キョクメン突破!~二人の理由 2 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
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12月16日(日) 10:20

今期県大会ベスト4の安宅高校を相手に、小管くんが華麗なパスワークを披露し、私の相良くんが豪快なドリブル突破で相手の守備陣を切り裂く…!

はずでしたが…。

相良くんは強引に突破を試みては阻止され、小管くんはボールを持ちすぎ、攻撃にスピードを持たすことが出来なかった。

「相良くん…。やっぱり相手が悪いよ…。
あの右サイドバックの十河さんは県選抜にも選ばれてる人なんだから、攻め方を変えた方が…。」

大好きな相良くんの活躍を期待してる私だが、彼の独善的なプレーでボールを奪われてはピンチを招く状況に耐えられなかった。

キーパーの榎田先輩の好セーブでゴールは死守しているが状況は良くならなかった。

「柳生ちゃんの言う通りかもな。
どうする高坂?
指示を変えるなら今のうちだぞ。」

控えキーパーの真田先輩は高坂先輩と共にこの試合の采配を担う。
高坂先輩が転校する前は、真田先輩が試合の全てを指揮していた。

「この試合は小管と相良が主役だ。
この程度の局面を突破出来んようでは話にならん。
ボランチの佐竹には今まで通り二人にボールを集めさせる。
だが…。
…仕方ない…。サービスだ。

小管!
いつも言ってるだろう!
お前一人が上手くても絶対に勝てないと!!
サッカーは11人でやるんだ!」

高坂先輩の声は身長150センチの女の子とは思えないほどピッチ全体に響いた。

「…あの相良くんには…?」

高坂先輩はいつも小管くんばかりを気にかけていた。
自分のサッカーの全てを注ぎ込むかのような溺愛ぶりに私には思えた。

確かに相良くんは背も私より10センチ低いし、小管くんほど流麗なテクニシャンじゃないけど…。

「うん?あいつはあのままで構わん…。」


ボールを持った小管くんがまた囲まれていた。

「ボール捌きの巧さで10番付けてるんだろうが、スピードもパワーも無いお前程度は全国にいくらでもいる!」

相手のディフェンスが小管くんを挑発するが、冷静に切り返す。

「知っていますよ。でも僕達のチームは世界にひとつしかありません。」

足元のボールを見ず、相手から目を逸らさずに、アウトサイドでボールを蹴る。

それは無造作にピッチの外にボールを出した様に見えた。
でもそこにはライン際を駆け抜ける右サイドバックの鳥居先輩が居た。
小管くんの得意のノールックパスが成功した。
鳥居先輩は敵陣に侵入する。