固く手を握り合った三人に、最上先輩が真樹ちゃんと愛ちゃんの肩を抱き、四人での輪を作る。
「今回は敵味方に分かれましたが、本来私達は四人で一つのディフェンスラインですわ。
宇都宮さんと里見さんは、私と彩が全力でフォローしますから。
今回の経験が、北条学園女子サッカー部のディフェンス・カルテットにとって、鉄壁の絆となることを私は望みますわ。」
最上先輩と南部先輩の配慮により、私達女子部員の4バックはより堅固なものになったと思います。
いえ、女子チームの団結はこの試合でより強固になったと思います。
しかし、その強固な仲間意識の矛先が…。
保健室を訪れた彼に向けられたから大変です!
「彩くん、怪我をしたそうだが大丈夫か?
実家に連絡して車を手配するのに時間がかかって済まない!
直ぐに病院へ行こう。」
本来なら颯爽と現れた三年生の美男子に女子部員からの歓声と、男子部員からのやっかみの声が上がるはずですが…。
「…ほう、お前が噂の南部の男か…?
丁度いい…。
お前には聞きたいことが山ほどある…。」
そこには試合中より迫力のある高坂先輩が居ました。
「瑞穂、今回はお止めしませんわ。
私も彩の彼氏さんからは是非ともいろいろお聞きしたいですわ。」
普段温和な最上先輩までも高坂先輩の火に油を注ぐ。
何をそこまで怒ってるんだろう?
怪我した彼女の為に車を用意してくれて優しい彼氏さんだなと私は考えてたのですが…?
「柳生、この前の話に嘘はないな?」
急に高坂先輩が私に話かけてきたので、私はこの前、島先輩に話したことをそのまま言いました。
「はい、南部先輩は一橋先輩のアパートに同棲してますが、彼女というよりは、身の回りのお世話をする住み込みのメイドみたいです。
しかも一橋先輩には将来を約束したお金持ちのお嬢様が居るみたいですけど。」
「や、柳生さん…。何もみんなの前でその話は…。」
「恵里菜、男子の先輩も居る前で止めろよ!
俺は黙ってたんだぞ!」
「あ゛っ」
南部先輩と優矢くんに言われて事の重大さに今気付きました。
「す、住み込みのメイドー!
あの南部さんが?」
「他に彼女が居るのにメイドなんて!」
「神は何故こうも不公平なのだ!」
「恵里菜、俺はこうなるのわかってたから…。」
はい、全責任は私です(涙)。
その時、愛ちゃんが
「真田先輩まで羨ましがることないのに!京子先輩、可哀想」と呟く