ヤスパースの哲学を一言で表せば
「挫折」の哲学です。
敗北ではありません。
壁にぶつかり、立ち上がる時には、その経験により違う自分になっている。
「人間であるということは人間になること」
との言葉を残しています。
自分が自分でなくなるくらいの出会いの経験は既成概念を壊し、更なる可能性を広げます。
ヤスパースは切磋琢磨によるコミュニケーションの高まりを
「愛しながらの争い」
と表現しています。
まぁ、冷静に分析すると中学生の運動部で良く言われる様なことですが…。
やはり極限状態での戦争体験が彼の哲学に大きく影響してると思います。
キルケゴールは
「自己自身は獲得し続ける者。生きてる限り、自分になり続けること。」
と述べてますが、キルケゴールの影響を受けたヤスパースは
「他者との経験により、価値ある変化を獲得するのが人生」
と解釈しています。
追記ですが、ヤスパースはナチスに対して、妻ゲルトルートと共に「自宅籠城」を続けてアメリカの進軍まで粘ったのです。
それは収容所への収監期日が、僅か数十日のところだったそうです。
正にそれは「愛しながらの争い」でヤスパース夫妻は立て籠り中にかけがえのない愛を獲得し続けたと思います。
勿論、ヤスパースには冷静な国力の分析による勝算もあったでしょうがそれにしても凄いです。
死と隣り合わせか、死と引き替えの哲学ばかりが歴史に残りますが、このような
「生を獲得した哲学」
に非常に感銘を受けました。