「ホントにすみませんでした。」
なりふり構わず頭を下げる赤松くん。
意地もプライドも捨てて柿崎先輩と部員に、そして三好先生に謝った。
「赤松、帰ってきてくれて嬉しいよ。
チームの為に…俺はやっぱりお前に居てほしい。
そして誰にも危険な目に遭ってほしくないだけなんだ。
お前を含めてな…。」
「柿崎先輩、ホントにすみません。大事な右手を…。」
膝をついて涙を流し、大きな身体小さくする赤松くん。
「切りつけたのはお前じゃない。
それに犯人を殴ったお前を見て、少しは気分は良かったのも事実さ…。
でも、その熱い想いは…。」
「はい、片倉先輩にも言われました。
情熱はピッチの中でぶつけたいです。」
自分から進んで左手を柿崎先輩に差し出す赤松くん。
それだけで彼の成長が窺える。
柿崎先輩も怪我をしてない左手を差し出し、和解の固い握手に片倉先輩から拍手が起こり、それが全員に拡がる。
しかし…。
「全く…。男のっていいわね。
だいたい学外で何があったかは想像つくけど…。
身体以上に大きくなったみたいね。」
「あの日三好先生に平手打ちされた意味が、片倉先輩に殴られなかったことでわかりました。
片倉先輩は何十回も俺を殴るチャンスがあったのに…実力の差を知りました。」
「赤松、サッカー好きか?」
武田主将は今まで沈黙を守り、ようやく口を開き、この質問だけをした。
「…考えたこともありませんでした。
でも学校サボっても、昼の繁華街に繰り出しても、俺にはサッカーしかなかったみたいで…。
親からやらされたサッカーじゃないサッカーが、このチームなら出来るかもって…。」
「お前なら出来るさ、赤松。」
「でも、暫くは部活禁止よ!」
「三好先生、何で?もういいじゃないですか?
本人も反省してるし…。」
「先生、私からもお願いします!
やり方が間違ってたかもしれないけど、私が赤松くんに助けられたのも事実だし…。」
宇都宮先輩も三好先生にお願いする。
「赤松くん、君には柳生さんと伊達さやかさんの選挙活動の両方の雑務をやってもらうわ。
全く、女子サッカー部から二人も立候補されると忙しくて忙しくて、人手不足なの。
それでも他の部員以上のトレーニングをこなしてもらうわ。
真田くん、高坂さんこれでいい?」
「あぁ、日曜の試合は全国の常連、徳川実業との大一番だ。
赤松の成長が鍵となる…。
真田、采配を間違うなよ…。」