燿子ちゃんは願いを一つに絞りあぐねていた。
僕はすぐにでも
「サミアちゃんの正体を教えて!」
とお願いしたいくらいだった。
しかし…。
「大変だー!
燿子ちゃん、話に夢中になってて、時間を忘れてたよ!
塾の送迎バスに間に合わないよ!」
燿子ちゃんは未だにサミアちゃんと問答してたが、僕の声にやっと我に返った!
「ホントだ~!遅れたらペナルティが酷いのに!
そうだわ、『私達をいつもの送迎バスに乗せて 』これが願いよ!」
バスの発着場は公園を出て角を曲がってすぐだけど、今丁度バスが出るくらいの時間だ。
普通なら間に合わない。
「わかった。少女の願いはそれだな?変更せぬな?」
サミアちゃんはファイナルアンサーを求め、燿子ちゃんも了承した。
すると、サミアちゃんは大きく息を吸い込み、白くしなやかな両手を燿子ちゃんの首に絡め、吸い込んだ息を耳元に吹き付けた。そして、
「ゴッド♪ブレス♪ユー」
と囁いた。
「くすぐったい」
「さぁ、願いは叶えた。
急げ!」
「ホントに?信じてるわ!賢司くん、行くよ!」
慌てて僕の手を引く燿子ちゃん。
でも…。
「待ってよ、まだ僕の願いが…。
ええと…『僕らの友達で居て!』」
それしか思いつかなかった。
ただ、「明日にはもう居なくなってるのでは?」
そう考えたくなかった。
引っ張られる僕をサミアちゃんは追いかけ、同様に息を吹き付けた。
くすぐったくて、恥ずかしかったけど、
「ゴッド・ブレス・ユー」
の言葉は意味はわからなくとも何だか嬉しかった。
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「やっぱり発着時間には間に合わなかったね。」
必死に走ったけど、僕達は大きく遅れた。
「はぁ、やっぱり魔法なんてないかぁ~。タクシーで行く?一限遅れて行く?」
と燿子ちゃんが僕に尋ねた時に…。
「ブウウン。」
遠くから聞こえるエンジン音。
バスが遅れて来た!
「ウソ?これが魔法?」
唖然とする僕達に馴染みの運転手さんが釈明する。
「前の大通りで玉突き事故があってさ~。迂回ばっかりしてたら、こんな時間になってね~。
随分待たせてごめんね~。
塾側には僕から連絡入れたから大丈夫だよ!さぁ、乗って。」
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「ねぇ、賢司…くん?」
「うん、多分燿子ちゃんと同じこと考えてる…。」
「気にしてもしょうがないよ!
ずっと塾で上の空だったでしょう?
私達が事故を起こしたんじゃないわ!」
続