カイレフォンの友人 5 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

運命


「アルラウネよ、この一月、私達はやれることをやった。
私が来た道を帰られなくなるほどの災厄はホントに来るのか?
そしてそれは何なのだ?」

「…私にもわからない…。
自分に近い予言ほど曖昧な画しか視えなくなるの…。
大きな予言ほど身体にかかる負担も大きくなるの…。
私達は自分の事を予言してはいけないの…。」

「それは何故だい?、アルラウネちゃん?」

「カイレフォンよ、簡単なことだ。
もしも自分の未来がわかるなら、人は私利私欲に走り、刹那的な豊かさに溺れるだろう?」

「我が友よ、それのどこがいけない?
人とはそもそもその様な生き物なのでは?」

「カイレフォンよ、享楽を求めるのが悪ではない。
享楽により、人の力と命に限りがあることを忘れるのが悪だとは思わぬか?

私利私欲に走った者の末路は、死を回避しようとするだろう!
そして自らの死を予言出来ても、それが避けられぬと知れば…。」

「そいつぁ、生きながらに死んでいるってわけか、我が友よ。」

「カイレフォンよ、その通りだ。
自分の事を予言してはいけないとは、長らくの魔女の歴史が生み出した知恵であろう。」

「…私は天使や妖精じゃない…。
空飛べないし、重い物を宙に浮かせられない…。」

「それでいいんだよアルラウネちゃん。
だから俺達が中心になって、地震や津波が来た時の備えや蓄えをしてきたし、頑強な建物を多く作った。」

「お兄ちゃん、私わからない…。
予言が出来ても、役に立つ時と立たない時がある…。
お母さんの病気は治らなかったし、お父さんは帰ってこない!
未来を知ってても何も出来ないなら、私こんな力いらない!」

「アルラウネよ、まだ七つのお前に何たる重き運命…。

アルラウネよ、私にお前の問いを全て満たす解はない。

ただ過去の賢者は言った。

変えられるものを変えようとする勇気を持ち、
変わらないものを変わらないと受け入れる静かな心を持ち、
変わらないものか、変えられるものか、そのどちらかを見抜ける知恵を持て

と。アルラウネよ、年端もいかぬ少女のお前にはまだまだ知ることがある。

道が塞がれることが不可避な未来なら、お前と仔猫のシュヴァーシュの案内で森を抜けようではないか?」

「…お兄ちゃん、じゃあ私を連れて行ってくれるの?」

「アルラウネよ、それが不可避の未来ならそうしようではないか!
だが、まずは来るべき災厄に備えることだ。」