<酔中真談> パク・ヨンウ&ソン・ジェゴン監督
公開された作品を見ると、この二人は本当によく似ているのじゃないかという気がする。
しかし、実際には全く違う二人の男が、盃を持ってテーブルについた。
少し前に再稼働した”酔中真談”の主人公は、映画『甘く、殺伐とした恋人』の興味深いコンビ
ソン・ジェゴン監督と主演のパク・ヨンウである。
チクリチクリ刺しつ刺されつ、粋な二人の甘く、殺伐としたトークを公開しよう。
『血の涙』のときに、第一回酔中真談のゲストとしてインタビューさせてもたいましたね。こんな風に1年ぶりにまた同じコーナーでお会いできて嬉しいです。
パク・ヨンウ(以下パク) そうですね。あの時、また一杯やりましょうって約束しておいて、実現できないまま、結局またこの席でお目にかかるなんて。僕も嬉しいです。お元気でいらっしゃいましたか?
昨日テレビで見たのですが、この映画のロゴソングまで歌われたとか。最近は広報活動にも熱心でいらっしゃいますね。
パク) ああ、昨日は某バラエティー番組でレポーターが歌え歌えと言うもんだから仕方なく歌いました。みんな面白がって歌わせようとするんですよね。頼まれたら、一生懸命歌いますよ。明日はついに『ウッチャッサ(笑いを探す人々』 にも出演することになりましたよ。番組のファンではありましたが、まさか自分が出演することになるなんて、思いもしませんでしたよ。
少し前にインタビューの仕事でチェ・ガンヒさんにお会いしたのですが、この質問を絶対してくれって頼まれました。「そんなに一生懸命仕事して稼いで、そのお金でいったい何をするつもりなのか?」って。昨年の『血の涙』を皮切りに『ナンパの定石』が公開され、今年は『甘く、殺伐とした恋人(以下、甘殺)』から始まって5月には『ホロビッツのために』、下半期には『静かな世界』が控えていますよね。
パク) その質問は誤解を含んでますよ。今おっしゃった作品は全て去年のうちに契約していたものなんです。だから出演料も去年清算されてしまってる(笑) つまり今年は全く稼ぎがないんです。『ホロビッツ』より『静かな世界』が先に公開される予定だったのが、準備の都合で公開が前後しただけです。
こうやって立て続けに出演するのも、その前の空白期間が長かったからですよ。
しばらく役をもらえなくて、気持ちの上で溜まっていたものもたくさんありますからね。
今振り返って考えると、先に決めていた『ナンパの定石』を除いて、『血の涙』以降出演を決めた作品は多様性を考えて選んだように思います。
お二人はとても仲がよいと伺いましたが。
パク) 監督は僕のこと嫌いなんですけど、僕は監督のことがとても好きです。
ソン・ジェゴン(以下ソン) (真剣な表情を作りつつ冗句として) いいえ、いいえ、僕はパク・ヨンウさんのことを嫌いでもなければ好きでもありません。
映画の中のファン・デウが、監督そっくりだと聞きましたが。
ソン) 私が以前洗濯機を移動させようとして腰を痛めたのは本当ですが、作品の中のデウとは違います。あれは一種の空想上の人物ですよ。デウのように恋愛経験のない男でもありません。今まで3回経験があります。20世紀に2回と21世紀になって1回。
パク) 僕も一度経験があります。
ヨンウさんの一番最近の恋愛はいつ?
パク) ずいぶん前の話になってしまいますが、別れたときがはっきりいしてなくて、よく思い出せません。相手に振り回されて別れたので。僕はどうにかして彼女を引き止めておこうとしたのに、当時の彼女は僕が寄り添おうとすると拒否し、連絡を絶つと忘れた頃に電話をかけてくる、そんなのの繰り返しでした。
作品の中でのデウは独特な話し方をしますよね。あれはどこからきたものですか?
ソン) 一言でどこからというのは難しいですね。話し方に限らずキャラクターについてであれば『ブロードウェイと銃弾』のジョン・キューザックや『世界中がアイ・ラブ・ユー』のエドワード・ノートンあたりを意識して設定したと言えば、理解しやすいのではないでしょうか。
そう聞くと、特にエドワード・ノートンの場合はパク・ヨンウさんとイメージ的にもよく似ているところが連想されますね。
ソン) でもね、私がこの作品に関するネット記事をあちこち検索してみたところ、エドワード・ノートンとパク・ヨンウさんが似ているという発言を最初にしたのは私ではなくヨンウさんなんですよ。
パク) だけど実際のイメージが全く似てなければ、これほどまで広がりませんよ、監督。
他のメディアが報じたところでは、監督は実はチョ・スンウさんを起用したかったけれど、ギャラの安いパク・ヨンウさんで手を打ったという言葉にヨンウさんが個人的にいたく傷ついたと書かれていましたが。
ソン) それは私がそんなふうに明らさまに言ったわけではなく、ギャラが私たちの作品で現実化されているという表現を使ったように思いますが。
パク) 何を隠そうとされてるんですか。ははは。そのとおり、映画雑誌に初めて撮影現場を公開した時におっしゃっいましたよ。たしかに冗談めかしてのコメントでしたけど、徹夜で撮影した後だったし、神経過敏になっている状態で聞いたので、傷つきましたよ。
ソン) 徹夜で撮影したことなんてなかったじゃない。
パク) 撮影そのものは終了しても、夜遅く帰宅した後に、僕は夜通しシナリオを読むんですよ。
ソン) 『ホロビッツ』のシナリオでしょう。
パク) 監督はいつもこうなんですよ。。。
では、ヨンウさんをデウ役にキャスティングした理由は?
ソン) 演技の基本がしっかりしている俳優だからです。『血の涙』という作品を通しても、その技量を確認させてもらいましたが、それよりも前、初期の作品『アパート』から、私はヨンウさんの可能性を見てきました。
パク) 監督、今日はいったいどうしたんですか? いつもどおりに振る舞ってくださいよ!
演技のトーンを合わせるのに、お二人の間に摩擦はありましたか?
ソン) 私は比較的事実性を基盤にした、控えめな演技を求めたのですが、ヨンウさんはある程度商業性も考えて、いくらかコメディが必要だと考えていました。正直言って現場で気になることもありましたが、結局ヨンウさんの意見に多くの人が賛成して、ヨンウさんを起用したおかげで上手くいったのです。
パク) そういう点では現場で監督にとてもすまない思いをしました。僕のせいで監督の作品を台無しにしてしまうかもしれないって。
監督は、人類救援を扱ったドストエフスキー的な作品のシナリオを書いていたところ、彼女と別れたショックから『甘殺』に変更した、と報道されていますが本当ですか?
ソン) (こともなげに) 単にマーケティングチームが書いてくれと言うものだから、面白おかしく書いただけですよ。そう言ったら、驚いたチームリーダーが「監督、事実じゃなかったんですか?」って。
パク) こんな冗談が本当に上手いんですよ。
『甘殺』を観て、私の周りでは、フランスの犯罪コメディ『刑事にはデザートがない』を思い出したという人がたくさんいます。
ソン) あの映画とは全く関係ないんですけどね。もともと、この作品は男性主人公と女性主人公の、各々別の作品だったものを私がひとつにまとめてしまったんです。女性主人公のモデルは小説から取ってきました。パット・マガーの推理小説『探偵を捜せ!』から借りてきたのです。最初、男性が主役のロマンティックコメディーを作ろうと思ったのですが、それだけでは物足りない気がして、二つを合わせることになりました。
犯罪とロマンティックコメディーを合体させるなんて、独特ですよね。参考になった作品はありますか?
ソン) 個人的にヒッチコックの映画とウディ・アレンの映画が好きですが、好きだというのと自分が撮るのとは違うようです。それでも本作では、ウディ・アレンの『ブロードウェイと銃弾』にずいぶん影響を受けました。
ヨンウさんの場合、『血の涙』の後、せっかく作り上げた悪役カリスマのイメージを壊すような役ばかり選んでいらっしゃいますね、ちょっと意外でした。イメージ管理を考えても、もっと違う雰囲気の作品を選びたくありませんでしたか?
パク) 僕はまだ、自分がイメージ管理をしなければならない段階の役者ではないと思っています。まだお見せしていない僕の中の別の顔がたくさんありますから。
でも、俳優ならだれでも、その分野で頂上に登りつめたいという野望があるのでは?
パク) たしかに、僕だって演技に対する野心は大きいです。でも、その頂上という位置を人為的に作り出していくのは嫌です。作ろうと思って作れるものでもないし。
今までは、まだ何も見せていないとおっしゃいましたが、『血の涙』以前のイメージは軟弱でソフトな印象が強かったように思います。
パク) 他人から見たパク・ヨンウは、影が薄くて純粋で女性に優しくて、とまあ、そんな感じみたいです。でも僕は、そんな自分の姿が嫌で演技を始めた口ですから。
それは、過去にとても内向的な性格だったという意味ですか?
パク) そのとおりです。学生時代は気概もなく、人気者とは程遠い人間でしたから。中学、高校ではほとんど友達もいませんでした。両親ともに学校の先生で、寂しい子供時代でしたよ。
だから、映画科に進路を決めたのも、本当に突然だったんです。食っていくには工大が有利だって勧められていましたが、運良く(?)試験に落ちて、ある時突然、映画科に進まなきゃって思うようになったんです。
監督の立場から見て、一緒に作品を作り上げたパク・ヨンウ氏はどんな人ですか?
ソン) (いたずらっぽく、それでいて深刻な口ぶりで) 韓国のエドワード・ノートン、あるいはレオン・ライ。(一同爆笑) こう言っておけば次の作品でキャスティングするときに人気が上がるでしょう? 監督は俳優を上手くおだてなければなりません。私だってイメージ管理が必要です(笑)
殺人を強行した女性が断罪されないという、勧善懲悪のメッセージに反するという理由だけで『甘殺』が18歳以上観覧可とされたのは実に残念です。
ソン) 15歳の子が見ても何の問題もない作品なんですけどね。どうして、映像物等級委員会では任期中に一回ぐらい考えればいい倫理的な問題を、作品ごとに毎回審議するのかわかりません。
パク) 外国映画にはずいぶん寛大なのに、韓国映画となるといきなり厳しくなるのはどうしてなんでしょうね?
映画の中のデウは、星座と血液型占いを信じる人を極端に嫌いますが、監督もそうですか?
ソン) 嫌っているわけではありませんが、盲目的に信じるあまり、周囲に迷惑をかけている人を見てアイデアを得たのです。
では、お二人の血液型は?
ソン) O型です。
パク) 僕はB型。
そうですか。本日お話しを伺ったところ、監督はO型よりもA型に近い性格とお見受けしましたが。
パク) 僕が今まで見てきた監督は小心者というより大様だというのに近い方です。そうでなければ、どうやってこんな作品を演出することができるんですか(笑)
ソン) 本当にみなさん、血液型を熱心に信じていらっしゃるのですね。私は、この映画を通して血液型に対する迷信を考え直し、韓国がもう少し科学的な社会になってくれることを望んでいたのですが、私の演出意図は全く受け入れられていないようです。実に悲しい。。。(一同爆笑)
私たち、絶対みんなをアッと驚かせてあげる!
30を超えるまで一度も恋愛経験のないデウと、高尚で清純な第一印象とは異なりどこか怪しげなミナ。
二人のドタバタ恋愛談『甘く、殺伐とした恋人』
タイトルが語っているように、この映画を単なる甘いラブストーリーだと誤解してもらっては困る。
メロドラマかと思いきや、突然スリラーに早変わり。そしてコメディーまで加味される。
素直そうに見えて次々と予期せぬ鋭さやユーモアが光るパク・ヨンウとチェ・ガンヒほど、この奇妙な物語にうってつけの役者はいないと思わせる。
<おまけ: 3ページ目 ヨンウニム写真の下>
「『甘殺』の場合は、僕が、絶対上手く演れるっていう自信を持って選んだ作品なんです。作品選びが役者にとってどれほど大切かはわかっています。でも僕は、毎日のように褒められ成長していく俳優よりも、息の長い役者でありたいんです」
<訳文文責:ハギ>