「ここなら大丈夫です。」
「ふわぁ~、広~い!流石は公務員ね。よく儲けてるわ。」
「こ、これは母方のお婆ちゃんから受け継いだもので…パパは市役所勤務ですけど全然な方ですよ。」
「だけど、『南町公園に駐車場が建設されるまで』でしょ?どうせ…。」
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突然の大雨は季節外れの台風となり、遅刻が心配だったけど、休校の知らせに安心した。
騒音と排気ガスに苦しむサミアちゃんに、追い討ちをかけるような豪雨だった。
サミアちゃん自身の魔法で工事を中止するように燿子ちゃんはお願いしたけど、「工事の中止」の代償は「工事が中止になるくらいの豪雨」だった。
水が苦手なサミアちゃんを、どうやって助ければいいのか途方にくれた僕達を助けてくれたのは宮崎さんだった。
公園の中までタクシーで入ってきて、僕達を自分の家に連れてきた。
そして今、僕達は宮崎さんの…。
「家庭菜園ってレベルじゃないわね…。」
「はい、ママの趣味で全天候型のソーラーハウスを庭の一部に設置したんです。
ここで安静にしてれば、砂の妖精さんも元気を取り戻してくれるはずです。」
「妙子…と言ったな…恩に着るぞ…まさか賢司の友達にワシが視える子がまだ居たとは…。」
「宮崎さんは救世主だよ!
でも凄いなぁ、僕達三人みんな自分からサミアちゃんが視えるなんて!何か選ばれた戦士みたいだよ!」
「…浮かれてないの!ねぇ、妙子ちゃん、ちょっといい?
賢司くんはサミアちゃんを見ててね。」
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全てタイミングが良すぎる。
工事関係者に追い出されそうな瞬間に妙子ちゃんがタクシーで現れ、サミアちゃんを最初から知ってたなんて…。
それに、私のお願いが、サミアちゃんの魔法がまるで効かなかったみたいな(確かに願いは叶ったけど、前よりリスクが大きくなった)
「妙子ちゃん、私達は親友だよね?
知ってること話してもらっていい?」
私は正直怖かった。妙子ちゃんが車中で口唇を噛みしめ、泣くのを我慢してるのは直ぐにわかった。
賢司くんは能天気に「サミアちゃん繋がりの仲間」が増えたなんて思ってるんだろうけど…。
「燿子さん、私、森崎賢司くんが好きです!!」
「…え…?」
わかってた。でも聞きたくなかった。知りたくなかった。
「燿子さんも賢司くんを好きなのはわかってます。
でも、賢司くんは、私でも、貴女でもない!
あの妖精さんが好きなんです!
だから私は悪魔と契約したんです!」