告白編~奇書とともに蘇るあの頃の思い出『お前も来るか!中近東 一日一弗之旅』 | Love Beef Cutlet? Eternal Traveler~生涯旅人

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ビーフカツを求め全国各地を彷徨う超変人の超マニアックなブログです。今回は告白編。一冊の奇書をご紹介するとともに私自身について少しだけカミングアウトします。

 

~Somewhere in India, summer of 1970~

 

奇書のタイトルは

『お前も来るか!中近東 一日一弗之旅』

・・・しみだらけ

かなり古い本であることが窺えます。

 

 

裏表紙にも

同じタイトルが横書きで

・・・からくりは後ほど。

 

 

表紙をよく見ると

Marijuana、Ganja、Hashishなどの文字が

・・・危ない本なのでしょうか?

 

1971年12月に

大学生6人を中心にした

狂気の集団

『麿呂湖帆路旅行団』が

自費出版した本です。

 

表紙に印刷されているのは

ネパールの首都カトマンズにあった

ヒッピーの巣窟

『Cabin Restaurant』のメニュー。

 

 

表紙をめくると『口上』が

・・・マルコポーロの落し子の末裔と称する一味現る。

狂気か正気か『まるこぽーろ旅行団』と称す。

 

その他いろいろ

おかしなことが書かれています。

 

 

旅行記のようで

イスタンブールからインドまでの旅を

団員が分担して執筆しています。

 

 

真中辺りで旅行記が終わり

団員紹介のページが現れます。

 

 

なにやら訳の分からないことが

徒然に書きなぐられています。

 

 

残り半分はどうなっているのかと

裏表紙を開けますと

横書きの『まえがき』が現れます。

 

ここには

意外にまともなことが

書かれています。

 

非常識な集団かと思っていたら

常識的な一面も持っているようです。

 

 

裏表紙から読み始めると

中近東、インド・ネパールの

旅のガイドブックになっています。

 

如何にも素人が描いた地図

余りのラフさに内容が心配になります。

 

 

イスタンブールから

インドのカルカッタ(現コルカタ)までの

陸路での移動手段と距離

・・・極めて正確です。

 

 

『中近東旅行必修単語録』

かなりの悪乗りです。

 

 

英単語集もあります。

 

今では当たり前のような単語も

当時はあまり知られていなかったため

バックパッカーには重宝がられました。

 

 

旅の出発点は

トルコのイスタンブール。

 

こちらも素人タッチですが

内容はしっかりしています。

 

 

旧市街の中心部

『スルタナメット』地区

現在では『スルタンアフメット』と表記されています。

 

『ブルーモスク(スルタンアフメットジャーミー)』

『アヤ・ソフィア』などがあり

観光客に人気の地域ですが

当時はヒッピーの溜り場でもありました。

 

 

ヒッピーやバックパッカーご用達の

ホテルも紹介されています。

 

最も人気があった

『Hotel Gungor』のドミトリーは

一人1泊8リラ。

 

公定レートでは66USセントですが

闇のレートですと50USセント程になりました。

 

当時は1米ドルが360円でしたので

1泊180円程度

・・・ちなみに当時の東京でのラーメンの値段は

1杯100円弱でした。

 

 

この後

当時では入手困難だった

イラン、アフガニスタン、パキスタン、インド、ネパールの

旅の情報が満載されています。

 

結びは

『羽田空港へ着いたら』

『羽田空港を出たら』

人を喰った内容で終わっています。

 

 

巻末付録として

『旅行団推薦旅館』が。

 

上、中、並、問題外の4段階に

ランク付けされています。

 

 

『ヤミレート表』。

 

6人がそれぞれ

各地のブラックマーケットで両替した時の

対米ドルレートが記載されています。

 

 

そして

通常の書籍であれば

巻末にある奥付が真中に。

 

 

彼ら6人は

夜も眠らず昼寝して

半年を費やして

この奇書を完成させました。

 

印刷・製本費50万円で

1000部を自費出版。

 

自慢の本を抱え

意気揚々と都内の書店へ

売り込みを掛けましたが

世の中そうは甘くありません。

 

三省堂、紀伊国屋などの大手の書店には

全く相手にされませんでした

・・・当然小さな書店からも無視。

 

苦肉の策で

銀座の歩行者天国で

路上販売しましたが

警察に捕まり断念。

 

そんな彼らの転機となったのが

ラジオ番組への出演。

 

ニッポン放送が

夜7時半から15分帯で放送していた

トーク番組『ヤング・ヤング・ヤング』に

3夜連続で出演しました。

 

この放送で

彼らは反則技を繰り出します。

 

放送中に

『新宿の紀伊国屋書店で

放送終了後の木曜日から

この本が販売される予定ですので

よろしくお願いします』と

リスナーにメッセージを。

 

紀伊国屋には何度も通い

その都度取り扱いを断られていました。

 

ラジオ放送で流してしまえば

紀伊国屋も置いてくれるだろう

・・・そんな安易な考えからの発言でした。

 

翌日早速

紀伊国屋に行きましたところ

担当の方が苦笑しながら

『考えたな、お前ら』と

取り扱いを受け入れてくれました。

 

その後

同じニッポン放送の番組に

レギュラーで出演することになり

本も順調に売れ始めました。

 

当時の自費出版本としては

異例の増刷を行い

紀伊国屋書店だけでも1200部以上

その他友人知人、親族、一族郎党なども含め

計2000部を売り尽くしました。

 

ちなみにこの番組ですが

MCはビートルズの写真で当時売れ始めた

カメラマンの浅井慎平氏

スタジオで生ギターを弾いていたのが

デビュー前の宇崎竜童氏

ADは後に直木賞を受賞した

故影山民夫氏。

 

素人の大学生相手に

信じ難い顔ぶれでした。

 

 

ところで

あんたは何でそんなに詳しく

彼らのことを知っているの?

 

そうお思いですか?

 

薄々お感じかもしれませんが

何を隠そう

私は団員の一人だったのです。

 

この画像は

1970年に中近東からインドを

3か月間旅した時に

インドのニューデリーで撮ったものです。

 

ジーンズやTシャツは

イランの金持ちに売り飛ばし

パジャマのズボンに

インドで買った綿シャツという

情けない姿・・・日本の恥。

 

 

この奇書は

『深夜特急』の著者・沢木耕太郎氏が

インドからロンドンへ旅した

前々年に出版されましが

同氏が読まれたかどうかは不明です。

 

私自身

15年後の1986年に

『深夜特急第一便』が刊行された後

『第三便』まで拝読しましたが

沢木さんが我らの奇書を

読まれたのではないかなと

感じるところがいくつかありました。

 

今読み返すと

稚拙な文章、誤字脱字などなど

赤面するばかりですが

無鉄砲だった日々の思い出が蘇る

私の宝物です。

 

現在入手は不可能ですが

国立国会図書館と東京都立多摩図書館に

1冊ずつ蔵書されています。

 

次回は、本日15:00にオンストリート編。過去の旅などで脳裡に焼き付いている街角の光景をご紹介します。テーマは、東京都荒川区南千住です。