自作小説「サミアちゃんのご高説」は、イギリス児童文学の母と呼ばれたイーデス・ネズビットの「砂の妖精」をモチーフに私が創作したものです。
****
サミアちゃん「読者の皆様、お久しぶりじゃ。
作者に代わって、今日はワシから問題を出そう。原作の『砂の妖精』をこれから読んでみたいと思う者は、ネタバレ部分もあるからここから先は要注意じゃ。
『砂の妖精・サミアッドはどんな願いも叶えてくれる魔法が使える。
何千年も昔から生き続け、その時代、時代に生きる人間達の願いを叶えてきたのじゃ。
しかし、魔法の効果は一日一回、日没まで。時間切れとなれば魔法は石に変わってしまうのじゃ。
で、ここでワシから問題じゃ。
『何千年かけてあらゆる物を与えてきたサミアッドが、決して与えなかったものがある。
それは何じゃと思う?
ヒントはイーデスの『砂の妖精』とワシの作者が書いたワシと子供達の物語との違いにある。
そう、タイトルに違いの一端が、ワシ自身が他のサミアッドが与えなかったものを最も与えたかもしれんな。
では解答じゃ。
原作の砂の妖精が決して人間に与えなかったのは
『忠告』じゃ。
サミアッドの魔法は一日一回、日没まで。
そしてワシ以外のサミアッドは人間が申し出る願いに対して決して『それでいいのか?』とは言わなかった。
ただ言葉のとおりに魔法をかけるだけじゃ。
決して『その願いを叶えてしまったら、お前はこうこう、こうなってしまうんじゃぞ?』とは言わなかったじゃ。
だから過去には『翼をください』と言った者に翼を与えたら、その人間は我を忘れて飛び続けた。
そして時間さえも忘れて大空で日没を迎えたのじゃ。
翼は石となり、地面に…。と、いうわけじゃ。
このエピソードを聞き出せたのも、原作に登場するアンシアという少女が『私が何か言っても、話の途中で願いを叶えようとしないでください!どうして私達の願い上手くいかないのでしょうか?』と、尋ねたからサミアッドは語り出したのじゃ。
昔の人間は食べ物を欲しがったが、今日の人間は理想が高くなりすぎたと。日没までに食べきれなかった食べ物は石になるが『みんなから愛される』や『花のような美しさ』をどうやって石にする?だからただ消えるようになったのじゃ。
そんな原作のサミアッドもアンシアに言った。『お前さんは親切じゃな』と。
以上でワシからの『幸せへのご高説』は終わりじゃ