あ"ー…喉が…喉がガラガラだー…




 …やあ"やあ"。みんなの喉は、元気? 平和? 青春?


 …俺のは、さっきまで元気に平和に青春してた。


 …けど今は、ひとりきりのカラオケでガラガラになっちゃったよ。もうガラオケだよ。




 店に入ったのは1時。店を出たのは8時。7時間をフリータイム980円で歌い尽くした。


 歌った曲数70曲! もちろん全曲原キーで! いやあ、爽快だった~!


 やっぱカラオケは原キーに限る。テンポや高さを変えてしまった時点で、それはもう別の歌になってしまうからなあ。


 まあたまにね、例えば女性ボーカルの音の高い曲歌うときとかね、奇っ怪な裏声をあげてしまうこともあるけど、原キーだから仕方ないよね。


 高い声だすのあきらめて、渡辺陽一みたくなってしまうこともあるけど、原キーだもんね。


 普通の男性ボーカルの曲を歌うときでも、普通に音程はずすけど、原キーだもんね。


 音痴ごまかしてるとかそういうわけじゃないよね←




 そんな音程に恵まれない俺が今日歌った曲一覧を発表だあ! それ、まずは70位から51位! カウントダウ——




 ——って、さすがに億劫なので、その70曲のなかから選抜してお気に入りの何曲かを発表しちゃうぞう。


 第一曲めは、こちらだ!




MAHO堂で、『おジャ魔女どれみカーニバル』ッ!!




 テレビアニメ、おジャ魔女どれみのOP。


 続いて、第二曲め!




カードキャプターさくらの、『catch you catch me』ッ!!




 テレビアニメ、カードキャプターさくらのOP。


 最後にこれだあ!




東京ミュウミュウの、『恋はアラモード♪』ッ!!




 東京ミュウミュウのOP。




 はっはっは、見たかこの片寄った選曲。ネタにしてはもってこいだろう?


 みんなで盛り上がるカラオケの場で、オリコンチャートのトップ3を飾るようなガチな曲を、ガチで歌おうとしてドン滑る空気の読めないやつは、俺を見習うといいぞう。


 え? 「ひとカラで来て歌ってる時点で、ネタじゃないだろガチだろ」って?


 ……。


 ばばば、ばかを言うな…! 俺とて好きでこんな曲、歌ってるわけじゃないぞ…!


 あくまで予行演習をしているんだ。つぎみんなで来るとき、爆笑をかっさらうための予行演習! そう、それだ!


 みんなも今度カラオケに行くときは、一番最初にこの三曲のうちのどれかを歌ってみてくれ! きっと辺りは、爆笑の渦ッ!……あるいはドン引きだ!


 なぁに気にするな。『ドキドキワクワクは年中無休♪』っていうだろ? 引かれてなんぼの世の中さ、もっはっは←




 もっはっは…←


 
 



 今日はついにTSUTAYAに行ってきた……


 18歳になってはじめてのTSUTAYAだ……


 ピンクの暖簾を前にして……高鳴る鼓動……




 呼吸を整えその一歩を踏み出……さずに、回れ右。レジを見たら女の店員だった。しかも同い年くらい。しかもなんか可愛らしい。


 そこにAV(オーディオビジュアル)持ってくのも、それはそれで興奮するシチュエーションだけど、なんかやめといた。べつに恥ずかしかったとかそういうんじゃないからな。


 ……。


 ごめん、うそ、ちょっと恥ずかしかった。




 しかたなく、いつもの海外官能ラブストーリーのコーナーへ向かう。ピンクの暖簾をくぐらなくても、それなりに満足できるところはあるんだ。


『スパ淫ダーマン』『セッ●スメン』『密林ガール』


 金がかかってるんだか、かかってないんだかわからないようなタイトルが並ぶ。ピンクの暖簾の外側だけに、それなりのクオリティ。


 前者の2つは、以前借りたことがあったので(両方ともかなりひどかった)今回は『密林ガール』を借りる。


 レジへ持っていくと、「レンタルは一週間ですかっ?」「レンタル割り引き券つかいますっ?」、先の可愛らしい店員の可愛らしい応対が待っていた。


 俺は割り引き券の束から一枚を切り取って渡し、「一週間でお願いしますどや。一枚つかいますどや」、店をでた。どや。




 そして、ついさっき『密林ガール』を見終わった。


 パッケージの表示の金髪美人がでてこないわ……主役の密林ガール、シガニーウィバーっぽいわ……案の定、散々な内容だった。


 一番に、エロが足りない。性に目覚めた中学生、ラックスのCMで頬を赤らめる女性の方、おすすめですよ。


 でもま、これであの可愛らしい店員の可愛らしい笑顔を守れたなら、本望だ。どや。また会える一週間後が楽しみだなあ。どや。


 見終わった駄作を鞄に詰め込みながら、そんなことを考える。すると、ふとレンタル割り引き券の束に目がいった。




 キリトリ線のあいだに……陰毛がはさまっている。




 ……。


 ききき、きっと、可愛らしい店員の可愛らしいイタズラだな。そうだよそうに違いねえよなっ。


 けして俺のとかじゃねえよなっ……たぶん。




 野郎のウェービーな毛のはさまった紙片を渡されてもなお、笑顔の対応をしたあの店員。


 つぎもあの店員がレジなら、AV(アニマルビデオ)も借りられる気がした←






 いややっぱ、むりか←




 そいつが現れたのは1時頃。


 俺が友人F宅で、Fと一緒にGカップグラビアアイドルのDVDを見ながらベッドに横たわっていたとき——




友人F「ぐへへ、このGカップグラビアアイドルやべーなぐへへ」


俺「……って、おい! ちょっと待て!」


友人F「あん? いまいいとこだぞ止めんなよ」


俺「いいから待て! とりあえずDVD止めろって!」


友人F「うっせえばーろー! 18歳最初で最後の卒業式邪魔をするなっ」


俺「ほっほーう。いいんだな止めなくて。一生後悔することになるぞ」


友人F一生だあ…? わかったよしゃあねえな……はい、止めた」


俺「ちがうちがうもうちょい前」


俺「あ~、そこ。そのへんで止めて」


友人F「こ…これは…」


俺「な? 止めてよかったろ」


友人F「ポ…ポロリだぁぁぁ!!」




 ポロリを発見した。




友人F「いやっほう! ありがとう、おまえのおかげだ」


俺「はん。まあそう気にするな! そんなことよりDVDの続きを——」


俺「……」


友人F「ん? どうかしたか? はっは、まさかまたもやこのGカップのポロリを発掘したんじゃ——」


友人F「……」




 テレビの前のGカップに見とれていたら、床下のGに気付いた。




G「……」


俺「……」


友人F「……」


俺「Gと、じぃーと見つめ合う」


友人F「……」


俺「……」


友人F「って、言ってる場合か叩きつぶせえええ!!」




俺たち『うををををを!!!!』




G「ササッ」




 そこらへんにあった参考書を丸めて襲いかかる俺たちを尻目に、Gはそそくさと机の下に隠れる。




友人F「この俺から逃げられるとおもうなよ! くらえ必殺、Gフィンガー!」


俺「よせばか。素手でつかめるか。俺にまかせろ」




 俺はGがそこから逃げられないよう、机の周りを物で固めると、




俺「それっ」


友人F「ああ! 俺のガムが!」




 ガムを投下した。おびき寄せ作戦だ。


 そして、待つこと10分……やつは、ふたたび現れた。




G「ササッ」


G「ササッササッ」




 なにも知らずおとりに近付いてくG。




友人F「おとりっつうかそれ俺のガム!」




 そしておとりに食らいつく。




友人F「ああー! おれのガァァムゥゥ!!」


俺「いまだっ」


 ベシッ!




 気合い一寸。Gはひっくり返って足をばたつかせた。




友人F「って、いま俺の参考書で叩かなかった…?」




俺「そこー!」




 さらにそいつの上にガラスのコップを被せると、すすすっーと、床とそいつの間に紙を滑り込ませる。


 紙が敷いてあって、そのうえにGが居て、そのうえにコップが被さっている状態。




友人F「あああ! 俺のコップううう俺のルーズリーフううう!」


俺「殺しちゃかわいそうだからなっ」




 瀕死から復活し、なかで動き回るG。俺は逃げられないよう、紙をコップの口状に折ると——




俺「飛んでっけええええ!!!!」




 ——窓の外へ放り投げた。




『パリーン!』




 アスファルトとガラスコップの、祇園精舎の鐘の声。




俺「達者でな~もう来るんじゃないぞう~」




 去りゆくGに手を振ると、友人Fを振り返る。




俺「さあ、続きを見ようか」


友人F「おまえもう帰れ」




 夏の夜空はすがすがしい色をしていた←