行動修正~新しい行動を教える(11)~
おはようございます。
Lovin' Dogsのランパです。
「エッ!」
これで
いいの?
今日は、 自動反応形成について、お話したいと思います。
これは古典的条件付けにより起こる現象の1つです。
古典的条件付けというと、
パブロフの犬がベルの音で唾液を出したり、
音やにおいなどが、恐怖や不安などの情動反応を引き起こしたりと、
反射(レスポンデント)反応のイメージが強いですが、
自動反応形成では、
ラットがレバーを押したり、鳩がキー(明かり付き)をつつくなど(スキナー箱 )の
自発的(オペラント)反応を生ずるのが大きな特徴です。
大雑把に説明すると、下記のようになります。
・条件中性刺激 :レバーを見せる or キーの明かりを付ける
・無条件刺激 :食べ物を与える
古典的条件付け なので、ラットや鳩が何もしなくても(何をしていても)、
条件中性刺激を呈示した後に無条件刺激を与えます(対呈示)。
対呈示を繰り返すと、やがて中性刺激が条件刺激となり、
レバーを押したり・噛んだり、キーをつつく行動を取るようになります。
これらの行動は、餌を得るために求められた行動ではなく、
1つの条件反応です。
(クリッカーによるトレーニングをしている犬が、クリッカーを食べようと
するのも、自動反応形成によるものです。)
(灰色抹消線部:削除,緑字部:訂正・追加 いずれも'11/04/26)
(補足)
動物には、生体にとって必要な資源ばかりでなく、そのような資源の兆候や
信号、手掛かりに対しても、接近し対処しようとする傾向があります。
自動反応形成は、動物のこのような性質を利用し、操作体に兆候や信号と
しての意味を付与することにより、操作体そのものへの反応を形成することと
言えます。
自動反応形成は、予測性のある刺激が環境にある場合に、
動物がどう対処するかという、適応行動の1つでもあります。
こう考えると、条件反応とは、唾液を出すという単純な反応だけでなく、
刺激に対する「定位-接近-接触」という反応系列と拡大して
解釈することが出来ます。
(接触の種類は、動物それぞれの行動レパートリーの中の、
上記の例の場合には、食べ物に関連する行動が選択されます。)
次に、自動反応形成をドッグ・トレーニングに応用する場合を
考えてみたいと思います。
フリスビーや持ってこい(持来)では、フリスビーやダンベルなどを
咥えるという行動が必要になりますが、初めから興味を示す個体
ばかりではありません。
こういった場合、フリスビーやダンベルを動かして興味を引いたりも
しますが、次のような方法も聞いたことがあるのではないでしょうか?
フリスビーを器代わりにして食事をさせたり、
ダンベルにチーズなどを塗ったりして、興味を持たせます。
実はこれらも自動反応形成の類似例と見なすことが出来ます。
(古典的条件付けでいえば、効率良く学習するには遅延条件付けで
ある必要がありますが、上記の例は同時条件付けで効率が落ちます。)
やり方としては、犬はサークルなどに入れます。
①フリスビーやダンベルをサークルに降ろし、その後おやつを与えます。
②何度か繰り返すと、犬はダンベルなどが動くのを期待して
見るようになります。
③更に繰り返し、鼻で突いたり、舐めたりといったオペラント行動を
引き出します。
ここまでは、ダンベルなどに反応してもしなくてもおやつは与えます。
さて、自動反応形成では、何らかのオペラント行動を引き出すまでが
限界で、その後どんなオペラント行動を取るかは犬任せになります。
トレーニングではそうもいかないので、
犬が確実にダンベルなどに反応するようになった時点で、
積極的なシェーピング(オペラント条件付け)に切り替えます。
すなわち、おやつを得るためには犬は何かをしなければなりません。
ex) 鼻で突く ⇒ 舐める ⇒ 口を開ける
⇒ 口の間に入れる ⇒ 咥える
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タグ:学習理論(51)
参考文献:パメラ・J・リード「エクセレレーティッド・ラーニング」
2007年9月発行(原著1996年)
補足部
山田恒夫「適応行動としての自動的反応形成
-パブロフ条件付けの反応遂行理論-」
大阪大学人間科学部紀要 13, 243-267, 1987