情緒不安定な私を見兼ねて、南部ちゃんは私のアパートにお泊まりしてくれた。
プロサッカー選手なんて事を気にせずに私に接してくれることに涙が出そうだ。
お互いに複雑な環境で育ち、お互いに年上彼氏に一途な私達は似ていた。
「南部ちゃんは凄いな。プロサッカーと恋愛両立してて。
一年間の遠距離恋愛を難なく乗り越えての首都圏暮らしでしょ?
いいなぁ…。ねぇ、順調?」
「ええ、蒼磨様も一橋家次期当主の名に恥じぬよう、勉学に勤しんでいます。
直接お手伝いは出来ませんが、自分は試合で活躍する姿を見せるだけです!」
「いいなぁ、深い所で繋がってて。
私は就活で彼と会えないと堪えれないよ…。」
彼女の彼氏は一途だが、私の彼氏はホントに浮気モノだ。
「その為に今夜は私が泊まろうと決めたのですよ。
さぁ、先にお風呂に入ってください。」
「う、うん。」
南部ちゃんとの枕を突き合わせての夜のお喋りが楽しみだった。
浴室で高校時代を思い出して居ると、つい長湯になりかけ…。
「ガチャ!」
小さなタオルで前を隠した彼女が入ってきた!
更衣室で何度も過去に見た彼女の肌だが、相変わらず美しく、女の私でもドキッとする。
「私としたことが、これを渡し忘れていました。浴槽にどうぞ…。」
「入浴剤?お手製?」
「ええ、甲賀秘伝の香薬を調合しています。
落ち着きますよ。」
「やだ、狭いよ、温泉じゃないんだし…。」
秘伝の入浴剤は不思議な草の香りがした。
狭い湯槽に二人で入り、私は後ろから抱き締められた。
「…自分だって何も凄くありません。
いつだって次の試合が不安ですよ…。
島さんだって大学に彼氏さんとの恋愛に小説のお仕事。
19の女性としてとても立派と思います。
しかし、今まで何でも順調に行ってた島さんも、遂に壁にぶつかったのですね。
それも小説家ではなく、一人の学生として。」
「何でわかるの?そうなの!
私、高校時代のチームメイトに偉そうに相談に乗って適当な助言してたけど、私が一番みんなを必要としてたのよ!南部ちゃんに瑞穂に三好先生に柳生ちゃん!
私は寂しいのよ!」
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私の中の「if」から生まれた「友子」には誰も居なかった。
整形した容姿で男を釣ることは友子の生きてる証だった。
しかし、友子には最も自分に似た和夫という幼なじみが居た。
彼は「人助け」とは名ばかりの喧嘩を売っては、傷を創ることで命を感じていた