カイレフォンの友人 4 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように




「アルラウネよ、私達はまだ直ぐにここを発つわけではない。
それまで考えるがよい。
私達の帰り道がどれほど困難かがわからぬ歳ではないだろう?」

「…うん、お兄ちゃんがそう言うなら、その間考えてる…。」


「我が友よ、君は駐留軍の規律を守る役目を授かり、俺は村人同士の争いの仲介の役を授かった。

国は自国兵よりも、雇われの我らをよほど信頼しているようだ。」

「カイレフォンよ、私の働きにより皆が幸せなることは何よりも素晴らしいことだ。

労働により人は自由になり
労働により自然の支配者となり
労働により自然よりも人は高くいられる。

しかし、従軍と軍規を取り締まることが私の真にやりたいことではない。」

「我が友よ、戦地に赴く度にその話は止めよ。
お前には剣の腕と、他者に律することの尊さを説く才がある。
これが天からの贈り物とは思わぬか?」
「カイレフォンよ、人は暮らしの心配から安易な争い事に参加する。
勿論、私もその中の一人だ。
だが才ある職で暮らしを安定させることは出来ても、真に愛する職では生活できぬものかもしれない。
愛し過ぎる職故に、暮らしを破綻させた同胞を私は知り過ぎている。」

「…お兄ちゃんは兵隊さんをやりたくないの…?」

「アルラウネちゃんよ、我が友は何と劇作家になりたいが為に、戦地に赴いては資金を貯めているのだよ。
そうだアルラウネちゃんよ、魔女の力で我が友の劇作家としての行く末を見てやってくれぬか?」

「カイレフォンよ、止めよ。
私は私の未来等に興味はない。
たとえアルラウネが真実を言い当てても私の意欲は変わらない。」

「…うん、いいよ。仔猫のシュヴァーシュは『無理』って言ってるけど、私は…」

「アルラウネちゃん 、猫と話せるのか?でシュヴァーシュて何て意味?」

「…豚…。」

「そうか、猫に豚って名か…。」

「…予知の邪魔しないで…。
お兄ちゃんの顔をよく観ないと未来が視えない…。

…駄目!お兄ちゃん、直ぐに村を出て!今から二回目の満月の日に来た道から帰られなくなる!」

「アルラウネよ、それは本当か?
一昨日が新月だったからあと一月半。
それでは暫定自治政府は立ち上がらないだろう。」

「我が友よ、我々は雇われ兵だ。ここで撤退しても責めは受けん。」

「カイレフォンよ、私は秩序を取り戻したばかりのこの村からはまだ離れることは出来ない。」

「…森。森を私と抜けるの…」