6月。W杯の予選敗退は日本国民の心を落ち込ませた。
五月病をこじらせてる私も例外ではなかった。
輝きを増す親友の活躍は、私が学業に専念出来ない言い訳にされていた。
しかし、サッカーの話題で落ち込むのなら、サッカーの話題で盛り上がるしかなかったのかもしれない。
突然の後輩からの誘い。
あまりに嬉しくて二つ返事でOKを出した。
「久しぶり!南部ちゃん元気そうでよかった!」
「し、島さん、そんな大袈裟な!卒業式から3ヶ月ですよ…。」
親友の変わらない、でも何処かが変わった顔を見た瞬間、私は思い切り抱きついた。
そして安心した途端に泣いてしまった。
「柳生ちゃん、ホントにありがとうね。」
「いいえ、私はこの講演会の生徒会側の代表なだけです。
先輩達を誘おうってのは優矢くんのアイデアで…。」
相変わらず後輩カップルはラブラブで羨ましい。
私の彼氏は就活で会えない日が続く。
今一番側に居てほしいのにな…。
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哲也との満たされない夜の生活が続くのに、昼間は徹底的に依存する友子。
「なんて最低な生き方してんだろ…。
お母さんの後を追うべきかな…?」
日に日に不安定になる友子に可能な限り優しく接する哲也。
しかし、死神は突然訪れた。
「…お兄ちゃんと別れてください!
貴女と居るとお兄ちゃんは駄目になります!」
浮気の修羅場で「妹だ」と誤魔化す駄目男は居るが、この娘は本物だった。
いや、血縁だけでなく、愛情が本物だった。
友子に根拠はないが、勘というよりニオイだ。
この兄妹は一線を越えている。
原因は自分だと友子は思った。
「私の不安定さが彼をも不安にさせ、実の妹と堕ちることを選んだのだ。」と。
哲也には感謝していた。だからこそ別れてあげなければ、と思いながらも、この小生意気な子供には感謝はしていない友子だった。
「いいわ、別れてあげる…。今夜にも出ていくわよ。
でも、これだけは言わせて。
ガキが大人の世界に首突っ込むなら覚悟しな!」
もう二度と哲也に会わないと、目の前に居た妹に平手打ちすることで誓いを立てた。
これで友子を迷わせるものはなかった。
服や化粧だけでは足りない。
命を絶つ前に、本当に生まれ変われるかを試したい。
母の遺産と学費を注ぎ込み、顔と身体にメスを入れた。
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「へぇ~、志磨子先生が、北条町が生んだスター、南部彩と親友とはね。」
「大島さん、秘密は守って!