テッペキ!かるてっと 20 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「ほらほら、ここは保健室よ、静かになさい!
それに南部さんは怪我してるんだから騒がないの!」

三好先生に注意されて静かになった所で、真樹ちゃんはみんなに頭を下げました。
「ご、ごめんなさい…。
私のせいでせっかくの勝負が台無しに…。
それにあんなに活躍してた南部先輩を怪我させるなんて…。」

真樹ちゃんと南部先輩が和解してるのは、保健室に入った時の雰囲気ですぐにわかりました。
しかし、みんなの前で故意的にファウルしたことを謝罪すると、真樹ちゃんは再び肩を震わせ涙を流しました。

「ごめんなさい…。ごめんなさい…。」
下を向いたまま、泣き続ける真樹ちゃんの表情は、黒のロングヘアに隠され読み取れませんでした。

そんな真樹ちゃんの肩に、保健室ベッドから上体を起こした南部先輩が手を添える。

「皆、宇都宮さんは技術も経験もまだまだこれからの選手です。
だからこそ自分をはじめ、皆が暖かく見守ることが大切だと思うのです。
どうか許してやって下さい。
自分は大丈夫ですから。
宇都宮さん、それに君には本当に謝るべき人物が居るだろう?」

南部先輩に促され、ハッと気付いた真樹ちゃんは、その場に居た愛ちゃんに目を合わせて言いました。

「愛ちゃん、本当にごめんなさい…。
南部先輩が居なかったから私、取り返しのつかないことを…。」

愛ちゃんは硬い表情で真樹ちゃんを睨み付けて言いました…。

「実際に怪我をしたのは南部先輩です。
ですから宇都宮さんが私に謝ることも、私が宇都宮さんに謝られる様な関係性では無いのです…。
南部先輩が許してるならそれでいいです。」

愛ちゃんは普段通りの『真樹ちゃん』では無く、わざと『宇都宮さん』と呼びました。
まだ恨みを残してる…。と思ったら…。

「…と言いたいですが、残念ながら真田先輩にお願いされたです。
『どうか宇都宮さんを責めないでくれ』と。
あの方は真樹ちゃんに毅然とレッドカードを提示しながらも、真樹ちゃんのフォローも忘れてなかったです…。
そしてファウルの矛先を向けられた私へのフォローも…。
真田先輩はそういう方です…。
私はそんな…いえ、何でもありません。
…今回だけは真田先輩の顔を立てて許してあげても…いいです…。
真樹ちゃんは軽音、私は漫画…。練習時間の無さに焦る気持ちはわかるです…。」

言い終わると同時に右手を差しのべる愛ちゃん。
堅い握手を交わす二人の手に南部先輩が手を添える。