帰還
「私達が行けるのはここまでです。
あとは森の妖精ニンフがあなた方を案内します。
ウル!皆様を任せましたよ。
何かありましたら鏡で知らせるのですよ。」
「はい、あたしに任せてヴェルティは旦那様のお世話してなさい。身の上から身の下までね♪」
「おぉ、我が友よ!妖精なんて初めて見たぞ。」
「…小さくて綺麗…。」
「黒森の魔女が子供扱いしないで!これでもあんたの10倍は生きてんのよ!
さっさと来ないと置いてきぼりにするわよ!」
「…口悪い妖精…。」
「それではトーレス、森の平和はお前に任せたぞ。」
「我が友よ、私の語学は異民族との交流きっと役立ち、森の平和にも寄与するでしょう。
祖国の母に宜しくお伝え下さい。」
「トーレスよ、『星空を見上げる学者は足下の溝に落ちる』だ。武運を祈る。」
「…お兄ちゃん、これはトーレスのハッピーエンドだよね?」
「アルラウネよ、結婚は終わりではない。
始まりだ。
そしてトーレスにはどうせ壁が立ちはだかる。」
「…スクーグズヌフラという異種族間の壁?」
「違う、トーレス自身の人間としての壁だ。」
「人間のトーレスに人間としての壁があるの?
よくわからない…」
「アルラウネよ、そうやって生きて行くのが人生なのだよ。
男性は時の流れと共に緩やかに成長するが、女性は二度生まれる、だ。」
「私、また生まれるの?」
「女性の成長とは男性と違い常に未完成な可能性を内包している。
それは女性が誕生してなお、『生まれ続けている』からなのだよ。
それが真に愛する者と結ばれた時に、女性は一足飛びに成長する。それが二度目の誕生だ。」
「私はまだ生まれきっていない…。
なんかわかる気がする…。
でも男の子嫌い…。
一人がいい…。」
「アルラウネちゃんにゃまだ早いさ、そのうち素敵な恋人が出来るさ!」
「…トーレスみたいな男がいい…。」
「ルテミス共和国なら、あの村よりたくさんの男から選び放題だぜ!」
「…トーレスみたいな男がいい…。」
「カイレフォンよ、そのことなのだがアルラウネは暫く私の養女するつもりだが異存はないか?」
「我が友よ、ウチの息子と娘とも遊んでやってくれ!」
「…私世話にならない。占いで稼いでもいい…。」
「アルラウネよ、まずは地震からの復興が先だ。
おぉ、白森の出口だ!傷ついた祖国が見える!
カイレフォンよ、仕事は山積みだ!」
一部完