争い
「ねぇ、セイをシボラれるとどうなるの?私も搾られるの?」
「ア、アルラウネよ、それは…。そうだな、『元気』を全て吸いとられる感覚かもしれんな…。」
「なるほど、森に棲む男の精を吸って生きる悪魔か…。
白い森とは上手く名付けたものだな!」
「ねぇ、カイレフォン、何でスクーグズヌフラが棲むと白い森で、魔女が棲むと黒い森なの?
私も白がいい…。」
「アルラウネちゃん、それはもう少し君が大きくなったら…。
そうだな、君に好きな男の子が出来たらゆっくり教えてあげるよ…。」
「…男の子嫌い…。
…すぐ弱い者苛めする…。」
「アルラウネよ、今宵はその話をしながら眠ろうではないか?
スクーグズヌフラが我が国のグリーンレディと同じ種なら、寝てる時には襲ってこないのだろう?」
「…うん、スクーグズヌフラは歩いてる時の『草ずれの音』で存在を現すの…。
自分とも仲間とも違う足音が草を踏んだら気をつけて…。」
「了解したぞ、アルラウネよ。
従者達には交代でたき火の番をさせる。
お前のおかげでピクシーは退けられたのだ。
今宵はゆっくり眠ろう。」
「うん、お兄ちゃん、お話の続きして…。
男の子の話…?」
「そうだアルラウネよ、時に少年は自分より弱い者を傷つけてしまうものだ。
何故だと思う?」
「…わからない…。でも本当の強さじゃないと思う…。」
「その通りだアルラウネよ。
傷つけてしまうのはそこに争いがあるからなのだよ…。」
「…私誰とも争いたくない…。
でも魚や牛を食べないと生きていけないことくらいわかるわ。」
「アルラウネよ、私もお前くらいの時には同じ悩みを持ったものだ。
しかし、それは三段階ある争いの一番目、『生存による争い』に過ぎない。」
「…その次は?」
「創作物による争いだ。
これは人間が作りだした芸術、発明、法律、社会、神と人間自ら向かい合うという争いだ。」
「ふーん、最後は?」
「愛しながらの争いだ。」
「愛してる人と何で争うの…?」
「そこに発展があるからだよ、アルラウネ。
大切に思うから愛を注ぎ、相手の愛と争った結果、善なる未来があるのだよ。」
「愛しあうには努力が必要…?」
「人とは可能性も含めて人なのだよ。
人はどうでも良い人の可能性を知ろうともしない。
だから好きの反対は嫌いではなく、無関心なのだよ。」
「…うん、男の子達を無視したこともされたこともない…。」続