「それで?主人公の彼は友人から『宇宙人の手』を譲り受けたわけ?」
燿子ちゃんは目を輝かして聞く。
確かに『猿の手』をモチーフにした話だが、現代風にアレンジされてる。当然か。1世紀近く経過してるもんね。
妙子ちゃんは話を続けて…。
※以下、ネタバレ注意
「兄妹のお兄さんは、描写はありませんでしたが、幾らかのお金で『宇宙人の手』を買い取ったはずです。
そのお金が友人の彼の逃走資金に役立ったかまで描写はありませんでした。
場面は変わり、宇宙人の手を自宅の古本屋に持ち帰った兄は、この『宇宙人の手』の使い道を妹と思案していました。」
「兄貴、どうするのよ、こんなの買ってきて。
どんな願いをしても不幸になるんじゃないの?」
「喫茶店の一万円がいい例さ。
ウエイトレスにコーヒーをこぼされたから、俺は一万円を手にした。
シャツは汚れ、火傷しそうになった『代償』には丁度いいかもしれないし、店には一万円の『損失』だ。
問題はそこだ。
自分が何かを欲しがるから、どこかで誰かが同じ分を失っているのかもしれない。
ならば、全体が幸福になるお願いをすればいいんだ。」
「そんなのどうするの?」
「宇宙人の手よ。願わくば…。『未来に希望が持てますように』だ。」
「う~ん、抽象的過ぎて叶ったかわからないね。」
「あぁ、そうだな。
だが、願いはもう一つある。」
「兄貴、何で?わざわざいいじゃない。」
「いや、これをしないと、どこかで誰かがまた苦しむ。
最後の願いだ。願わくば…。『宇宙人の手よ、お前自身が消えて無くなれ、永久に!』」
****
「はい、これで宇宙人の手は消えてなくなり、兄妹は今まで通りに暮らしました。で、話は終わります。
でも、演出として、喫茶店から流れるラジオのニュースは、戦争や事件のニュースでしたが、宇宙人の手が消えた後に流れるニュースは、停戦条約が締結したり、犯人が逮捕されたニュースがさりげなく流れてました。」
話終えた妙子ちゃん。
僕も燿子ちゃんも背筋がゾクゾクする話だった。
でも…。
「すげー!真面目な宮崎が、そんな怖い話知ってたのかよー!」
「宮崎さんの話方が余計に怖いよー!ねぇ、他にもお話してよー。」
これが一学期に嫌われてた宮崎さん?
「怖い話」がクラスメートみんなを惹き付けたみたいだ。
「あの、その私…。」
その時、燿子ちゃんは
「上手くいったわ…。サミアちゃん」
と呟いた。