『つぎにこの無精ひげを剃るときは、つぎの女とデートするときだ!!』と言ってから、早半年! とうとうナマズになっちゃった栂くんの参上だ!




 いや~。ほんとおれ、身だしなみに関してがさつになって来ているなあ。


 男子高に入学して、早三年……日夜、絵(ロ)本の争奪戦にいそしむ飢えた狼の牢獄がおれを変えてしまったにちがいない。


 それでも、だ! それでもたまに女子に会う機会があれば——




 ふだん使わないヘアーワックスを大量に買いにいったり…


 ふだん絶対いかないなんちゃら109で、高い服を買ったり…




 ——ふだん剃らないヒゲですら、きれいさっぱりソリチュードなんだぞう!


 まあ、いまはナマズだけどな。まさにヒゲき。なんちゃって。


 それは例えるならテスト勉強みたいなものだ。本番二週間前の一念発起。ふだん授業寝てる分の一念発起。


 でもだからこそ、授業をさぼった分のつけは大きくて——




 「あ、ひげ剃ってねえや!」とコンビニのトイレに駆け寄れば、強く剃りすぎて口の端を赤く染め…


 「遅刻だああ!!」と駅までダッシュしてみれば、ワックスで固めた髪がくずれ…高かった服は汗だくに…




 ——さらにせっかく買ってきたネックレスをコンビニに置き忘れるという、ヒゲからはじまるヒゲきが俺を襲ったわけだ。


 実際やってみたら上手くいかなかったなあ……とほほ。


 それでも最後は……まあ……うむ。


 かなり照れくさいことを言ったような気がする……なんかこう、まるで少女漫画の1コマのようなひとことを……。


 観覧車がてっぺんにいったら……あーあー、なんでもない! もう忘れた! もう知らない!




 事前にリハーサルしてたあれやこれはことごとく失敗に終わったけど、最後のアドリブはなんとなく上手くいった夏の日。ああ懐かしきかな、初デート。










 ……ってなんの話をしてるんだおれは!!


 まったくあーあー、本気で照れくさくなってきたあーあー。


 鏡の前に立ち無様に伸びきったナマズひげを見て、呼び起こされた思い出。


 半年ぶりにそいつを剃ろうとしたら、やっぱり強く剃りすぎて、やっぱり顎が赤く染まった(笑)←








 今日は、近所で夏祭りがあった。


 田舎にしては規模の大きい祭りだ。地域住民だけならず都会のほうからもわざわざ人がやって来る。わざわざやって来て人混みを作る。


 バカップルやら、ガキんちょやら、バカップルやら、浮かれたヤンキーやら。かなりうざったい人混みだ。


 夏生まれという初期装備を持ち合わせる俺は、わりと夏祭りが好きだった。だがこういう人混みは大嫌いだ。くそくらえ。


 かといって自宅待機を決め込むのは……なんつうか、寂しがり屋の俺(うるせえな、ほっとけよ)には合わない。


 というわけで、友人Hとカラオケに行ってきた。


 Hは、地元の友人。で、俺と同じ寂しがり屋(ほっとけ)。


 お互い上記のような人混みは嫌い。でも夏祭りは好き。そして寂しがり屋。


 三つの共通点を持ち合わせてた俺たちは、お互いを慰めあうように、夕方5時から11時までを歌いつくした。


 おかげで、あ"ー…、喉がやばい。ガラガラだ。




友人H「全曲原キーで歌った代償でしょ」


栂「うるせえな、原キーじゃなきゃそれはもう別の歌だろうが」


友人H「栂が歌ってる時点でもう別の歌だよ音痴」


栂「んだと? 最後にもっかい採点勝負するか?こら」


友人H「上等」


栂「はっ、吠え面かくなよ。負けたら、コンビニで缶ビールとエロ本だからな。公衆の面前でおっさん趣味を晒す辱めを受けてみるといい」




 かくして浜崎あゆみを原キーで歌った俺は、缶ビールという名のなっちゃんオレンジと『制服マニア~スカートの中の征服~』を奢らされた。


 店員に「きみ何歳?」と聞かれたが「19さいくらい」と答えておいた。周りの目は気になったが、ごまかせたのでよしとする。


 その後、コンビニの外で待っていたHに戦利品を渡そうとすると、なっちゃんオレンジだけ奪い取り帰っていった。




 あ"ー…夏祭りなんかくそくらえ←





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 晩飯時。

 母親が(どっかの竹藪から)パクってきた笹に、喜んで短冊をくくりつける妹たち。



長女「プールで25メートル泳げますように」次女「たこ屋さんになれますように」三女「○△※……」



 たこ屋さん=床屋。三女の願いは、視力1.0を誇る俺ですら解読できなかった。




 さて、今年も七夕がやってきやがった。


 夜空の向こうじゃ、織り卑雌とシコ星のバカップルが、天の川をベッドにした年に一度の合体パーティー開催しているとこだろう。


 だが生憎、俺たちの住む地域じゃおまえらの乱交パーティーなんか雲のモザイクさんがちゃあんと覆い隠してくれている。ざまあ見ろ。


 夜空のバカップルに嫉妬して俺の数少ない(うるせえな、いいんだよ)恋愛話をあげるとしたら……




 そうだなまず、時間枠を小6のこの時期に戻そう。


 7月のはじめ、席替えがあった。


 真ん中の前から三番目の席。隣に座るは、ちょっと風変わりで話したがりなN。


 決して美人とは言えない顔立ちだったが(友人一同に、Nのことが好き、とバレてかなり引かれたのを覚えてる)……色々な身の上話を持ち出しては、色とりどりに変化していくその表情に惹かれるのに時間はかからなかった。


 初恋だった。無駄にダボダボな服(当時はそれがカッコいいと思ってた)を着てみたり、


 無駄にワックスをつけて狼みたいな髪型(当時はそれがカッコいいと思ってた)にしてみたりした。


 そんなことをし続けた四年間、なぜかクラスはずっと同じだった。


 ま、ずっと同じだったからこそ……なんつうか、その……気持ち?みたいなのは、バレバレだったかもしれない。


 ま、バレバレだったからといって、告白したわけでもないけどな。


 その四年の間は、三回くらい別のひとと付き合う機会もあったが(当時俺は勇者だった)……どれも、二週間と続かなかったのを覚えてる。


 要はそんだけ一途だったって話。


 ほんでもって中学を卒業しNの元を離れてから二年がたった高二の夏。


 長崎に住むMってやつと遊園地に行ったとき、Mのあまりにもあまりにもな格好(刺青入ってた)を見て、


 長年Nで培ってきたチェリーの夢は、あえなく砕け散ったわけだ。ちゃんちゃん。




 いや、片思いって素晴らしい。


 はやく男子校の牢獄を抜け出して、夢見ごごちだった四年間を忘れさせてくれるような、衝撃を受けたいもんだ。とほほ。


 とはいっても、俺さまの場合——




写真:妹プリンセス




 ——自宅で、その衝撃を受けうる毎日だけどなあ!!


 はっはっは、俺さまとしたことが妹たちに片思いしてたの忘れてたよ! やっちった~! てへ☆←


 短冊に書いておこう! 『今年中に妹と結婚できますように』と!


 ……裏には、『今年の同窓会でNさんに会えますように』と書いておこう←