遂に北条祭の幕開けです。
二日間のイベントのうち、初日は運動部、二日目は文化部がメインです。
そして、初日午前のメインイベント、
「戯曲剣舞・るろうに剣心」
の開演です。
黒の着物に刀を差して男装した南部先輩。
「キャー!南部先輩凛々しいー!」
早くも女生徒と観客のハートを掴んだようです。
「飛天御剣流・龍鎚閃!」
技名を叫ぶと同時に華麗に舞う南部先輩の緋村剣心。
みんな物語よりも南部先輩しか見てません。
「剣術はいいのよ、剣術は問題はセリフよ。」
と、私の横で舞台を見守るのは北条祭実行委員長の島敦子さん。
私はこの演出しましたけど、具体的な脚本は島先輩によるものです。
「…どんなに御託を並べようとも、所詮人斬りは人斬り。
それがこの世の真実でごじゃる。」
うわぁ、「ごじゃる」になったけど、動揺せず押し切るのは大物のハートですね、南部先輩。
「だが、願わくば薫殿の申される戯言が真実となるのような世の中を望むでござる…。」
メインの長台詞が終わった。
後はクライマックスのダンス混じりの殺陣だけよ。
(こ、こんな動きをしながら剣を振れるわけありません。
いや、そもそも全てが架空の世界。
精神修行、精神修行だ。
わがままを口にするのは自分の邪念ゆえ…。)
「抜刀斎は昔の志士名。
緋村剣心でござるよ。
拙者、るろう人故に、いつまた流れるかわからぬでごさるが…。それまで暫くはお世話になるでござるよ。」
(蒼磨さま、女性同士の抱擁をお許し下さいませ。
お許し下さらない場合は存分にお仕置きを…。)
「さやかちゃん、幕よ!みんな良くやったわ!
防具つけて顔隠して退屈な試合を見せてた去年と大違いだわ!」
割れんばかりの拍手喝采。
島先輩の手腕は凄いですが、もう剣道部の限界を越えてます!
でも…演劇部にはいいプレッシャーになったかも(笑)。
***
「あの、ここが北条女学園ですよ。
でも、チケットお持ちじゃないんですよね?
良かったら私と周りませんか?
私、使い走りでお砂糖を買いに行っただけなのに、こんな幸運な巡り合いなんて…。」
本当は学園の所在地だけは知っていたんですがね。
事を荒立てずに中に入る為には君みたいな無垢な少女の協力が必要だったのです。
「いいのですか?
山名さんは、男性と約束があったのでは?」
「私なんかを相手にする男子居ないですよ、居たとしても真田さんとなら…。」