電車にて。コーンスープ缶を片手に、携帯で『ウルトラソウル』を聞きながら、座ってると——


 隣の席に、20代くらいの綺麗なお姉さんが座ってきました。芸能人で言うと、あびる優さんにそっくり。黄金色の裸にピンク色の口紅がよく似合ってます。


 忙しく乗車してきたお姉さんは、そこに俺のイヤホンのコードが延びていたのを知らないまま座ってしまいました。


携帯『ウ・ル・ト・ラ・ソウッ♪』


 プツン、という音と共に携帯から外されたイヤホン。電車内に響くは携帯から直接放たれる大音量のウルトラソウッ!


俺「!?」


 恥・ず・か・し・いッ! しかし、顔を真っ赤にしてる猶予はありません。早いとこ、この旋律を止めねば。早いとこ、お姉さんのお尻に埋もれたコードをサルベージせねば。


 俺は大急ぎで、海底から(お姉さんの下から)コードをサルベージしようとクレーンを(手を)伸ばします。すると——


俺「あっ…!」


 お姉さんのお尻をサルベージしてしまっていました。


 ……。


 訳:間違って、お姉さんのお尻をつまんでしまいました!


お姉さん「!?」


 こ・りゃ・ヤ・バ・いッ! 当然のごとく驚き、当然のごとく席を立つお姉さん!——しかし、こちらがコードをサルベージしていたのを確認すると、ふたたび席に着きます。


俺「………」


お姉さん「………」


 ど・う・し・よ・うッ! つか、手を伸ばした時点で気付けよ自分! 頭の中が真っ白になり、デコにSOSの文字が浮かびそうです。


 しかし、焦ってるところを気取られてはいけません。なぜなら俺はコードをサルベージしていただけ。お姉さんからしたら、おデコに救難信号を浮かべる必要のない人間なのですからね! どや!


 ……。


 訳:ご・め・ん・な・さいッ、完全に謝るタイミングを逃しました!


 お姉さんには非常に申し訳ありませんが、こうなったらもう誤魔化すしかありません。


 俺は、焦っている表情をお姉さんに見せないよう——飲み終えたコーンスープ缶の中に残った、中々降りてこないコーンを、頑張って飲み干そうとする作業を行いました。飲み干そうとしてる間は、ずっと上を向いていられますからね。


 しかしこういうときに限って、すぐに口の中に飛び込んできやがるコーン! しかし、顔を下げるわけにもいかないのでコーンがあるフリをしながら作業を続行しました。これはこれで、恥・ず・か・し・いッ!


 そうこうやりながら、チラリとお姉さんに目を向けると——


 お姉さんはお姉さんで極端に背中を丸めながら、ご自分のiPodで音楽を再生し、その再生中画面を見つめていました。左から右へと、かさを増やしていく緑色のマーカーを見つめながら時々こちらの表情を伺ってらっしゃいます。


俺「…………」


お姉さん「…………」


 気・ま・ず・い・YOッ!!


 そのあとも、お互いにお互いの焦りを気取られないようにする作業を、お互いに続けましたとさ。


 ご・め・ん・な・さ・いッ!!


 ……。


 訳:ガチでごめんなさい…(泣)←



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 某Mから始まるハンバーガーショップに行ってきた。


 お昼時ということもあり、店内はかなりの混み具合。人混み嫌いな俺が諦めて、別の店で食べようと思ったそのとき——


可愛らしい女店員「お客さま~♪」


 ——偶然レジが一つ空いた。その近くで突っ立ってた俺を、レジの向こうから店員……いやさ可愛らしい女店員が呼び止める。


俺「あ、はい」


 透き通った肌に、ピンク色の唇。はにかんだ笑顔はパンジーの花のよう!


俺「えーっと……」


 しかし帰ろうとしていたところをいきなり呼び止められたため、なかなか注文が決まらない。


 ただでさえ女子が苦手で(女子を前にすると緊張してしまうため)男子校に入ったような俺。可愛らしい女はもっと苦手(もっと緊張してしまう)。


 混み行った飲食店で優柔不断な態度をとる俺を、店員の彼女はどんな顔をして見ているのだろうか。ふと顔を上げて見る。すると——


可愛らしい女店員「~♪」


 ——そこには、嫌な顔ひとつせず0円スマイルを向ける彼女の姿があった! これぞマックの店員の鏡! ハンバーガー4000個分の輝き!


 これ以上この娘を待たせてはならない。俺は、0円スマイルもといハンバーガー4000個を頼みたい衝動を抑え、目についたバーガーのセットを速攻で読み上げる。


可愛らしい女店員「お品物できあがるまで、そちらでお持ちください♪」


 お会計を済ますとマック式ルールに従い、レジの脇で待機。しかし幸か不幸か、このレジに他の客が来ることはなかった。


 ただでさえ苦手な女子の前で待機(電車で目の前に女子が座ってきた場合、目が合わないよう寝たフリをします)。さらに苦手な可愛らしい女子の前で待機(可愛らしい女子が座ってきた場合、次の駅で降ります)。すごく緊張する。


可愛らしい女店員「じー」


 しかも、なんかさっきから…こっち見てる。滅茶苦茶…見られてる。乙女デューサの視線に貫かれ、俺の欲望は石になってしまいそう。


可愛らしい女店員「好き♪」


 見るな…見るな…こっちを見るな。これ以上見られたら俺の欲望が、石どころか(せ)石に——


 って……アレ? いまこの娘、なんつった……?


 好きっつった? え、誰を? 俺を? なんで。まじで。


可愛らしい女店員「なん歳?」


俺「高3の18歳ですけど…」


可愛らしい女店員「えーっ、じゃあ同い年だね♪」


 なんだ? なにが始まるというんだ? 高校生特有の受験タルいやら、あの先生ムカつくやらのトーク?


 ようし、そのトークテーマなら簡単だ! 中学のときイケてなくて高校入ってもまだイケてない芸人なめんな! すぐに面白トークを引き出して——


可愛らしい女店員「実はわたし去年までアメリカに居てー、こっち来んのとか久々で言葉とかちょお滅茶苦茶なんだけどー」


 しかしこちらが話すよりも前に、トークテーマそのものが、アメリカントーク通称アメトークにすり替えられていた。


可愛らしい女店員「向こうでも(恐らくアメリカのこと)マックでバイトしてたんだけどー、向こうのが全然ポテトとか安くてー」


 なんだ? 今度は、なんだ? このままアメトークを広げればいいのか?


 それならば任せろ! アメリカにはいままで計4回も行ったことがある! アメリカ上がり決死隊なめるなよう! さあさあ面白トークを——


可愛らしい女店員「あでも日本のスポーツはすごい尊敬しててー、こないだのナデシコジャパンの澤さんとかすごかったよねー」


 しかしこちらが話すよりも前に、トークテーマ自体が、澤さんトーク通称サルトークにすり替えられていた。


別の店員「お客さま、お待たせ致しました~」


 そこへ最悪のタイミングで、別の店員ができあがったハンバーガーセットを持ってきた。


 それを受け取ると雰囲気はすっかり、またお越しくださいませモードへと移行する。


可愛らしい女店員「ありがとうございました~♪」


俺「あの……」


 いかん。「さっきの好きってなに?」だとか「どこが好きなの?」とか聞くタイミングを完全に失ってしまったのは仕方がないとして、せめて別れ際になにか一つ言わないと。


 しかし……なんと言えばいいんだ? 「今度一緒にお茶でもしようよ」? 「アドレス教えてよ」? いったいどうしたらいいんだ!


俺「じゃあまた、機会があればっ……またここ来るときなんかに、会いましょうっ……」


 考えて考えて考えた結果、ひねり出した答えがこれ。「機会があれば」ってなんだそれ! 「機会があれば」って言うことによって機会逃してんじゃねえか!


 優柔不断な態度を見せる告白された側を、告白した側はどんな表情で見てるのだろうか。ふと顔を上げる。すると——


別の店員「それが原因で店長の浮気、発覚しちゃったらしいよ!」


可愛らしい女店員「あっはは、まじウケる~! そんでそんで? その後どうしてん?」


 ——アメリカ帰り絶対嘘だろ、って言いたくなるほど流暢な日本語で、バーガーを持ってきた別の店員と世間話をしていた。俺の声など聞こえてすらいなかった。


俺「………」


 機会があれば、また来るんで、機会があれば、俺のこと思い出してください。






 店を出たあと、虚しさと悔しさと涙を紛らわすため、ポケットに手をつっこむと、バーガーセットのお釣りを100円多くもらっていたことに気付いた。


 早とちりは100円の得。いや、うれしくねえよ!←



 イ○ポ野郎が家に来やがる。


 イン○野郎(離婚した元旦那S)を喜んで出迎えたい母と妹たちは家でやつが来るのを待ち、


 顔も見たくない俺はやつが家に滞在するこの3日間を、爺さんの家で過ごすことに。久々に訪れたここは、様々な意味で俺をセンチメンタルな気分にしてくれた。


 居間を占拠していたはずのテレビデオ神は世界の亀山モデル(地デジ対応テレビ)に買い換えられ、


 年中無休で蚊のたまり場となっていたポプラの木は、爺さんによりバッサリ切り落とされただの切り株になっていた。なんだかセンチになってしまう爺さんの家。


 ここに来る度こっそりオカズにしていた絵(ロ)本も、本棚を片付けていた爺さんに見つかったらしく、どうどうと机の上に置かれていた。なんだかセンチになってしまう爺さんの家。


俺「古きお尻を知られたなら、新しきお尻を知ればいいじゃないか!」


 近くの古本屋で新しきお尻(新しい絵ロ本)を買ってくる。なんだかセン●リになってしまう俺の息子。


爺さん「おおおーい、起きてるかああー、今日は親戚の家に行くぞおおー」


 こっちが"自○"さんしてると、いっつも良いタイミングで入ってくるのが"爺"さん。これって"自意"識過剰だろうが。


俺「…ノックぐらいしろおおお!!」


 顔に枕を投げつけ視界を塞ぎ、現場を目撃されるのを防ぐ。なんだかセンチになってしまった(びっくりして小さくなってもうた)俺の息子←




 正直、爺さんとは小一時間くらい顔を合わせたくなかったけど、親戚の家へ行くため同じ車に乗らないといけなかった。


俺「……」


爺さん「……」


 しーん。なんだか気まずくなってしまった車の中。しかし、この沈黙を破ったのは爺さんの意外なひとことだった。


爺さん「さっきの、S(母と離婚した俺の元父)みたいだったぞ」


 なんだろう? オ○ニーし過ぎると、やつみたくインポになっちゃうよって意味だろうか?


爺さん「そうじゃなくて、いきなり怒鳴るなんて、まるでSみたいだったて意味」


 ああ、なるほど。ただ部屋に入ってきただけの爺さんに『ノックしろ!』って怒鳴ってしまった俺の姿が——


 ——理不尽な理由で俺を怒鳴り散らし殴り散らしていたSに似てしまっていた、ってわけか。


 この意味を理解したとき俺はかなりショックだった。やつに似てるだなんて言われたこともそうだし、やつみたいな行動を取ってしまったことも両方ショックだった。


爺さん「俺はSが嫌いだ」


 しかし、このひとことに救われる。母や妹たちすらも言ってくれなかったその台詞を、このひとはいとも簡単に言ってくれた。


爺さん「あいつみたくなんなっつーこと」


 なんだか泣きそうになってしまう車の中。


爺さん「さてさて、親戚の家に行ったあとは、回転寿司でも食いにいくかああー」


俺「そうだねっ」







 このあと気まずさの吹き飛んだ車の中で大いに盛り上がったあと、寿司屋で30皿を平らげた。家に帰ってからキリソ生絞りまで一緒に呑んだ←