだ、狭いよ、温泉じゃないんだし…。」

秘伝の入浴剤は不思議な草の香りがした。
狭い湯槽に二人で入り、私は後ろから抱き締められた。

「…自分だって何も凄くありません。
いつだって次の試合が不安ですよ…。

島さんだって大学に彼氏さんとの恋愛に小説のお仕事。
19の女性としてとても立派と思います。
しかし、今まで何でも順調に行ってた島さんも、遂に壁にぶつかったのですね。
それも小説家ではなく、一人の学生として。」

「何でわかるの?そうなの!
私、高校時代のチームメイトに偉そうに相談に乗って適当な助言してたけど、私が一番みんなを必要としてたのよ!南部ちゃんに瑞穂に三好先生に柳生ちゃん!
私は寂しいのよ!」
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私の中の「if」から生まれた「友子」には誰も居なかった。
整形した容姿で男を釣ることは友子の生きてる証だった。

しかし、友子には最も自分に似た和夫という幼なじみが居た。
彼は「人助け」とは名ばかりの喧嘩を売っては、傷を創ることで命を感じていた