サミアちゃんのご高説3 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

燿子ちゃんは願いを一つに絞りあぐねていた。
僕はすぐにでも

「サミアちゃんの正体を教えて!」

とお願いしたいくらいだった。
しかし…。

「大変だー!
燿子ちゃん、話に夢中になってて、時間を忘れてたよ!
塾の送迎バスに間に合わないよ!」

燿子ちゃんは未だにサミアちゃんと問答してたが、僕の声にやっと我に返った!

「ホントだ~!遅れたらペナルティが酷いのに!
そうだわ、『私達をいつもの送迎バスに乗せて 』これが願いよ!」

バスの発着場は公園を出て角を曲がってすぐだけど、今丁度バスが出るくらいの時間だ。
普通なら間に合わない。

「わかった。少女の願いはそれだな?変更せぬな?」

サミアちゃんはファイナルアンサーを求め、燿子ちゃんも了承した。

すると、サミアちゃんは大きく息を吸い込み、白くしなやかな両手を燿子ちゃんの首に絡め、吸い込んだ息を耳元に吹き付けた。そして、

「ゴッド♪ブレス♪ユー」

と囁いた。

「くすぐったい」

「さぁ、願いは叶えた。
急げ!」

「ホントに?信じてるわ!賢司くん、行くよ!」

慌てて僕の手を引く燿子ちゃん。
でも…。

「待ってよ、まだ僕の願いが…。
ええと…『僕らの友達で居て!』」

それしか思いつかなかった。
ただ、「明日にはもう居なくなってるのでは?」

そう考えたくなかった。

引っ張られる僕をサミアちゃんは追いかけ、同様に息を吹き付けた。
くすぐったくて、恥ずかしかったけど、
「ゴッド・ブレス・ユー」
の言葉は意味はわからなくとも何だか嬉しかった。

****

「やっぱり発着時間には間に合わなかったね。」

必死に走ったけど、僕達は大きく遅れた。

「はぁ、やっぱり魔法なんてないかぁ~。タクシーで行く?一限遅れて行く?」

と燿子ちゃんが僕に尋ねた時に…。

「ブウウン。」

遠くから聞こえるエンジン音。
バスが遅れて来た!

「ウソ?これが魔法?」

唖然とする僕達に馴染みの運転手さんが釈明する。

「前の大通りで玉突き事故があってさ~。迂回ばっかりしてたら、こんな時間になってね~。
随分待たせてごめんね~。
塾側には僕から連絡入れたから大丈夫だよ!さぁ、乗って。」

****

「ねぇ、賢司…くん?」

「うん、多分燿子ちゃんと同じこと考えてる…。」

「気にしてもしょうがないよ!
ずっと塾で上の空だったでしょう?
私達が事故を起こしたんじゃないわ!」