「遂にこの日が来たね。」
「あぁ、準決勝で徳川実業と対戦出来るなんて去年なら考えられなかったな。
高坂先輩が転校して来てから全てが変わった…。」
「生徒会選挙で忙しくてごめんね。
でも、今日は精一杯応援するわ!」
「あぁ、恵里菜が居てくれたら俺はどんな試合でも負ける気はしないさ。
ドイツで頑張ってる小菅に恥ずかしくない結果を報告しないとな。」
私より小さな優矢くんの身体は、エースとしての自覚と責任に満ちていて、出会った頃より大きく見えました。
その背中に輝く11番を、私が女子チームでも同じ番号なのが何よりも誇りです。
私の生徒会選挙に一切ノータッチだったのは全て今日の為に。
そして敗退すれば今日が最後となる三年生の事を考えての優矢くんの決断。
世代交代した男子サッカー部を背負う覚悟があるから、私と一緒に過ごす時間が無くても、愛して合えているから、信じてくれているからこそ…神様、どうか北条学園を勝利に導いて下さい。
全国に行って、三年生ともう少しだけサッカーがしたいです。
全国大会出場の功績を手土産に優矢くんには次期キャプテンになってほしいです。
小菅くんが抜けた今、周囲から好かれる柿崎くんか優矢くんだと思うのですが…。
取りあえず、今日は試合のことだけ考えます。
「いいか、この相手に対して小細工も戦術もない!
個々に自分の持てる力以上の物を出す以外ない!
基本は4-4-2の右に士郎、左に相良だが、士郎は積極的に上がって3トップも意識すること。
相良は左専門にならずトップ下のバイタルエリアに飛び出すチャンスを常に窺うこと!」
いつも以上に真剣に話す高坂先輩。
さすがに今日は張り詰めた表情です。
そして徳川実業の方も入場し…。
「よくここまで勝ち上がったな赤松。だが、ウチの推薦を蹴ったことを後悔させてやるよ。
武田や榎田、そしてお前も全国の器じゃない…。」
「お久しぶりです、尼子先輩。先輩と同じチームより、先輩からゴール奪う方が面白いと思っただけでスよ!」
「お前が居なくてもウチには安国寺にイバチェビッチが居る。」
『留学生かよ!?』
「それに俺達にはお前達には絶対に負けられない理由がある。
特にお前達北条学園にはな…。」
「何ですか?」
「お前ら共学校には死んでも負けんのじゃー!
しかも、毎日毎日女子サッカー部とイチャイチャ合同練習してるような男子校の敵は、滅ぼす!」
『滅ぼす!』
続