マーマレードラブ 1 | ラブストーリー

ラブストーリー

  何度だって言うよ あなたが好き
    

※BL表現が強い為、苦手な方はスルーでお願いします

お読みになってからの苦情や攻撃などはご遠慮ください

 

 

 
 
 
Y
 
 
 
 
 
うちの営業課はその月、過過去最高の営業成績を残した。
 
     
 
 
 
朝の通勤ラッシュを避けるために、俺は2本早い電車に乗る。
 
 
なぜなら、営業マンの俺はビシッとスーツを着て家を出る。
それなのに朝からラッシュに巻き込まれ、スーツにシワができるのは避けたかったし、まだ誰もいない朝のオフィスは静かで気持ちが良かった。
 
 
一番に踏み込んでブラインドを開け、空調のスイッチを入れ、給湯室のポットに水を入れて電源を入れる。
仕事前の準備としてその一連の流れは俺の朝のルーティンだった。
チャンミンが来るまでは……。
 
 
チャンミンは同じ営業課の2個後輩で、入社した時から一目を置かれる新人だった。
高学歴で高身長、顔はイケメンだし、女性社員は皆んなが目を輝かせてチャンミンの女性関係を知りたがった。
その上仕事もできる優れ者で、その年まで営業成績トップだった俺はあっという間に新人のチャンミンに抜かれてしまったくらいだった。
 
 
チャンミンは俺より早く会社に来て、俺がそれまでしていたオフィスのブラインドを開け、空調のスイッチを入れ、給湯室のポットに水を入れて電源を入れる作業はチャンミンが全て終わらせていて、俺がオフィスに到着した時にはもう仕事を始めるだけになっていた。
 
 
成績は抜かれるわ、ルーティンは取られるわ。
したくなくてもチャンミンを意識してしまう。
どうせならいい成績を残したいと俺は思う。
だから俺は悪い意味ではなくチャンミンをライバル視していたし、周りも俺達の事をライバル同士だと認識していた。
 
 
 
 
 
 
その日も、会社のエントランスで社員証でもあるIDカードをかざし、俺は入館する。
白を基調とした吹き抜けの空間。話し合いもできるようにエントランス部分にもワークスペースがあり、開放感を感じられる。
ガラス張りで朝の日差しが床を照らす中、俺は颯爽とそのエントランスを抜けてエレベーターの上ボタンを押す。
 
 
3つ並んだエレベーターは一つボタンを押せば全部が連動していた。
だから俺はどれが来ても乗れるように真ん中のエレベーターの前に立ってスマホをちらりと見る。
エバーノートを開き、会議の資料を確認していると、手前のエレベータが到着したのに気付くのが遅れた。
 
 
その隙にエレベーターに乗り込もうとする人影に俺はハッとして顔を上げた。
 
 
「あ……俺も乗りま……、」
 
 
無常にもそのエレベーターのドアは俺の目の前で閉まって行く。
 
 
「ちょっと……っ。」
 
 
こんな朝早くに、誰かと思えばチャンミンがエレベーターの中から俺を見た。
確かに見た。
 
 
それなのにチャンミンはエレベーターの扉が閉まるのを止めようともせず、目の前で扉は閉まってしまう。
 
 
「は?!おい……っ。」
 
 
俺は呆気にとられる。
だってチャンミンは俺が明らかにエレベーターの前で待っていたのにも関わらず、知らない顔で行ってしまったんだ。
普通自分1人だけ乗って行くか?
ましてや俺は先輩なのに。
そこは当然気を使う所だろう。
 
 
俺は仕方なく遅れて次に来た隣のエレベーターに乗り込む。
そして動き出すエレベーターの中で溜息をついた。
 
 
別にいい、今更だ。
俺とチャンミンはいつもこんな感じなんだ。
 
 
多分俺はチャンミンにとって目の上のたん瘤で、俺が先輩だと言う立場も俺がチャンミンを追い抜こうとしていると言う事も気に入らないんだろう。
さっきの様に無視されたりはまだ可愛い方で、ちょいちょい睨まれるし、文句を呟かれることあった。
 
 
元々特別人懐っこい性格な訳ではないのかも知れないけど、他の誰にもそんな事は無いのに俺にだけ。
 
 
俺の事だけ………。嫌いみたいだった。
 
 
どうして?
 
 
そりゃあそう思うだろ?
俺は嫌われる様な事をした記憶が無いのだから。
 
 
 
 
 
 
 
オフィスに入ると、チャンミンはもう既にブラインドを開け、空調のスイッチを入れ、給湯室のポットに水を入れて電源を入れ終え、デスクでパソコンに向かっていた。
 
 
俺は俺で自分のデスクへ向かい、仕事の準備を始める。
 
 
そうやって追い越そうとする俺と、追い越されまいとしているのか、それともそうせずともいい成績を残せるのか分からないけど、そんなチャンミンとで契約数は右上がり。
 
 
課長は鼻高々だったんだろう。
ある日、課長が奢ってやると機嫌良く営業課の皆を集めて飲み会が開催された。
 
 
チャンミンも参加すると聞いた俺は少し、気が重い。
断ろうかとも思ったくらいだ。
 
 
それでももう既に出来上がってる課長に肩を抱かれ、俺は酒を進められていた。
 
 
「ほら飲め。ユノ。」
「離して下さいよ課長。飲み過ぎですって。」
「ユノ、お前とチャンミンのお陰で今月は過去最高の営業成績で俺は嬉しいんだよぉ。」
「ちょっとっ課長っ。」
 
 
課長は俺を抱き締めてブンブン揺すってくる。
俺はされるままに抱き締められて揺すられていると、その前のテーブルにドンと大きな音を立てて瓶ビールが置かれた。
 
 
俺は驚いた。
多分課長もだ。
 
 
「課長っ。」
 
 
課長は呼ばれてそのビール瓶置いた奴を見上げた。
俺も一緒になって見上げて更に驚く。
 
 
 
 
 
 
 
そこに居たのは機嫌の悪そうなチャンミンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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