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lowverのブログです。あまり更新されないかもしれません・・・(^^;;

前回の記事で、「打点」は状況依存性が高くチームの得点への寄与能力を評価するのには適切でない、と書きました。
わかっている方には当たり前だと思いますが、打点こそチームの得点への寄与であると信奉している方からすると疑問に思うかもしれません。

そこで、1試合当たり平均2打点を挙げていた強打者を解雇し、1試合当たり平均0打点の打者に入れ替えたらチームの総得点数が上がった、という一見不思議な事例でこのことを説明してみたいと思います。

極端な方が例が分かりやすいと思いますので、現実離れした強打者Aさんに登場してもらいます。Aさんは打率4割で、しかもその全てがホームランというとんでもない強打者です。ただ、残りの6割は全て三振してしまいます。(簡単のため、フォアボール等はないものとします)
チームXはこのAさんと全く同じ能力を持った9人の選手で構成されています。まさに夢の打線です。
このとき、各打者は4割の確率で1点(ホームラン)、6割の確率で1アウトとなりますから、3アウトでイニングが終わるまでの得点の期待値は2点となります。つまり1試合9イニング当たりの得点の期待値は18点です。
打者1人当たりの打点の期待値は平均2点となります。実際には先頭打者の方が打席が多く回ることが期待されますから、先頭打者の打点は2点を少し上回り、下位打線の打者の打点は2点を少し下回ることになります。

さて、ある日チームXの監督は1番打者のAさんを解雇し、またまた現実離れしたBさんを獲得して1番に据えました。このBさん、打率が何と10割なのですが、その全てが内野安打(シングルヒットとします)という選手です。
つまり、以下のような打線に変わります。

1番:打率4割(すべてホームラン)→打率10割(すべて単打)
2番:打率4割(すべてホームラン)→そのまま
3番:打率4割(すべてホームラン)→そのまま
(途中省略)
9番:打率4割(すべてホームラン)→そのまま

チームXは強くなったでしょうか?
元々、チームXはホームランを打つ選手しかいませんでしたから、Bさんは必ずランナーがいない場面で打席が回ってきて、必ず内野安打で1塁に出塁します。その時点では点は入りません。つまりBさんには打点がつくことがありません。その他の選手は相変わらず淡々と4割の確率でホームラン、6割の確率で三振を繰り返していきます。しかし、Bさんが出塁している場面でホームランを打てば、今までは1点だったのに2点取れるようになりました。その結果、1試合当たりのチーム平均得点は18点から増えることになるのです。

実際にシミュレーションしてみると、平均得点は21.83点になります。
不思議ですよね。1試合の平均打点2点以上だったAさんを解雇して、平均打点0点のBさんを獲得しただけなのに、チームの平均得点が4点近く上がるなんて。

種明かしをしましょう。
Bさん獲得前後で、各打者の打点がどう変わったかを見てみます。

打順Bさん加入前の打点加入後の打点
12.18(Aさん)0.00(Bさん)
22.134.85
32.093.41
42.042.70
52.002.27
61.962.23
71.912.18
81.872.13
91.822.08
合計18.0021.83


先ほど考察したように、Bさんが出塁した場面でホームランを打つ可能性のある2~4番打者の打点が大きく上がっていることが分かります。
さらによく見てみると、Bさんが塁にいる可能性のない5~9番打者についても少しずつではありますが打点が上がっています。5~9番打者はランナーなしの状態で4割はホームラン、残りは三振しているだけのはずだったのに、何故上がったのでしょうか?
答えは打席数です。元々1番がAさんだった場合は、6割の確率でアウトカウントを1つ増やしていましたが、Bさんになってアウトカウントが増えなくなりました。このため、5~9番打者についても(もちろん上位打線についても)回ってくる打席数の期待値が増えたのです。したがって、1打席当たりの打点の期待値は変わらなくても、1試合当たりの打点の期待値としては増えていたのです。

つまり、Bさんは自身の打点は0ではありますが、塁に出ることによって後続打者の打点を増やしたり、アウトにならないことによってチーム全体の打点を増やすという寄与をしていたということになります
打点がチームへの得点の寄与能力を評価するのに適切ではない理由がお分かりになりましたでしょうか?

また、Bさん加入前後で同じ確率でホームランを打っていただけのはずの2~9番打者も打点が向上しました(特に2~3番)。
打点が状況依存性が高いと言ったのはこのことです。

この結論は、打点がその人の打席において点をたたき出したという実績として尊重すること自体を否定するものではありません。
ただ、打点が低いからと言って、その打者がチームの得点に寄与する能力がないというのは短絡的な発想だと言わざるを得ません。
MLBネタ、イチローネタを続けてみます。

野手の日本人メジャーリーガーも増えてきましたが、やはりある程度実績を残せたと言えそうなのはイチローと松井秀の2人という印象があります。
特にイチローについてはMLBでもタイトルを取るなど大活躍をしています。その一方で、ネット上では「アンチイチロー」と呼ばれる方々を中心にイチローに対して批判的な記事も存在しています。酷い記事になると、イチローがメジャーの最底辺であるかのように書かれているものもあります。今回は、全体を見渡せばやはりイチローは優れた選手であることをデータを用いて客観的に見ていくことにします。

まず、メジャーの中での彼らの位置づけを知るためには、他のメジャーリーガーがそもそもどんな成績を残しているかを知る必要があります。
そこで、1991年から2010年までの20年間のデータをBaseball referenceから収集してみました。
レギュラー・準レギュラークラスの選手と比較するため、上記期間内で2000打席以上を記録している選手のデータに絞りました。
該当する選手はちょうど600人いました。そのうち、日本人はイチロー松井秀井口松井稼の4人いました。

今回は、各種指標について600人の平均と標準偏差を算出し、日本人メジャーリーガーたちの「偏差値」を出して見ることによって評価をしてみたいと思います。
評価はA~Eの5段階で、概ね20%ずつになるように偏差値を区切りました(正規分布を仮定し、0.5単位レベルで区切っています)。
またAについては、優秀な度合いをさらに細かく判断できるよう、上位1%をA+++、5%をA++、10%をA+としました。Eについても同様にE---、E--、E-を設定しました。

偏差値評価目安の割合
73.5~A+++0~1%
66.5~73.5A++1~5%
63.0~66.5A+5~10%
57.5~63.0A10~20%
52.5~57.5B20~40%
47.5~52.5C40~60%
42.5~47.5D60~80%
37.0~42.5E80~90%
33.5~37.0E-90~95%
26.5~33.5E--95~99%
~26.5E---99~100%

感覚的には、A+++やA++は「トップレベル」、A+は「オールスターレベル」、Aは「優秀」、Bは「上位」といったところでしょうか。

次に、「アンチ」の人々がイチローに対してよく主張していることを整理しておきたいと思います。

主張1:打率の割に出塁率が低い(四球を選ばない)。先頭打者なのだから出塁こそ重視すべき。
主張2:短打が多く、長打が少ない。
主張3:打者を評価する総合指標であるOPSが低い。
主張4:野球は得点を競うスポーツなので打点こそ重視すべき指標なのに、その打点が少ない。
主張5:結果的にチームの勝ちに貢献していない。
※あくまでも、このように言っている人がいるという意味で、アンチの全員がこのように主張しているわけではありません。

これらの主張を踏まえながら、イチロー・松井秀をはじめとする日本人メジャーリーガーの成績を見ていきたいと思います。

上記の主張を判断するために、基本的な指標以外に用意すべき指標を検討します。
主張1については、基本指標で評価可能でしょう。ただ、エラー紛いの内野安打がイチローに有利なように「安打」と判断されることによって出塁率が良い値になっている(アンチの方が好む表現で言うと「粉飾」されている)という主張も目にするので、全員条件がそろうようにエラーも含めた出塁数TOB(we)を評価してみます。
主張2については長打率-打率のIsoPで評価します。
主張3についてはそのままOPSを使います。
主張4については、セイバーメトリクスの観点から、「打点」は状況依存性が高くチームの得点への寄与能力を評価するのには適切でないと評価されています。そこで、チームの得点への寄与の評価として、平均的な選手と比較して得点にどれだけ寄与する打撃ができているかを評価するBtRuns、得点期待値をどれだけ上昇させることができたかというRE24を使います。
主張5については、平均的な選手と比較してチームの勝利に何勝分寄与したかを評価するWAR、同じく平均的な選手と比較してチームの勝利にどれだけ寄与する打撃ができているかを評価するBtWins、勝利確率をどれだけ上昇させることができたかというWPAを使います。

まず、率系の基本指標を見てみましょう。

lowverのブログ-表1

<イチロー>
やはり打率の突出が目立ちます。アンチの主張1は、打率がA+++なのに出塁率がAだというのを「低い」と言っているのだと思われますが、実際には出塁率は「高い」ので、単に出塁率が低いと誤解させるための「詭弁」のようなものであることがわかります。客観的に評価すれば、出塁率は「優秀」で、打率はその上を行く「トップレベル中のトップレベル」となります。
主張2については、長打率は並、IsoPはかなり劣っていることから、短打が多く長打が少ないのはアンチの主張通りとなります。
主張3については、OPSは低くはなく、「上位」であることがわかります。
まとめると、打率が突出していて、出塁率も優秀、OPSもそこそこだが、長打は少ない選手、ということになります。

<松井秀>
イチローとは違い、突出したところはありませんが、全体的に優秀な結果が出ています。
まとめると、打率、出塁率、長打率、OPSとも優秀で、長打もそこそこ打つ選手、ということになります。

<井口・松井稼>
残念ながら全ての指標で平均を下回っていました。
改めて、日本人メジャーリーガーでイチロー・松井秀が実績を残せていることを感じます。

続いて、累積系の指標を見ます。▲印は低い方が優れていると判断し、値が低い方が偏差値が高くなるように係数をマイナスにして算出しました。

lowverのブログ-表2

<イチロー>
まず、3塁打、敬遠、盗塁が極めて高い値になっています。また、安打数、WARもトップクラスです。そのほかにもA以上の指標が多く、コメントに困るほどです。
逆に盗塁死はかなり多いことがわかります。盗塁企図が多いことの表れともいえますが、より妥当に評価するためには盗塁成功率(失敗率)もあった方が良かったかもしれません。
また、アンチが主張する長打や打点、四球についても、本塁打こそ少ないですが、それ以外は並以上であることがわかります。

ただし、ここで評価しているのは絶対数なので、年数や出場試合数が多いほど有利に働きます。また、1991~2010年の20年間の成績で切ってしまったことにより、対象とした600人の中には1990年以前にも活躍していた選手や2011年以降も活躍が期待される伸び盛りの選手も含まれています。こうしたことを考慮すると、上記の評価はメジャーで積み重ねてきた実績を参考程度に評価するに留めておいた方が良さそうです。

<松井秀>
出場試合が平均レベルであるせいか、A以上の評価は盗塁死のみでした。イチローとは逆に盗塁は少なめなので、盗塁企図が少ないことが表れているようです。

<井口・松井稼>
出場試合が少なめであるため、全体に低調です。そのせいか、少ないほうが良い「三振」「併殺打」などで優秀な評価となっています。


さて、イチローの項でも書きましたが、上記の評価は積み重ねた実績としての意味はあるかもしれませんが、選手の能力評価としてみた場合、出場試合の多さの影響が大きく、必ずしも妥当なものにはなっていません。
そこで、各値を試合数や打席数で割り、1試合、1打席あたりの期待値で見てみることを考えます。
試合を分母に選ぶと、トップバッターで1試合あたりの打席数が多くなるイチローに有利に働き、アンチの方々が黙っていないでしょうから、打席を分母に選ぶことにします
分母は打数でも良いかもしれませんが、敢えて打席数を選びました。打数と打席数で主に四球数の差が出てきますが、1打席1打席を四球を狙いにいくか安打を狙いにいくかは打者の意思になりますから、意思選択の機会数である打席数の方が妥当と判断したためです。
ただ、選択の機会が実質的に失われている「敬遠数」が多い選手には不利に働きます。が、敬遠数の多いイチローに不利に働く分にはアンチの方々も文句は言わないでしょうから、まずは打席数を分母に計算してみます。

値が全体的に小さくなって見づらいので、100打席あたりの値にして表にしてみました。
例えば、平均的な選手は100打席あたり12.548点の得点を記録するのに対して、イチローは100打席あたり14.27点の得点を記録する、というように解釈してください。
これで、試合数や打席数に左右されずに評価できるようになりました。

$lowverのブログ-表3

<イチロー>
色の濃淡がはっきり分かれる結果となりました。このあたりが、イチローを高く評価する人がいる一方で、アンチのように低く評価する人が出てくる所以なのでしょう。
まず、優れているところから。安打・敬遠・併殺打(少なさ)は突出しています。特に安打に至っては偏差値85.76ですから、上位0.02%くらいの突出ぶりです。
勝利への寄与を図るWARもトップレベルです。BtWins、WPAも優秀な値を示していますから、アンチの主張5のチームの勝ちに貢献していないというのは誤りであることがわかります。
また、3塁打や三振(少なさ)もかなり優秀であることがわかります。

逆に、アンチが少ないと主張する四球も、主張どおり少ないことがわかります。しかし、エラーを含めた出塁数TOB(we)は優秀な成績となっていますから、トップバッターとして出塁が重要だから四球を選ばないイチローはダメとか、イチローの場合はエラー紛いの当たりも安打として扱われているから不公平といったアンチの主張は、難癖に過ぎないことがわかります。

長打に目を移すと、3塁打以外の2塁打や本塁打はかなり少なく、アンチの主張にもあるように打点もかなり少ないことがわかります。しかし、チームの得点への寄与という意味でBtRunsやRE24で見ると、きちんと優秀な値を示しています。
つまり、アンチが打点という点に直結する部分のみに着目し、イチローは得点を挙げる能力がない、と言っている主張4は得点のプロセス全体が見渡せていないことによる短絡的な結論であることがわかります。

また、犠飛も非常に少ないことがわかります。ゴロを中心としたバッティングをしている1つの表れかもしれません。

まとめると、イチローは長打力は貧弱な一方で、安打や併殺打(の少なさ)では突出しており、全体としてチームの得点や勝利の観点から見れば優秀な(WARで見ると極めて優秀な)選手である、と言えます。

<松井秀>
打点が非常に優秀な値を示しています。出塁TOB(we)も優秀です。その一方で、3塁打や盗塁といった脚に関連する評価が悪くなっています。それ以外の評価は概ねBが多く、堅実な成績を残していることが伺えます。
それよりも松井秀の特長としては、BtRunsやRE24、BtWinsやWPAでイチロー以上に優秀な成績をたたき出しているところだと思います(アンチイチロー風に言えば、打点(A+)の割にチームの得点に貢献できていない(A)となるのでしょうが、アンチイチローはきっとそんなことは言わないでしょう)。WARこそイチローに及ばずBランクに留まっていますが、WARは守備も評価されていることが関係するのかもしれません。

まとめると、松井秀は脚は難点があるが、打点や出塁で優秀な成績を残しており、それ以外も堅実に上位の成績で、全体としてチームの得点や勝利の観点から見れば優秀な(WARで見ても上位レベルの)選手である、と言えます。

松井秀はメジャーに行ってからやや印象が薄くなった感もありますが、日本時代のように「松井といえばホームラン」的な突出した部分がなくなってしまったことが関係しているのかもしれません。ただし、全体的に見れば立派な成績を残していると言えます。世間的な評価の印象からすると、もう少し評価されていても良いように思います。

逆にイチローは、安打という突出した武器により、世間的な印象も強く高評価を受けているのでしょう。

<井口>
全体的に寂しい結果ですが、犠打で優秀な貢献をしていたことがわかります。

<松井稼>
同じく全体的に寂しいですが、脚を生かした3塁打、併殺打(少なさ)、盗塁で優秀な成績を残していることがわかります。併殺打の少なさはイチローを上回る突出具合です。
また、犠打も極めて多いことがわかります。


結論
日本人打者で実績を残している選手は、やはりイチローと松井秀と言えます。
また、アンチイチローがよく主張している主張1~5の内、正しいと思えるのは長打が少ない(主張2)くらいで、それ以外は間違っていることもわかりました。おそらく、これらの主張をするにあたって
・打点や長打といった部分のみに着目し、全体を見ていない
・イチローに着目するあまり、メジャーリーガー全体が見えていない
などの理由によるものと考えられます。
先日コメントでも書きましたが、「㈲6人目のダイナマン」氏のブログへの当方の書き込みが削除されていました。
氏のブログ内容の誤りを指摘しただけのもので、荒らしでもないですし、氏自身の人格を否定するような内容は一切ないにもかかわらずです。
氏は論理的であることを自負していらっしゃるようなので、論理的に反論すれば良いだけの話です。

さて、氏は昨日のブログ(下記リンク)で、当方のこととしか考えられない「あるイチローファンブロガー」に反論を試みていました。
http://ameblo.jp/miumalovely/entry-11019378326.html

しかし、全く反論として成立するものではありませんでした。
基本的な論理が分かっていればすぐに気付くことです。

元々の私の主張は、残り18試合の時点で、イチローが3割200安打を達成することは不可能とまでは言えない、というものでした。その論拠として、2004年のイチローの記録を提示しました。

それに対し、氏の「反論」は以下のようなものでした。

30歳のときの数字を、2011年(38歳)の今年に当てはめることなど無味乾燥も甚だしい。

この「反論」が成立するためには、37歳(氏はイチローが38歳と言っていますが、2004年を30歳とすると2011年は37歳)のときの数字は、30歳のときの数字より「必ず」低くなる、という前提が必要です。
当方は「不可能とは言えない」という主張ですから、「37歳のときの数字の方が30歳のときの数字より低くなる人が多い」ではダメで、「必ず」低くなるということが言えなければなりません。

実際、打率で見てみると、トニー・グウィン(30歳:.309、37歳:.372)やベーブ・ルース(30歳:.290、37歳:.341)、トリス・スピーカー(30歳:.318、37歳:.389)など、37歳の方が良い記録を残している選手がいることがわかります。
トリス・スピーカーに至っては37歳のときにキャリア・ハイの打率を記録しています。

このような事例があるので、「37歳のときの数字は、30歳のときの数字より必ず低くなる」は成立しません。つまり、「㈲6人目のダイナマン」氏のブログの「反論」は成立しない、ということが論理的に導かれたことになります。