縁談=大円団
「アルラウネちゃん、起きたのかい?」
「…皆が大変な時に寝てられない…。
トーレス、知ってたの?
スクーグズヌフラがセイをシボラない唯一の男の話を…?」
「アルラウネさん、知っていたわけではないんだ。
ただヴェルティの話を聞いてるうちに気付いたんだ。
『森で急死した父親の話は嘘ではない』 と。
ならば、スクーグズヌフラとは常に人間の男から…。」
「トーレス、それは私から話します。
本当にありがとう。
私のこの姿を見ても父の話を信じてくれたのですね。
そう、森で『一人』で入った父はスクーグズヌフラである『私の母』と出会い恋に落ちました。
そして母が私を産んで直ぐに父は心臓の病で…。
そうです、スクーグズヌフラは唯一、自分の子を産む為の『伴侶』だけは精を搾り取らず、心から愛するのです。
勿論、人間でないと知りながら愛してくれる男をですが…そう、トーレス貴方のように…。
トーレス、私を伴侶と思ってくれるのですか?」
「ヴェルティ、森の番人だろうが、尻尾があろうが、過去に男を廃人にしてようが、私はその碧の瞳に恋してる。
お願いだ!私の子を産んでくれ!」
「トーレス、スクーグズヌフラよりも情熱的な貴方…。
私でよければ…。
情熱的な貴方からきっと情熱的な子を授かるでしょう…。」
「…今夜遅いから寝よう…。
そして明日皆だけで結婚式しよう…。
ヴェルティの花嫁姿見たい…。」
「名案だよ、アルラウネちゃん!
我が友よ、森の結婚式とは何とも戯曲的ではないか?」
「カイレフォンよ、全くだ。
私が書いた作品より遥かに劇的な展開だ。
ではトーレスよ式は明日だ。
今晩だけは二人きりで楽しむが良い」
「36の守護天使もお祝いしてくれるわ。
ヴェルティが案内してくれればすぐに森を抜けれるし、予言通りだわ…。」
「アルラウネよ、守護天使について詳しく話てくれないか?」
「…私達の物語を、ガラスの壁の向こう側の異世界から、応援してくれた人達のこと。
トーレスが正体を見抜いた時点で12人の人が36回以上の言葉を贈ってくれたの…。」
「なるほど、正に守護天使の名にふさわしい!」
翌日の昼
「おめでとうトーレス、ヴェルティちゃん!」
「おめでとう!」
「我が友よ、母が私に見合いを勧めた時に私は『まだその時でない』と断った。
祖国に帰られたら『もう、その時でない』と伝えて下さい。」
(次回一部完結)