「お帰りなさい、賢司。待ってたわ。早く手を洗って食卓に着きなさい。」
重い気持ちで燿子ちゃんと別れ、家に着くとお母さんとお父さんが、いつも以上に優しく迎えてくれた。
「どうしたの?こんなご馳走?今日は何かの記念日だったっけ?」
お父さんとお母さんの昔の事を僕はあまり知りたがらない方だと思う。
だから僕も一々憶えて無かったけど…。
「今日から記念日になるのさ!
父さんの出世の足がかりになるからなぁ、賢司。」
「ホントに、社長さんが貴方の案を後押ししてくれて良かったわ。」
「あぁ、部長達はリスクが高いと入札に消極的だったけど、市の仕事は儲けが少なくても、社の宣伝になるからなあ。」
お父さんは建築会社の営業担当だ。
どんな仕事をしてるかはあまり知らないけど…。市の仕事ってまさか…。
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「お姉ちゃん、ただいま。」
「おかえり、燿子。
どうした?元気ないな?」
「…うん、実は南町公園が…。」
「あぁ、配達先の人達も噂してたよ。
何か突然慌ただしく決まった、って言ってたよ。
燿子に取ってあそこは思い出深い公園だもんなぁ。」
「…うん。ねぇ、お姉ちゃん、公園の取り壊しが中止になるって、あり得ないよね?
ほら、地元の人の反対とか…。」
「駐車場を希望してる住民はけっこう多いみたいだけどね。
何?そんなにあの公園が大切?賢ちゃんとゲームしてただけじゃないの?」
「そうなんだけどね…。」
「そんなに大事な公園なら、あいつにお願いすればぁ?」
「お父さんの話はやめて!
ごめんなさい、お姉ちゃん。
もう、この話しないからお姉ちゃんと暮らさせて!」
「何言ってんのよ!当たり前でしょ。燿子をあそこに戻すつもりはないわ。
ごめんね、お姉ちゃんにもっと稼ぎがあれば、塾や学校の費用をあいつに出してもらわずに済むのに…。」
「私、塾辞めてもいいよ?」
「バカ!勉強はしなさい!お姉ちゃんみたいに苦労するわよ!
とにかく、あいつは別として、お姉ちゃんも近所の人に駐車場建設反対の人の意見を集めてみるわ。」
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「妙子!今まで苦労かけたなぁ!
この駐車場で市の財政を立て直したら、キャリア組に対抗するのも夢じゃない!」
私のパパは市役所勤務です。
そして市側の駐車場建設の窓口担当みたいです。
私は女教皇のカードに話かけます。
「レビアたん、これって…やっぱり?」
「ええ、貴女の契約とおりよ♪」
続