公園の砂場から姿を現した金髪巻き毛の女の子は「サミアッド」と名乗り、僕達のお願いを何でも叶えてあげると言った。
漫画や小説の様な突然の出来事。
当然ながら僕はこの子の正体が気になって仕方がない。
120年近くも本当に誰からも話しかけられなかったのだろうか?
この町は新興のニュータウンだから、よくわからないけど公園も砂場も出来てまだ新しいはずだ。
でも、僕と一緒に彼女に出会った燿子ちゃんはそんなことどうでも良かったみたいだ。
「来た~!『何でも願いを叶えてくれる』
いつかそんなリアル・ドラ○ンボールな話が私にも転がってくると信じてたわ!
サミアちゃん、ホントにどんな願いでもいいの?」
燿子ちゃんは「サミアッド」と名乗った彼女を「サミアちゃん」と呼んだ。
「サミアッド」はもしかすると、彼女の種族とか何とかで、彼女の個人じゃないかもしれない。
でも、彼女の方も燿子ちゃんの呼び方を気にしてないかんじだった。
「ほう、少女の方は乗り気ではないか。
無論、ワシはどんな願いでも叶えられる。
『ランプの精』のように色恋や命に縛りはつけん。
但し!願いは一日一回までで、効果は日没までじゃ。
せいぜい無い頭を搾るんじゃな、少年少女よ!」
可愛い英国風少女が自分を「ワシ」なんて言うのは、日本語を間違って憶えたのかもしれない。
でも、三角帽子とマントの姿と似合ってる…。
「ねぇ、サミアちゃん、でいいかな?
君のその姿、魔女とか、悪魔みたいだけど…まさか願いを叶えたら、魂を奪うとか、地獄に連れてくってことないよね?」
「賢司くん、サミアちゃんに失礼よ!
そんなこと言ったら賢司くんのお願い叶えて貰えなくなるよ?」
燿子ちゃんの言う通りかもしれない。
サミアちゃんがもし、漫画に出てくる魔物なら、素直に正体を明かすはずないか…。
「少年の方が慎重そうではないか…。
よい、男とは常に汝の情を客観視できる者であれ…。
まぁ、疑念を持つのは当然じゃ。
ワシの本来の姿を見たければ見せてやるが、覚悟しておくんだな…。
さぁ、それより願いを言え。子供に遠慮は要らぬ。」
「そうよ、賢司くん、叶えた代償があったとしても、その時に考えたらいいのよ!
あぁ、どうしよう?
地位?名誉?財産?不老不死?世界征服もいいけど、イケメンに囲まれる酒池肉林も捨て難い!
そうだ!『何度でも願いがかないますように』は?」
「どうせ日没になると消えるぞ?」