スピンオフ編~静岡県静岡市駿河区・洋と和が無理なく融合した洋館『旧エンバーソン住宅』 | Love Beef Cutlet? Eternal Traveler~生涯旅人

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全国各地のビーフカツを紹介している超変人の超マニアックなブログです。最近は国内、韓国、中国などのB級グルメについても書いています。

ビーフカツを求め全国各地を彷徨う超変人の超マニアックなブログです。今回はスピンオフ編。ビーフカツやその他の食べ物からは離れ、これまでの国内外の旅などで印象に残っているスポットなどをご紹介します。

 

今日は

静岡県静岡市駿河区の

『旧エンバーソン住宅』です。

 

最寄駅はありません。

 

市中心部にある

『新静岡バスターミナル』から

しずてつジャストライン日本平線に乗車します

1時間に1本程度しかありません。

 

『新静岡バスターミナル』から30分

『動物園入口』で下車します。

 

『日本平動物園』の南側を

7~8分ほど歩くと

進入禁止の標識が突然現れます。

 

でも大丈夫

これは車両進入禁止で

歩行者は進むことができます。

 

坂道を更に2~3分歩くと

瀟洒な洋館が見えます。

 

これが『旧エンバーソン住宅』です。

 

1904(明治37)年に

カナダ人宣教師ロバート・エンバーソン師の自邸として

現在の『駿府城公園』の北側に建てられたものです。

 

師の帰国後も

代々の宣教師の住居として利用されてきましたが

建築後80年余を経て老朽化が進み

所有者の『日本基督教団静岡教会』は

解体することを決めました。

 

静岡市は

市内の数少ない明治時代の建築物であることから

1986(昭和61)年に建物の寄贈を受け

現在地に移設し保存を図ることにしました。

 

約1年半の補修・補強工事の後

1987(昭和63)年に一般公開されました。

 

現在は

土日祝日のみに公開されています。

 

こちらがロバート・エンバーソン師。

 

1866年にカナダのオンタリオ州で生まれ

大学卒業後の翌年1900(明治33)年に

メソジスト教会の宣教師として来日します。

 

翌1901(明治34)年

静岡教会に着任し

伝道活動を進めるとともに

県立静岡中学校や静岡商業学校などで

英語教師として教鞭をとります。

 

この建物は

エンバーソン師の指示、指導のもとに

静岡の大工さんが建てました。

 

木造2階建寄棟造り

玄関に突き出たバルコニー

南側にテラスを持つコロニアル風の洋館ですが

ところどころに和風の様式が見られ

独特の雰囲気を醸し出しています。

 

屋根は

浅瓦葺きの和風仕立てですが

西側中央には

洋風のチムニーが突き出ています。

 

棟の先端には

火災除けのお守りである

『水』と書かれた鬼瓦があります。

 

玄関を入ると

すぐ目に入るのが

鏡付の家具。

 

オーク材でできたこの調度は

靴箱兼コートハンガー。

 

靴箱の上部は椅子のような構造で

ここに腰かけて靴紐を結んだようです。

 

玄関の脇にある部屋は

応接室として使われていたそうです。

 

応接室を始め

全ての部屋の窓が

上げ下げ窓になっています。

 

開き窓と違い

必要な部分だけを開け閉めできる

合理的な構造です。

 

外側の鎧窓は

直射日光を防ぎ、風を通し

雨戸としても使える優れものです。

 

YAMAHAのオルガンは当時のもので

家族が弾いていたようですが

現在では修理がかなわず

静態保存されています。

 

各部屋のドアのノブは

美しい白い磁器で作られています。

 

当時のものもいくつか残っていますが

復元したものも混在しています。

 

応接室に続くのは

居間(手前)と食堂(奥)。

 

1階の各部屋には

マントルピースがありますが

移設時には残っていなかったため

東京の『雑司が谷宣教師館』のものを

参考にして復元されたものです。

 

こちらは食堂

奥の壁にちょっと変わったものが見えます、

 

配膳窓です。

 

この小窓の奥にはかつて台所があり

日本人女性が食事の世話をしていましたが

一家の生活の場と一線を記すため

配膳窓を設けたそうです

・・・なんか封建的で嫌な話ですね。

 

食堂の奥には

トイレとシャワールームがあり

便器が復元されています。

 

尾籠な話で恐縮ですが

汲み取り式になるまでは

中央の穴の部分に陶器のおまるが設置され

用を足した後は

お手伝いさんが処理していたそうです。

 

こちらがおまる

実際に使用されていたもののようですが

もちろん悪臭はしません。

 

余談になりますが

このトイレの説明書きで知った

ヨーロッパのトイレ事情(原文まま)。

 

近世になっても

パリやロンドンの都市では

3、4階の建物に住む人は

『おまる』を愛用して

窓から糞尿を投げ捨てていた。

 

そこで

汚物を踏まないためにハイヒールが登場し

汚物を浴びない為に

英国紳士が外套を着用することや

女性に歩道の内側を歩かせる

マナーが生まれたそうです。

 

うぅ~ん、本当かな?

ネットで調べましたら事実のようです。

 

閑話休題

 

2階へ続く重厚な階段

ここにも和テイストが施されています。

 

親柱の飾りに採用されているのは

神社仏閣で見掛ける擬宝珠です。

 

洋風の階段にミスマッチのようですが

何故かこれが見事に調和しています。

 

階段の踊り場の天井は

和風の網代天井で

何故か逆向きに擬宝珠が付けられています。

 

階段を上がり切った処

玄関の上部に当る部分には

小さなバルコニーがありますが

立入はできません。

 

2階には4部屋あり

全てが寝室だったそうです。

 

寝室に置かれた小物入れ

シンプルですが素晴らしいデザインです。

 

古びた扇風機。

 

エンバーソン師がカナダに帰国したのは

1907(明治40)年。

 

一方

東京市の全家庭に電灯が普及したのが

1912(明治45)年ですので

この扇風機は

エンバーソン師の後任の方が

使ったものだと思います。

 

2階南側に設けられてサンルームにも

和テイストが見られます。

 

この格子窓だけを見ると

洋館の中にいるとは思えません。

 

このような小窓を

何と呼ぶのか知りませんが

限りなく和風ですね。

 

壁と壁の間の仕切も

寺院で見掛けるような意匠です。

 

今までに

全国のいろいろな場所で洋館を見てきましたが

ここまで洋と和が無理なく融合した建物は

初めて見ました。

 

旧エンバーソン住宅

静岡県静岡市駿河区池田2864-52

054-221-1066(静岡市文化財課)

9:00-16:30

土曜、日曜、祝日のみ開館

入館無料

 

次回は、本日15:00に街角アート編。東京都荒川区南千住の『影』です