親子
「…あ、ありがとう家の花壇と仔猫のシュヴァーシュを守ってくれて…。」
「アルラウネ、何という美しき名の響きよ!
君の命を護れたことを、私は命が尽きるまで誇ろう。
我が友カイレフォンが証人だ。」
「異国の英雄よ、名の響きは良くとも、この子の母の国の言葉では呪われた名前です。
意味は『処刑台に咲く花』です。」
「カイレフォンよ、私は耳を疑う。
この様な少女に何という呪い!
名は親が最初に贈る愛であり、行き過ぎた愛は呪いとなる。」
「この子の母の国では、より汚れた名を授かる方が、より高い能力を授かると信じられているからです。」
「アルラウネちゃん、いい子にしてたらお父さんにまた会えるからな!」
「…いい。もう会えないの知ってるから…。」
「異国の英雄達よ、その子の言ってることはおそらく本当です。
この子の母の家系は強い予知能力を持った家系、異国の文化で言う『魔女』の家系なのです。
森でひっそりと暮らしてたこの子の母は、私の息子が出会って7日でアルラウネを産みました。
息子は神の奇跡と言ってましたが…。おそらく他に男が…。
まぁ私は大きなお腹を最初から見たわけではありませんから…。」
「異国の母よ、父なる者は我が子を真に『授かり物、預かり物』の気持ちで育てねば権力の濫用となる。血の繋がりは、誠に育まれた愛には勝てない。」
「育まれた愛、息子の愛はまさにそうでした。
『魔女の家系』を気にすることなく受け入れ、幸せな家庭を作っていました。
そして魔女達を迫害してきたのが…。」
「先代の父王だ。魔女や異民族に寛容な政策を取ったのが、この度失脚した王ってわけか。
なるほど、婆さんの息子さんにしたらそこだけは善人だったってわけか?」
「カイレフォンよ、人が人を善人、悪人と決めつけられるはずなかろう!
ならばカイレフォンよ、お前は善人か?悪人か?」
「我が友よ、俺には善な時もあるし、そうでない時もある!」
「カイレフォンよ、お前がお前に出した答えが、人の人に対する答えだ。」
「…お兄ちゃん達…。ずっとここには居れないの?」
「その通りだアルラウネ、私達は我が国の役人が到着するまで、駐留軍として自治を任されてるだけだ。」
「…私も連れて行って…。ねぇ、お婆ちゃんいいでしょう?」
「アルラウネ、お前がそう決めたなら好きにしなさい。
異国の英雄よ、七つの少女を足手まといと思わないでおくれ」続