虎徹を買う女 15 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「…私には難しい歴史や生まれ変わりのことを言われてもわかりませんわ。
鴻池なんて母方の姓なだけで、別にその当時の商人さんの魂が乗り移ったわけではありません。

でも、同じ女としてわかるんです。
本物とか贋者じゃなく、偽りのない『自分』をもう一度、近藤勇局長に見せたかったのですね…。」

「い、いえ私はそんな…。」

「おみねさん、女の想いの強さは私も同じです。
でも、貴女は自分自身を許してあげてください。
他人に自分を偽ることは出来ても、自分で自分を騙すことは出来ないんですよ。

…さっきまでの近藤刑事と原さんのお話を聞いて思ったんです。
新撰組に助けられた鴻池のご主人は、おみねさんの事を存じ上げてたからこそ、貴女の遺志を汲んで、近藤勇局長に『本物』の虎徹を贈答したんじゃないでしょうか?
私は占い師じゃありませんから、歴史の真実を言い当てられるわけではありません。

…でも、そう思いたいんです。
鴻池が本当に私のご先祖様で、私にも同じ血が流れてるならば、そう…思いたいんです…。」

北御門瞳のその言葉はおみねさんの霊に確かに届いた。

「悔い」から解放された彼女は、唄い続けるウリエルに語りかけた。

「もう、大丈夫です。
貴女の唄がなくとも私は自分で逝けます。
私の想いは、最初から勇様に届いてたのですね…。
そう思いたいです。
それに、この世に執着するよりも、あの世での再会に賭けてみたいですわ。」

唄を止めたウリエルが、割れたオフィスの窓から空を指し、夜空に光輝く階段を示した。

「ほら、ジェイコブス・ラダーを用意したわ。
昔の日本人には馴染みないでしょうけど、あの階段の先が極楽浄土よ。
さぁ。」

「刀に取り憑いて悪さをした私が、本当に極楽に?地獄の針の山の間違いでは?」

「天は生前の『罪』しか知りません。
時間がないわ。ジェイコブス・ラダーは5分と持たないから…。」

(姉さん、大天使風情が天国の階段とか、罪の有無の約束とかは、本当にミカエル殿にお仕置きされますよ!)

(この流れなら仕方ないでしょ!一々杓子定規なことやってるから、浮遊霊の回収率上がらないのよ。
それに、お互いにルシファーを気にしながらのお仕置きもそれはそれで…。)

(だから画像を送らないでください!
絶対にミカエル殿はそのプレイの引き出しありませんから!)

以上、高速念話終了。
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「ご迷惑をおかけしました。
ではいつか極楽で。」