頂きます。
「おはよう、アルラウネよ。良く眠れたかい?」
「うん、おはようお兄ちゃん達。…私だけ見張りをしなくて良かったの…?」
「アルラウネよ、昨日ピクシーの幻を退けてくれたのは何よりもお前のおかげだ。
見張りなんぞ気にすることはない。
さぁ、朝御飯にしようではないか。」
「アルラウネちゃん、俺の従者ニコポリデスの料理は最高だぜ。しっかり食べて予知能力を磨いてくれ!」
「頂きます…。本当に美味しい…。これ、ホントにお婆ちゃんが持たせてくれた野菜で作ったスープ?」
「ワシの腕を誉めてくれてありがとう。」
「ニコポリデスは僕が打った包丁を使ってるから美味しい料理が出来るんだよ。」
「ハリステアスは鍛冶屋見習いだからな…。」
「本当は刀や鎧より、こうやって包丁や剃刀を打つ平和な鍛冶屋になりたいんだけどね。」
「アルラウネよ、私も含めて皆、それだけでは生活出来ない為に従軍したことを幼きお前にもわかってほしい。」
「うん、わかってるつもり…。好きで戦争やってる人達じゃないくらいわかる…。
あっ、燻製のお肉って固いけど美味しい。」
「兵士の保存食として必需品だからな。
私は魔女とはもっと食事の戒律が厳しいかと思ったぞ。」
「野菜も肉も魚も同じ命だから関係ないって、大魔導士さまがお母さんのお母さんが言ってた。だから食べたらいけないのはない…。」
「命を頂きますってやつだな。」
「カイレフォン、どういうこと…?」
「アルラウネちゃん、『頂きます』ってのは作ってくれた人じゃなくて、食材となった肉や魚に言う言葉だって母ちゃんが言ってたよ。『命を頂いて私の命がある』って意味なんだよ。」
「だから生きていられる…。」
「その通りだ、アルラウネよ。」
「皆、今のうちに聞いてくれ。
スクーグズヌフラ対策だ。
奴が男を誘惑する女の悪魔なら、独身者のプルートとトーレスはより危険だ。
アルラウネちゃんはトーレスの娘の様に振る舞ってくれ。
プルートの名は本名じゃないから、奴が名を呼んで誘っても回避する糸口となるかもしれん。」
「…わかった…。全部、言い伝えやおまじないの範囲でどこまで効果あるかわからないけど…。」
「アルラウネよ、言い伝えやおまじないは『生き残った』者の言葉だから仕方あるまい。
その場で犠牲になった者は言葉を残せぬ。」
「…ごちそうさまでした…。
とにかく進むしかない…。
行こう」