「もうわかってると思うが、黒覆面達は南方のラオ王国の者で、十字架の騎士団は西方の教皇の手先だ。
裏でマケドニウスとオーガスタスが暗躍してるのは事実だ。」
「我が友よ、つまり俺達が同国人同士で争っても何もならないってことだな?」
「その通りだカイレフォンよ。そこで私は皆にひとつずつ条件を出す。
まずはプルート、『司令官の首は諦めろ』」
「むうぅ、我が主よ。確かに諸外国の脅威が迫ってるなら、イカロス司令官ほどこの国を守れる指導者はいない…。」
「プルートよ、それだけではない。司令官には大学の建設を約束させる。
それで手を打て。
どうだ、司令官殿?」
「私は構わない。
元々、大学建設には元老院の中でも私は賛成派だ。
しかし、ロイセン王国と戦争を始めた私とロディテを糾弾せぬのか?」
「見くびるなよ、イカロスよ!
俺達は先の戦争に従軍し、敵国の兵を斬り、敵国の兵に斬られる味方を置き去りにしてきた!
俺達全員が戦争の責任なんかを問う資格は無い!」
「カイレフォンの言うとおりだ!
戦争の是非は民衆が決めることであり、従軍した者の使命は殺戮でも防衛でもない、『自分自身が、家族の為に生き延びること』だ!
そこで次は司令官殿とロディテ様への私からの条件、『全てをルテミス共和国の国民に対して信を問うて下さい』ということです。
公の場、即ち裁判所にて今回のいきさつを洗いざらい証言していただきます。
勿論、あなた方の弁護人は私がします。」
「我が主よ、ならば私が告訴人となろう!
罪状は『我が弟子ディオンを弓矢で射ったこと、及び純潔たるデルフォイの巫女と元老院閣下との不義密通』だ!
戦争に関しては不問だ!
何よりも戦争には勝ったからな!」
「私が裁かれるのは構わない。しかし、身重のロディテに公衆の面前に出せば、デルフォイの神殿は終わりだ!
『信仰を裏切られた』と市民の怒りを買う!
すまない、私は死んでも構わない!
しかし、私は国民もロディテも守りたいのだ!」
「司令官殿、その言葉を聞いて安心しました。
しかし、ロディテ様にも裁判所に出頭していただきます。
その為には…カイレフォンよ、私がお前に提示する条件が重要になる。
つまり…。」
「馬鹿な!危険すぎる!
しかも皆が若過ぎる!」
「カイレフォンよ、危機はそこまで迫っている。
現実から目を反らすな。
事態を救えるのは私でも司令官殿でもない。『永遠巫女』だけだ。」