『アトリエの春』シナリオ No.9 | パク・ヨンウ☆だぁ~い好き(*^^*)  

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パク・ヨンウ氏にぞっこんの
ハギのブログです。
出演作品を通して、
彼の魅力を徹底分析しましょ♪       

74.モンタージュ (夜)


ミンギョンの家、夜。

目を閉じたまま呻吟しながら横たわっているミンギョン。顔に血がこびりついている。


一杯飲み屋。

ひとりで酒を飲み、いきなりテーブルを引っ繰り返すグンスの姿。



75.ミンギョンの家 (夜)


ミンギョン、目を開けて静かに起き上がり、座る。

しばらくして、ふらふらしながら部屋を出て行く。



76.ジュングの家、書斎 (夜)


ロッキングチェアに、微動だにせず座っているジュングの姿。



77.電柱の立つ道 (夜)


足がもつれてつまづくミンギョン。勢いよく道端に倒れる。

歯を食いしばって身を起こし、再び歩き始める。

満身創痍のまま、哀れにも歩き続けるミンギョンの姿が、小さく、みすぼらしく見える。



78.ジュングの家、居間 (夜)


ジョンスクと通話中のキョンサンデク。


キョンサンデク 先生にお変わりありませんよ。はい、奥様...


その時、大慌てで飛び込んでくるヒャンスク。


ヒャンスク おばさん!


受話器を持ったまま、その様子に驚くキョンサンデク。


cut to #75


居間の外に人の気配がする。


キョンサンデク(O.S) 先生、起きていらっしゃいますか?


ジュングが身体を起こしてスタンドを点ける。


キョンサンデク(O.S) ミンギョンさんが、来はりました。



79.ジュングの家、浴室 (夜)


ミンギョンはドロドロに汚れた姿で浴室の隅にうずくまり、身体を震わせている。

ヒャンスクがポタポタと涙をこぼしながら浴槽に湯を張っている。

ミンギョンに近寄り、肩をトントン叩くキョンサンデク。


キョンサンデク 子どもらはよう寝てるえ。心配せんでええ。あぁあぁ、こんなになって...


その時、浴室に入ってくるジュング。

頭を下げて出て行くキョンサンデクとヒャンスク。

ジュングを見て込み上げてくる感情を押さえつけ、ぎこちなく立ち上がる。


ジュング そのまま...

ミンギョン 大丈夫でしたか? 先生...

ジュング 僕は大丈夫だよ...


ジュングがミンギョンの顔をあちこち確認する。


ジュング 君のことが、心配だよ...


ミンギョンはとてもジュングを見ることができず顔をそむける。ミンギョンを優しく抱きしめるジュング。ジュングの胸に抱かれ、あふれ出しそうな涙をこらえるミンギョン。とうとう声を出して泣き始める。


灯りの点いたジュングの家の全景からフェードアウト。



80.ジュングの家 (午前)


ジュングの家の門の前。溜息をつきながら団扇で涼を取っているキョンサンデク。


キョンサンデク ほんまに暑いなぁ、今日も。

ヒャンスク 夕立でも来たらええのに。


その時、ミンギョンが乱れた髪のまま、別棟から出てきて外へ出て行こうとするが


キョンサンデク(O.S) 起きたか?

ミンギョン (驚いて振り返り) すんません... 寝坊してしもて...

キョンサンデク 先生が、今日は休んだらええて言わはったえ...

ミンギョン 私に?

キョンサンデク いっぺん鏡見てみよし。そんな痛々しい顔見ながら、先生がどうやって作業しはるんや。え? ちっち


自分の顔に触れて見て首をうなだれるミンギョン。

この時、荷物を持って入って来たジョンスクを見て、驚くヒャンスク。

ヒャンスク あれ? 奥様... こんなに早うお帰りですか?


ヒャンスクがジョンスクに走り寄って荷物を受け取る。

ジョンスクを見るや、慌てて下を向くミンギョン。

そんなミンギョンを見るジョンスクの表情は暗い。



81.アトリエ (昼)


無茶苦茶になったアトリエ... ジュングが入ってくる。

床に投げ出された作品を、ひとしきりみつめるジュングの姿。

作品を抱き起そうとするが力不足だ。



82.ミンギョンの家 (昼)


部屋の外に立ってグンスを見ているオおじさん。

グンス、敷居に置かれた封筒を取り上げ、ニヤッと笑う。


グンス 俺には芸術なんか... ようわからんけど...

オおじさん わかったよ。とにかく作品が完成するまでミンギョンさんに構わんといたってくれ... 何日もかからへん。


封筒の中身を確かめるグンスに


オおじさん その金で酒を飲むなり賭けをするなり、好きにしたらええけど... その代わりミンギョンさんには絶対手ぇ出すなよ。わかったやろな? ミンギョンさんのために言うとるんやないで。先生の作品のためや、作品の! (脅すように) この、くそったれ!


オおじさんはグンスに話が通じないので苛立ち、ため息をついて背を向ける。グンスは関心もなさそうな顔で、


グンス へぇへぇ、そうしまっさ。



83.ジュングの家、別棟 (昼)


ミンギョンが眠っているソンイとキジュをじっとみつめて座っている。

ジョンスクが入ってくると立ち上がって挨拶し、下を向くミンギョン。

ジョンスクがミンギョンを座らせ、買ってきた服をミンギョンに当ててみる。


春シナリオ_83a

ジョンスク (無理に明るい表情を作って) かわいいわよ。


ミンギョンは、申し訳なくて首をうなだれる。

ジョンスクはミンギョンににじり寄り、ミンギョンの髪をなでる。あざの出来た顔を見て、


ジョンスク (ため息をつき) 可愛らしい顔が... どんなに痛かったでしょう?... ご主人の件は解決しておいたから、作品ができるまでの間だけでもここで楽に過ごして。


ミンギョンは相変わらず罪人のように、首を上げることができない。

その様子に、ジョンスクは優しくミンギョンを抱き寄せる。

ようやくホッとしたのか、ミンギョンが泣きだし、


ジョンスク (目頭が熱くなりつつ) 泣かないで、泣かないで、大丈夫よ。

ミンギョン おおきに、おおきに。


目に涙をためるジョンスク。しゃくりあげるミンギョンの背を叩き続けてやる。


春シナリオ_83b


84.ジュングの家、居間 (昼)


ジョンスクがオおじさんと向かい合って立っている。


オおじさん とりあえず... 話はしましたけど... (頭を掻いて) 人を脅すような真似は... まるで慣れてないもんで... 気分のええもんと違いますね。

ジョンスク ええ.. ご苦労様でした。


ジョンスクに頭を下げて去っていくオおじさんと、深刻な表情のジョンスク。



85.モンタージュ


夕闇に染まるアトリエ周辺の風景。デッキにジュングがひとり座っている。

真っ暗なアトリエの片隅に置き去られたような塑像。


薄暗い川辺の道をひとり、家に向かって歩くジュングの後ろ姿。



86.ジュングの家、書斎 (夜)


寂寞とした夜。中には深く考え込んでいるジュング。

静寂を破って、ジョンスクが書斎に入ってくる。


春シナリオ_86a

ジュングの額にできた傷を心配して触れようと手を伸ばすが、ジョンスクの手を拒んで席を立ち、戸を開けるジュング。

ジョンスク、黙ってジュングをみつめる。


ジュング (戸を開けたまま) ソウルのみなさんは、お元気だったかい?

ジョンスク (何も言わず、頷く)...


しばらく静寂が流れ...

部屋に入ってしまうジュングに、何もできないジョンスク。灯りの消された部屋の前にひとり残される。



87.アトリエの前 (昼)


未完成だった塑像の頭部だけを壇上に載せて見ているジュング。

床に叩きつけられたときに歪んだのか、まるで泣いているような塑像の顔。

禁煙したはずのタバコを取り出し吸い始める。


(フラッシュバック)


塑像の頭部を注意深く観察するミンギョン。


ミンギョン あれ? 目もつむってますね? (ひとりごちて) 寝てるのかなぁ...?


洗面台で手を洗っていたジュング、無意識に出てきた言葉


ジュング 目も開けていて、表情もあるのを想像してごらん... 誰が身体を見るんだい... (声が小さくなって) 顔を見るだろう... 顔を...


自分で言っておきながら、驚くジュングの顔。

動作を停止したジュングを、意外な目で見るミンギョンの表情。

それに続くミンギョンの様々な表情...


春シナリオ_87a
貝を獲っていたときの顔、

殴られてきてうなだれた顔、

海辺で楽しそうに笑う姿... 等...


未完成だった塑像の頭部だけを壇上に載せて見ているジュング。

床に叩きつけられたときに歪んだのか、まるで泣いているような塑像の顔。


歪んだ塑像の顔を見て、考えにふけるジュングの姿。

この時、中折れ帽を被り、団扇をパタパタさせながら入ってくるホン医師。アトリエの中をぐるっと見回す。


ホン医師 おお、ジョンスクに言われて来たぞ。(室内を見回して) まるで戦場だね。


(ジャンプ)


静まり返ったアトリエ。ソファに深く腰掛けたジュングの姿。

寂寞とし中、ホン医師が身動きする音だけが響く。

ジュングに点滴の針を刺しながら管を調節するホン医師。処置が終わるとキキッと椅子を引き寄せジュングの横に座る。

アトリエを包む重い静寂を破って、とぼけたように口火を切るホン医師。


ホン医師 わしはな、今でも、さ。 アトリエにいたわしの頭をひっつかんで医大に放り込んだ父親に、感謝してるよ。


ジュングはホン医師に視線を向け、途方もなく儚い微笑を浮かべて


ジュング 医者になってくださって、ありがとうございます。

ホン医師 あぁあ... 芸術とはいったい何なのか...

ジュング 人生は短く、芸術は永い。(微笑んで) ヒポクラテスでしょ。

ホン医師 それしかわかっていないようだな... ジャコメッティいわく、芸術より生きることだって...


ホン医師の言葉に、目だけぱちくりさせるジュング。

ジュングを見ていたホン医師。首を回して歪んだ塑像の顔を見る...


ホン医師 ほら、あれ... あれ... いいねぇ。作品の趣向が変わったのか...


ジュングも塑像の方を見る。


ホン医師 今のわしの気持ちが、まさにあのとおりだよ。

ジュング ?

ホン医師 おい、今の君は、女性の身体なんぞ造っている場合かい? 現実をまっすぐに見ろ、な。


ジュング、ホン医師をじいっとみつめた後、窓辺に視線を移す。

長いため息をつくホン医師。


ホン医師 芸術芸術と叫んだあげく、この体たらくはなんだ? ジョンスクのことはどうするんだ... ふぅ... ちっちっち。


(インサート)


アトリエの奥深くにまで長く入り込む陽射しにパタパタ揺れるカーテン。

半分ほどになった点滴と管が巻いて掛けられている。

アトリエに掛けられた鏡で、じっと自分の顔を凝視しているジュング。


ホン医師(V.O) 芸術芸術と叫んだあげく、この体たらくはなんだ? ジョンスクのことはどうするんだ... ふぅ... ちっちっち。



88.ジュングの家の前 (昼)



春シナリオ_88a
日傘を差してアトリエに向かおうとするジョンスク。

強い陽射しのもと、どうしても足が進まずためらった後、寂しげな微笑を浮かべて日傘をすぼめ、引き返す。


cut to #87


新しく胸像を造り始めるジュングの姿。

土を盛ろうとするのに曲ってしまう指を無理矢理に広げてみるジュング。

それでもダメだとわかると、土のついた手に噛みつく。

荒い息遣いの中で、ジュングの必死の作業が繰り広げられる。


春シナリオ_88b

ポタポタと床に落ちる汗...

再び指に噛みつくジュング... 突然、感情が込み上げて泣き出す。

しかしどうにか気持ちを静め、さらに作業に没頭する。


(インサート)


暗くなっていく貯水池の全景に、灯りの点いたアトリエ。


土で造られた塑像に、荒々しく石膏を塗りつけるジュング。

汗でびっしょり濡れたジュングのシャツ...


ゴムの器に石膏を溶かしていたジュング、指先に麻痺がきたようで器を取り落してしまう。

床にこぼれる白い液体...

それを掬って器に戻すが、座り込んでしまうジュング。

手に余るのか、肩で大きく息をする。

しばらくすると、汗をぬぐい、また作業を続ける。


(インサート)


真っ暗な夜、灯りの点いたアトリエの全景。

手拭いで汗を拭い、シャツをパタパタさせるジュング。息を整え顔を上げる。

白い石膏が塗られた胸像を見るジュング。服についた土を払い、立ち上がる。


アトリエの入り口。複雑な表情で灯りを消し、扉を閉めるジュング。

アトリエから去るジュングの肩に、明るい月の光が差している。



( No.10 最終回へつづく )