「知らない、私は何も知らない!ただ屋敷へ案内する様に言われただけだ!
それに私は私兵団長を務めているからかわかるが、これほどの弓の腕前の持ち主など屋敷に残っていない!本当だ!」
「では、イカロス自身が俺を狙ったのか?」
「我が従者プルートよ、それはない。イカロス司令官は隻腕故に剣は握れても、弓は引けぬ。」
「じゃあ、プルートが言ってた、黒覆面の連中か?」
「カイレフォンよ、奴らはプルート達と司令官を衝突させたいのに、プルートを狙っては意味がない!」
「じゃあ、本当に誰が…。」
「我が従者プルートにカイレフォンよ、わかったぞ!イカロス司令官の為に弓を射る人間が誰かを…。
あの人なら…。
だが、今は射られたディオンとやらの手当が先だ!
ソレント!起きろ!傷ついた彼の手当はお前の役目だ!」
「お、お義父様、私は…。」
「この大馬鹿者が!お前が彼の様になってたかもしれんのだぞ!
話は後だ!今は彼の止血を手伝え!」
「は、はい!
ディオンさん…。こんなに血が…。
これが戦争…。これが現実…。」
「この野郎!
ディオンの仇だ!」
「やめんか、治安兵や私兵団に手を出す奴は俺が相手だ!
プルート、仲間をなだめろ!」
(…ウル、ディオンを助けたい…。
劇場で脅されたこともあるけど、穴に落ちたソレントを助けてくれた好い人よ…。)
(わかってる、今ミルからシャハルの鏡を使ってピクシーの薬草を転送してもらってるから!
鏡の大きさまでなら物質を移動できるから!)
(…お願い…。)
(成る程、我らの仕事の時が来たようだな)
(デービット!ティアティア、何でここに?)
(デュラハンとバンシーが『死に行く者』を迎えに来る以外に何の理由がある?)
(お願い、この男を連れてかないでよ!)
(全ては『あのお方』の思し召し…。バンシーは泣きながら彼の名前を告げ、デュラハンの我は桶の血を彼に浴びせるだけ…。)
(デービット…駄目だよ…。ボクはこの人の名を呼べない…。『あのお方』は彼を傍にお呼びにならなかったみたい…。)
(ならば我は彼を助けねばならぬな…。
ティアティア、ブラウニーのジェイミーを呼べ。医者の家を棲家としてる故に腕は確かだ。)
(デービットありがとう恩に着るよ!)
「ディオン、私には貴方が助かる未来が視えるから頑張って!」
「カイレフォンにプルート、屋敷に向かうぞ!司令官達と話合いだ。」