「どしたの理恵?お砂糖頼んだだけなのに、そんなイケメンどこに売ってたの?」
「あたしもイケメンは慢性的に切らしてるんですけどー!」
「おあいにくさま、真田さんは『私のチケット』で入場したんです。
さぁ、行こう」
…真田さん?まさかそんなはずないよね。
正門前で騒ぐ数名の生徒の声に反応する私。
まさかナイトメア将軍が人間に化けてくるはずは…。
彼がインキュバスから人間に化けた時の名前は「真田正行」…。まさか…ね。
でもあの女子の騒ぎ具合。
私は駆け出していた。
決してナイトメア将軍に会いたいわけじゃないのよ。
生徒会長として騒ぎを確認したいだけで…。
「京子さん、着物で走るのは危険です。」
帯の隙間から顔を出したアイちゃんの注意も聞かず私は夢中でした。
「申し訳ございませんレディ、こちらの山名さんとの約束ですので…。
しかし、ご希望とあれば、今夜私のベットは空きがありますよ。」
「きゃあ~、そんなまだ早いですよ。」
「わ、私はウェルカムです!」
「初めては誰でも怖いですよ。
よろしければ、夢の中で予行演習いたしましょうか?」
「なんだ、そういう意味か~?女子中学生相手に駄目ですよ~」
うわぁ、絶対ナイトメア将軍だ!
角も翼も隠して人間そのものだけど…。
よくもまぁ、無人島で私にあんなに優しくしてくれたのに、今日会ったばかりの山名さん達にあんな甘い言葉を!!
「ゴーウォー!」
「え?何?寒い!秋なのに何で急に冬みたいに?」
「京子さん、嫉妬と怒りでアイアンマテリアルが反応してるです!
変身しなくても寒気の魔力がダダ漏れしてるです!」
へぇ~、この姿で魔法が使えるなんて、いよいよ私も妖怪の仲間入りかなぁ~?
「なぁ~んだ、ただの寒気かぁ~。
アイちゃん、『雪崩』の呪文教えなさい。
今の私なら使える自信あるの。」
「知ってても教えれないですー!
罪もない女子生徒も巻き添えになるです!」
「それが目的よ。
ナイトメア将軍だけは助けるから。」
「魔王軍より怖いですー!
私一人でも逃げたいです。」
私とアイちゃんのやり取りに気付いた真田さんが取り巻く女の子をよそに近づいてきた。
「京子!こんなに早く見つかって嬉しいよ。」
「そんな…呼び捨てなんて、生徒会長とどんな仲なんですか?」
女の子の視線が一気に私に集まる。
「京子とは一晩中、身体を温めあった仲ですが?」
違う!やめてよ