エルヴィス | 新♪ここだけの話♪♪ ~スッチー編~

新♪ここだけの話♪♪ ~スッチー編~

空の上のおもしろい話、つつみ隠さずぶっちゃけます♪

今、グラマシーニューヨークのストロベリーチーズケーキ

食べながら書いてます♪姉の会社のう○いさん、姉の代わりに

私がいただいてます。おいしいです☆ありがとうございます♪

さて・・・ちょっと前の話ですが・・・


このパーサーに初めて会ったのは4年程前でした。

第一印象は・・・


     もみ上げ、ながっっ!!!

                                                                               でした。彼は、ふっさふさのもみ上げを、あごひげまで伸ばして

ました。外国人、男性乗務員の中で数少ないストレート(ゲイじゃない

ひと)。推定年齢48歳。


「ねえ、エルビス、久しぶりね。元気だった?」

「ねえ、エルビス、奥さんは元気?」

                                                                             搭乗前のブリーフィングで、スッチー達にも人気なことが

分かりました。


彼はお客さんの搭乗中、おもしろい話を聞かせてくれました。

彼は10年前、外国の国内線のみの航空会社にいたんだそうです。

そこの航空会社のモットーは「笑い」。入社時に求められるのは

「笑いのセンス」だそうです。確かにその会社からうちの会社に

移動してきた人たちは、おもしろいから私のブログのネタになってる

ケースも多いです。


その会社にいたとき彼は、お客様の搭乗の前に全裸になり、

お客様の頭上の荷物を入れる棚の中に隠れていたらしい

それで、荷物を入れようと棚を開けたお客さを驚かして

遊んでた・・・と・・・・・(@-@)


    この人は、なかなかすごい人や・・・


かくして、彼との14時間が始まりました。

彼は仕事もきっちりするし、お客さんにも感じが良い、素晴らしい

パーサーでしたし、今もそうです。

機内で放送する3本の映画も終わったころ、彼が一本のビデオテープ

カバンから出してきました。。(あのころは古いシステムだったのでVHS

をビデオデッキに入れて、機内映画を放送していました。)


「まだ、あと飛行時間一時間ぐらいあるだろう?お客さんたちが

つまらないだろうから、このビデオを流そうかな♪これ、見たこと

あったっけ?」


      「ないけど・・・なに?」

                                                                           「じゃあ、見てのお楽しみ♪後ろ行って、スクリーン見ておいで。」


スクリーンに映し出されたのは・・・・何かのショーの映像。

全身真っ白の服に身を固めたエリヴィス・プレスリーが、

すごい人数の観客に声援を送られながら楽しそうに歌っている。

しかし、よくよく見たら・・・・


      あ~~~!!!エルビス!!!今日のパーサーや!


私は10分ほど見てからパーサーのもとに走った。


       「ねえ、ものまねショーやってんの?プレスリーの?」


「ふっふっふ♪あれは、うちの会社の本社の忘年会だよ。服も

ちゃんと決まってるだろ?」


       「もしかして、エルビスって。。。」


「ああ、あだ名だよ。本名はジョン(仮名)。」

       そうなんや~!!


彼のエルヴィス・プレスリーは本当に上手だった。もみあげや、素振りも

ソックリだし、歌もすっごい上手だった。30分ほどのビデオが終わった後は

年配のお客さんなどは手をたたいて拍手していたし、飛行機から降りて

行くときには、みんな口々にジョン(仮名)に賞賛の言葉をかけて降りて行った。


そんな彼と二回目に会ったのはその一年後ぐらいだった。

相変わらずのもみあげ、えせプレスリー。。。その時も彼は、

当然のようにビデオテープを持っていて、3本の映画が終わってから

自分の映像お客さんを楽しませるために流し始めた。

はじまって10分ぐらい経ったころ、エコノミー席から早足

ビジネスクラスに歩いてくる外国人女性がいた。彼女がビジネスクラスに

入ろうとするところで出くわした。


       「あの、保安の関係上、ビジネスクラスにはお入りいただけ

       ませんっ。」

                                                                            「ああ、私はこういう者です。」

                                                                             彼女が私の目の前にかざしたものは「FAAのバッヂ」=航空連邦局員

のバッヂであった。


       あ・・・・(*-*)やばい!!!!!!!


FAAが認めていない映像や音声を、機内で流すこと、もちろん

禁じられている。見つかった場合は、その日のパーサーや乗務員

達にも被害が及び、飛行停止処分などをくらうのである。。。


ブチッ!

                                                                             エルヴィス・プレスリーの映像が急に止められた。私は陰からひっそり

見ていたけど、ジョン(仮名)とFAA職員、機長も入り会議が開かれて

いた。


エコノミーの通路を歩いていた私や他のスッチー達はあらゆる人に

何が起こったのかと聞かれたりしたが、みんな一様に、エルヴィスの

続きが見たい・・・という意見だった。ある男性に、FAAの処分を

待っているところだと説明した。彼はこう言った。


「ここにいる乗客のほとんどが、今の映像を楽しんでいるんだ。

そして、3本しか映画を流してはいけないというのはひどい。だって

時間がまだこんなにあるんだから。今日のパーサーは、

乗客を楽しませようとしているのに、処分を受ける

なんてひどい!オレにはいい考えがある!!」


そう言って彼は、自分のカバンを開け、分厚いノートを取り出した。

そこに「パーサーを救う懇願書と書き、説明書きを加えた。日本人の

乗客のために和訳するように頼まれた。そして彼は、エコノミーの

最前列の席から署名を集め始めた。これには、他の乗務員達も

心を打たれ、同じ様なノートに同じことを書き、機内最後列からも

ノートが回り始めた。


あっという間に、機内全体の400人ほどの署名が集まった。

外国人スッチー達が、会議中のFAA職員のところに、ノートを

持って行った。機長とジョン(仮名)は、この行動に大変驚き

ながらも涙ぐんでいた


FAA職員が、今の時点ではどう対処したら良いか分からないので

また後日連絡すると言って会議が終わった。


その会議の直後、通路を見たら、前から後ろに歩お客様一人ひとりに

頭を下げて握手して御礼を言っているジョン(仮名)が見えた。


それから、私も会社に何か言われるのかとドキドキしていたが、

特に何もいわれないまま時が過ぎていった。そして、そのジョンと

久しぶりに会えたのがちょっと前のフライト。


        「どうしてた?あれからどうなった?」


「ああ、あれからね、なんとFAAは内緒にしてくれたんだよ!

家には、今後こんなことはしないように・・という書類がFAA

から来たけどね。君も大丈夫だったろう?」

        「うん、大丈夫。へ~、よかったね♪」


「うん、あの時のお客さんからの署名は助かったし、今でも

思い出すと涙が出るんだ。」


          「感動したよね。」

                                                                             「ああ、それでね、もう一ついいことがあったんだよ。あれから

あの署名ノートをよく見たら、メモと名刺が入っててね。音楽

プロデゥーサーの人から。で、僕の歌声に興味があるから

一度話をしないか?って書いてあったんだよ。だから、早速

連絡したんだ。それから、いろんなことがあって・・・・今はなんと

3枚目のCDを出すんだよ。それに、ラスベガスのプレスリーの

ショーに出てみないかって誘われてるんだよ!!!!」


彼はなんと・・・今、ラスベガスのショーの方に忙しくあまり飛んでいない。

もみ上げをふさふささせながら、楽しそうに歌っているジョンが目に浮かぶ。。。