妖精
「プルート、マケドニウス、トーレス、オーガスタス、私とアルラウネから離れるなよ!」
「デラス、ニコポリデス、ハリステアス、ジャンナコプーロス、アルラウネちゃんを見失うなよ!
大木だろうが、行き止まりだろうがそれはピクシーの幻だ!
構わず突っ込め!」
「…皆、裏返しの上着を戻しちゃ駄目…。
幻に迷わされても、私達同士がはぐれない為の大事なおまじないだから…。」
「アルラウネよ、だから私達は『別々の幻』を見せられずにすんでいるというわけか?」
「…そう…ピクシーはイタズラはするけど人間に傷つけないと思う…。
本当は森で傷ついた旅人に薬を塗ってくれるくらい優しい妖精よ…。
でも地震が相当怖かったみたいね。
私達に怯えて、幻のモザイクパターンがかなり複雑化してる…。」
「だっ、大丈夫かい?アルラウネちゃん?」
「…大丈夫…。『森の明日の風景』を視続ければ幻なんて怖くない…。
でも休みなく幻を見せてくるから…。」
「アルラウネちゃん、休憩するかい?」
「…いい。それよりお兄ちゃん達、誰か『香草(ハーブ)』を持ってない?探しながら歩いてたけど見つからなくて…。」
「俺の従者、ニコポリデスが料理用に香草を持ってたはずだ!」
「貸して!」
「ワシがハーブを持ってたからってなんだってんだい?」
「ほら、ピクシー達!ハーブはここよ!これで薬草が作れるよ!」
「消えた!アルラウネちゃんが手に握ってたワシのハーブが…!」
「…ピクシーは旅人を迷わすイタズラよりも、薬草作りの方が好きだから…。
…もう、大丈夫…。
これで幻も消えていく…。
私達に興味を無くしたわ。
幻を見せてもつまんないって。
薬草を作り終えてもまた幻を見せに来ないはず…。
…守護天使が22人に増えたおかげかな…?
…今のところ順調…。」
「カイレフォンよ、幼きアルラウネにこれ以上無茶はさせられぬ。しばし休憩としよう!」
「我が友よ、了解したぞ。
デラスは野営を。」
「アルラウネよ、本当に感謝するぞ。」
「…全部お母さんが教えてくれた…。
」
「スクーグズヌフラってのもお母さんから聞いたのかい?」
「…うん。白森の女王だって…。
スクーグズヌフラに出会った旅人は、その小柄で美しい姿に一瞬で心を奪われ、一生分の精を搾り取られるんだって…。
…ねぇ、セイをシボラれるとどうなるの?
…お母さん教えてくれなかった…。」
続