「と、とにかく君に悪魔らしい仕事をさせて、俺がその対価を払えない時に、君達は俺の魂を奪ってくれるんだな?わかった、契約しよう。こんな現実とオサラバ出来るなら何でもいいさ。」
ゼパルという男はパピルスの紙を取り出した。
俺がサインすれば契約成立。
その時、興味を無くしたはずの白いマルチーズ、『殺人の悪魔グラシャ=ラボラス』が俺に忠告した。
「兄さん、俺はソロモンNo.25でゼパルの旦那は16位。これがどういうことかわかるかい?」
姿はマルチーズでも、その言葉と態度はどこか世話焼きでお節介な印象があった。
「つまり…殺人よりも破局の方が高位で、神や天使側から見れば罪が重い悪魔と見なされているってことですか?」
俺は率直な意見を述べただけで他意はなかった。
「その通り。
流石は家庭教師の先生だ。
悪魔は本来、神や天使とのみ対立する存在で、人間に興味はない。『殺人』なんてのは神のお気に入りの玩具を始末するのが上手いだけで、天界や魔界では何の自慢にならんのさ。
しかし、ゼパルの旦那が言った様に情愛をコントロールすること、ましてや契約者以外の他人同士を操れる能力がどれほど驚異に扱われたかはわかるだろう?」
「グラシャ=ラボラス、続きは僕自身から…。
うん、その結果がヤンデレストーカー女達に大人気の僕の成れの果てなんだけどね(笑)。
でも、それだけじゃない。僕の『不妊』の能力は女性の喜び奪うことだ。
『授かる喜びを奪う』が『殺人』よりも高位な理由がわかるよね?」
「はい、わかってるつもりです…。」
「いい答えだ。でも序列なんて当てにならない時もあるけどね。『脱衣の悪魔』シトリーさんなんて、意中の人の衣服を脱がすだけのスキルで12位だからね♪」
「けっこう高位の悪魔さんが笑える能力なんですね!今日一番のサプライズですよ!」
「シトリーさんも人気だけど、脱衣の為だけに悪魔と契約しようとは思う人は少なくて…。」
「そうでしょうね…。」
「じゃあ、行こうか。まず君は死を選ぶより、その人妻と円満に別れることを期待して。」
「出来るんですか?」
「女性の契約者より、男性の方が事はシンプルに流れて行くものだよ。『情愛の妖精』に任せて!」
俺と契約したゼパルは『破局の悪魔』と呼ばれるの嫌がり、妖精であることを主張した。
そして店を出た途端、携帯に滝の様なメールが!
勿論、彼女が俺に今すぐ行為を求める内容だ。続