12月15日(土)15:00
「よし!今日はここまで!
後はゆっくり休んで明日の練習試合に備えろ!」
ウチのサッカー部は変わっている。
男子と女子は一応個別の部だが、一週間の殆どは合同で練習している。
その指導の全てを指揮しているのが先ほど練習終わりの声を告げた女子部員、高坂瑞穂先輩だ。
二学期に転校して来たばかりの高坂先輩は、直ぐに女子サッカー部を設立し、その天才的なテクニックと、論理的な指導で男子と女子両方を指揮する立場となった。
かく言う俺も高坂先輩の指導により成長し、左サイドのレギュラーに抜擢された。
「スタメンおめでとう!頑張ってね、相良くん。
明日は私も力一杯応援するよ。」
って言ってくれるのは女子サッカー部の左ウイング・柳生恵里菜さん。
入部した頃から気にはなってたが、俺達の距離が縮まったのはほんの二週間前。
勇気を出して
「柳生さんの事をもっと知りたい」
と言えば、
「私も相良くんの事をもっと知りたいです。」
なんて嬉しすぎる返事をしてくれた俺の天使です!
でも、成績優秀で、来年の生徒会長候補と言われる柳生さんと釣り合う男になる為にも、明日の練習試合で活躍しなきゃ!
「男子のみんな!わかってるとは思うけど…。特に武田くんと中島さんの両キャプテンに言っておくわ…。」
この方が女子の顧問の三好真理亜先生。サッカーは素人だが、筋トレや走ったりのフィジカル専門のコーチだ。
魅惑的な風貌と裏腹の鬼コーチだが、先生のお陰で俺の身体は強靭になり、同じ一年の右サイド・小管に追いつけるくらいになった。
「試合の前夜は控えるのよ!」
三好先生のこの言葉で男女ともに下を向くか目を逸らす。
まぁ、とにかくこういう先生です…。
「わかってます!みんなの前で言わないで下さい!!」
必死に否定する中島さんは武田主将と付き合ってる。男女の部員同士で付き合ってるのは二人だけだから、俺としてはうらやまし過ぎるけど…。
柳生さんはどう思ってるのかな…?
「あたしだって今夜は徹と我慢なのよ!」
「何で逆ギレするんですか!」
「…高坂先輩、何を控えるんですか?」
「何だ柳生、知らないのか?選手は肉などの高カロリーな食事を試合前に制限するんだ。」
「柳生さん、それもあるけど男は自家発…。」
「説明しないで相良くん!まぁ肉食には間違いな…。」
って所で口を塞がれる島先輩は柳生さんの保護者だ。