『アトリエの春』シナリオ No.10 (最終回) | パク・ヨンウ☆だぁ~い好き(*^^*)  

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89.ジュングの家、居間 (夜)


お茶を下げて、編み物をしているジョンスクに近づくキョンサンデク。


キョンサンデク 先生、ちょっと遅すぎるんとちがいますか...


壁の時計に目をやるジョンスク。11時を回っている。


ジョンスク 大丈夫よ。お元気だったころは徹夜だって.. (微笑んで) 今日は、作業がはかどっているんでしょう...



90.ジュングの家、石橋の道 (夜)


(インサート)夜中の2時すぎを指している壁時計。


家からずいぶん離れたところにある石橋。ジョンスクが心配そうにそわそわしている。

しばらくして、ジョンスクの視界に現れるジュングの姿。汗ぐっしょりで疲れ果てている。


春シナリオ_90b

そんなジュングを見て、悲しそうな表情のジョンスク。しかし、無理に笑顔を作ってジュングに走り寄る。

春シナリオ_90a

ジョンスク あなた、時計も見ずにやってたのね。

ジュング そうか... (つかみどころのない表情で) 心配ならアトリエまで来ればよかったのに...

ジョンスク 私がいつアトリエに行ったとでも?

ジュング そうだっけ?


黙って歩いていたジュング、


ジュング そうだったな...


黙ったまま並んで田圃道を歩く二人の姿。

ジョンスクは月明かりに照らされた風景を見渡し、気持ち良さげに深呼吸をして、


ジョンスク あなた、覚えてる?

ジュング (見て)?

ジョンスク 私たちが新婚だった頃... 路(ウォニョロ)だったと思うわ、たしか。あの頃は電話もなかったから、あなたが徹夜で作業をすると... 私、夜明け前から通りに出て、ずうっとあなたを待っていたのよ...


うつむいたまま複雑な表情で言葉もなく歩き続けるジュングの姿。


ジョンスク 新婚だったのに、どうしてそんなに作品ばっかりって... 憎らしくも思った... 今考えると、あの頃が一番幸せだったのね...



91.ジュングの家、離れの居間 (夜)


ジュングの寝床を黙って整えているジョンスク。布団を掛けて立ち上がろうとすると、いきなりジョンスクの手首をつかむジュング。ジョンスクが座り直す。

ジュング、目を閉じてジョンスクの手を取ったまま口を開く。


春シナリオ_91a

ジュング 君には、すまないと思っている。


手を取られたままじっとジュングをみつめるジョンスク。


ジュング いつも、感謝している...


目頭が熱くなるジョンスク。涙がこぼれる。


ジュング 君に出会えたことは... 僕にとって祝福だった...


ジョンスク、気持ちを落ち着かせようとしばらく言葉がなかったが、沈黙を破って


ジョンスク あなた、私は...


首を傾げてジュングの顔を覗き込むジョンスク。ジュングはすでに眠っている。

ジュングをみつめていたジョンスク、ひとり言を低い声で


ジョンスク 今だって十分、幸せよ...


ジョンスク、ジュングを起こさないように、込み上げる嗚咽を抑え込む。


ジョンスク そして... 愛しているわ...


口を押えて静かに部屋を出て行くジョンスクの姿。

少し後、静かに目を開けるジュングの姿。


(ジャンプ)


灯りの消えた真っ暗な部屋に、じっと座っているジュングの姿。



92.川辺の道 / アトリエの前 (朝)


青々とした夜明けの空気が広がる農道をトボトボと歩くジュングの姿。


鳥のさえずりが聞こえ、靄が低く立ち込めた水辺のアトリエに入っていくジュング。



93.アトリエ (朝)


胸像と思わしき大きさの石膏の塊をなでながらぐるっと一周するジュング。

石膏から離れ、ジャケットを脱いで椅子に掛ける。

鑿と槌を手にして石膏に向かうジュング。

大きな塊が崩れて床に落ちる音と槌音が交互に響く。

小さな槌で、ふっふと息を吹きかけながら作業を進めるジュング。

壊れた石膏を手で払いながら慎重に進めていく。



94.ジュングの家の庭 (昼)


黙々と洗濯物を干しているキョンサンデクとヒャンスク。

しばらくして、着替えを済ませたミンギョンが出て来る。


キョンサンデク どうしたん? 先生が今日から出て来い言わはったか?

ミンギョン ... わからへんけど、行ってみようか思います。


その時、声が聞こえてくる。


春シナリオ_94a

巡査(O.S) こんにちは。


広げた洗濯物の間から、門の方へ出て行くキョンサンデク。

ヒャンスクがミンギョンを心配そうに見ながら、


ヒャンスク ソンイとキジュの心配はせんでええですよ。


ミンギョン、感謝の気持ちでニコリと笑う。


巡査 イ・ミンギョンさんがこちらにいらっしゃると..


振り返って巡査に顔を見せるミンギョン。



95.橋の下 (昼)


遠くに見える橋の下に、何があるのか大勢の人が集まっている。

巡査の後をついていく、緊張した顔のミンギョン。


巡査(V.O) (急がせて) 行きましょう。


見物人が道を開けてくれると、筵を掛けられた何かが見える。


巡査 見せて。


現場にいた別の巡査が筵をめくる。顔をそむける見物人たち。


巡査 ご主人に間違いありませんか?


茫然として、首だけ縦に振るミンギョン。


ミンギョン いったい... 何があったんですか?



96.ジュングの家の居間 (昼)


門をくぐって呼吸を整えるホン医師。片手に黄色いカルテを持ち、厳しい顔で庭を横切る。


(ジャンプ)


ジョンスクと目を合わさないまま、淡々とした表情で口を開くホン医師。


ホン医師 この前ソウルに行ったとき、キム先生に会ってきたんだって?


ホン医師をじっと見ていたジョンスク。長いため息と同時に首をうなだれる。


ジョンスク 申し訳ありません...


そんなジョンスクを見て、大きくため息をつき


ホン医師 謝ることなんかない。あいつはわしの大学の後輩だ。この分野ではあいつが最高だって誰もが知っていることだ... しかし... 主治医が変わったからって、良くなる病気でもないだろう...

ジョンスク (うなだれたまま)...

ホン医師 ふうっ... そうせずにはいられなかったんだろうが...


往診鞄から書類を取り出しテーブルの上に置くホン医師。


ホン医師 検査結果が出たんだが...


怪訝そうに書類を取り上げるジョンスク。

その後、衝撃を受けた表情でホン医師を見る。


ホン医師 わしも何十回と見直したよ... だが、難しいようだ... 今回は。


ジョンスクに視線をやることもできず、淡々と話すホン医師。


ホン医師 少し良くなったように見えたのは一時的なものだったようだ... (苦しそうにため息をついて) 風が冷たくなる頃には、おそらく身体を動かすのも難しくなるだろう... 覚悟しておきなさい...


ジョンスク、涙をボロボロ流して頷く。

うつむいてため息をつくキョンサンデクと、涙を拭うヒャンスク。



97.橋の近く (昼)


見物人たちを背にして歩くミンギョン。複雑な表情で立ち止まる。

振り向いて橋の下に集まった人たちと、筵を掛けられた死体を見る。



98.川辺の道 (昼)


炸裂する真昼の太陽に立ち上る陽炎...

焼けつくような川辺の道を、茫然と歩くミンギョンの姿。


(インサート)


パンッー!という銃声に飛び立つ数十羽の白鷺。


顔を上げ、驚いて周りを見回すミンギョン。アトリエの方を見たかと思うと慌てて駆けだす。


春シナリオ_98a


99.アトリエの中 / 外 (昼)


あわてふためいてアトリエの中に入ってくるミンギョン。きれいに片づけられた誰もいないアトリエ。


ミンギョン 先生...


何の返事も聞こえないのでデッキに飛び出すミンギョン。

血に染まったジュングの手に握られたまま床に落ちている拳銃。

すでにジュングの頭は片方に傾いている。


ミンギョン 先生... 目、開けて下さい。


ミンギョン、微動だにしないジュングの身体をつかんで揺さぶる。


ミンギョン (涙があふれる) 目、開けてください、先生!


目を閉じたまま、返事をしないジュング。

ジュングの頭を正面に向けて見るミンギョン、涙のように流れ出る呻き声


ミンギョン 作業せんとあかんでしょう...


ジュングの身体をぐっと抱きしめるミンギョン。


ミンギョン (大きな声で) 作業せんとあかんでしょう!!! 先生...


ミンギョンはジュングを抱きしめ嗚咽し始める。



100.ジュングの家、書斎 (夜)


真っ暗な書斎に茫然自失のジョンスク。

キョンサンデクが喪服を持ってやってくる。

沈黙したままのジョンスクの様子を伺っていたキョンサンデクは、ジョンスクの前に喪服を静かに置いて出て行こうとするが...


ジョンスク 行かないで...

キョンサンデク ...


痛々しげにジョンスクを見て、隣に座るキョンサンデク。


キョンサンデクの胸に飛び込むジョンスク。キョンサンデクが驚いて固まってしまう。

ジョンスクを優しく抱きしめてやるキョンサンデク。


キョンサンデク そろそろ、逝かせてあげはらんと...


その時、ジョンスクの涙があふれ始める。


ジョンスク そのあとは... 何をどうしたらいいの...


ジョンスクの背をなでるキョンサンデクの目にも涙が。


キョンサンデク 頑張って、生きていくんです... たぶんそれが... 先生のお望みになったことです...


キョンサンデクの胸に抱かれながらしゃくりあげるジョンスク。

本当の姉妹のように、きつく抱き合う二人の姿。



101.ジュングの家 (昼)


キリスト教式に簡素に執り行われる葬儀の様子。

広間に座り込んでジュングの遺影をみつめているジョンスク。

庭に敷かれた茣蓙の上に、一列に座って讃美歌を歌う教会の人々と、喪主のように立っている、沈鬱な表情の執事。

離れた別棟の裏庭から、やはり茫然自失の態で葬儀を見ているホン医師。

別棟の中にはソンイがキジュを抱き、足の向こう側にホン医師の背中を見ている。

黙祷を捧げていた中年の男たちが下がり、庭に張られた天幕の中に入って座る。

黙って食事を配るキョンサンデクとヒャンスク。

ミンギョンも一緒に盆を下げて食事を運んでいるが、めまいと混乱でやつれたように見える。

そこへ、オおじさんの案内で韓服に中折れ帽という出で立ちの地域の名士たちが線香をあげに入ってくる。

タバコの煙をゆっくりとふかすホン医師。

その前に、小さな膳に載せたユッケジャンを持って近づいてくるミンギョン。

ホン医師、膳を受け取って部屋に置き、隣に座れと場所を空けてやる。隣に座るミンギョン。ため息をついて首をうなだれる。

そんなミンギョンをみつめるホン医師。

薄暗くなった空。門にぶら下げられた弔い提灯に火を灯すオおじさん。

ジョンスクに近づくホン医師。石のように硬くなったジョンスクの肩を包んでやる。

ホン医師を見るジョンスク。ジョンスクを支えて立たせるホン医師。

門にぶら下げられた弔い提灯の火がすうっと消えて暗転。



102.ミンギョンの家 (昼)


きれいに整頓された印象を受ける家の中。旅行鞄がひとつ置かれている。

グンスの遺品をじっと見ていたミンギョン。箱のふたを閉めて、眠ったソンイとキジュを見やる。

ミンギョンの家に入ってくる郵便配達員。怪訝な表情で手紙を受け取るミンギョン。

急いで封を開けて手紙を取り出し、読み始めたミンギョンの顔に...


ジュング(V.O) これまで僕は、人の身体に美を求めてさまよってきた。しかし、君のおかげで本当に美しいものが何かわかった。まさに、生そのものだということ... 人の顔に刻まれた人生の痕跡がどれほど美しいものか... 僕は今ようやく、初めて自分自身を振り返ることができた。君は、僕に大切なことを教えてくれた...


赤くはれた目で手紙を読んでいるミンギョン。


ジュング(V.O) 君のご主人は、帰ってこないよ...


驚きに口を押えるミンギョンの顔に


(フラッシュバック)


グンスの死体を見下ろし茫然としているミンギョンの顔


ミンギョン いったい... 何が...

巡査(O.S) 最初は足を滑らせたのかと思われたのですが、銃で撃たれています。


手紙を握りしめるミンギョンの手がブルブル震えている。


春シナリオ_102a

ジュング(V.O) 情けないことに... 僕が君にしてあげられることは、これしかないようだ。心から、幸せを願っている。本当に、ありがとう...


涙をボロボロ流して、ジュングの手紙を抱きしめるミンギョン。



103.エピローグ (昼)


川沿いに伸びる田舎道をひとり歩くジョンスク。遠くにアトリエが見える貯水池の横の道をアトリエに向かっていく。


春シナリオ_103a  春シナリオ_103b


春シナリオ_103c

しずかに扉が開いて、アトリエに入ってくるジョンスク。アトリエの中を一周してジュングの作業道具に触れてみる。作業台の上に手紙をみつけ、デッキに出て手紙を広げる。


ジュング(V.O) 知っていたんだろう... 残された時間は多くないってこと... たとえ僕の身体が冬を迎えていようとも、幸いなことに僕の作業は初めて春の訪れを感じている。


ジョンスク、人の気配を感じてアトリエの中をきょろきょろ見回す。

鑿で石膏の型を崩す、ジュングの最期の後ろ姿。

鑿と槌を置いて、ふうふうと息を吹きかけ石膏の粉を吹き飛ばしているジュング。


ジュング(V.O) 僕は、この作品の題名を<春>と付けることにするよ... ある芸術家の言葉のとおり、芸術より生。それそのものが、ずっと価値あるものだということに... ようやく気づいたんだ。


春シナリオ_103d

完成した像に手を置いて満足げな表情のジュング。ジョンスクに顔を向ける。

涙があふれてくるままに、ゆっくりと立ち上がるジョンスク。

渾身の力を込めて造った胸像はジュング自身の顔だ。


ジュング(V.O) この顔には僕の人生が刻まれているし、僕の人生には君が投影されている。


自分の胸像に目をやった後、ふたたび首を回してジョンスクに向かいニッコリと笑うジュング。つられて笑顔になるジョンスク。


ジュング(V.O) 不出来な人間で... 最初に会ったときから、今この瞬間まで、君を愛していたことを、やっと告白するよ。君にこの作品を残す... 君のおかげで今この瞬間、僕は笑っていられる... 愛しているよ...



エンディングタイトル
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